かつて、バブル景気に湧いた日本では、斬新でユニークなコンセプトの車が多数開発された。その中でも特に目立った、ガルウィングドアを採用した日本車を紹介しよう。
●文:月刊自家用車編集部 ●出典:『すごいクルマ事典』(内外出版社 刊)
チャラそうに見えて、大真面目に作られていた
1980年代後半の日本はバブル景気と呼ばれる、とても儲かった時代だった。この好景気を受け、日本の自動車メーカーも様々な車種を市場に投入した。真上にガバっと開いて超目立つガルウイングドアを採用した、トヨタ自動車のセラも、その勢いから生まれたぜいたくな小型車と言えるだろう。
ガルウィングドアは、ガバっと上に開くため、意外と乗降性が高い。また、トヨタのセラは、立体駐車場の中でもちゃんとドアが開けられるように設計されていた。
鳥のようにはばたくドア、温室のような車内
真上に開くガルウイング(かもめの翼の意味)ドアは、メルセデスベンツやランボルギーニといった超高級スポーツカーに採用される、憧れのメカニズム。ところが1990年に登場したセラは、それらのスポーツカーにもない、ガラス製のガルウイングドアを専用設計した、とても派手でぜいたくな小型車だった。派手なだけでなく、実用性もよく考えられていた。
開発者は日本中の立体駐車場を調べて、中でドアを開けてもぶつからず、楽に乗り降りできるように開き方を工夫。気温の違う夏と冬でもドア開閉の操作力が変わらない油圧装置を開発するなど、細やかな気配りと膨大な開発費をかけている。日本が世界一の金持ちだったバブル時代だからこそできた、夢のあるコンパクトカーと言えるだろう。
日本は、外国では高級車にしかないような装備をたくみな設計で安く作るのが伝統。ガルウィングドアしかり、リモコンで調整できるドアミラーやバックカメラなどもそれにあたる。