宇宙船のような未来的なデザインと世界初の量産ロータリーエンジン搭載。あの”MAT”も制式採用した‼︎ 常識を覆した2シータースポーツ│月刊自家用車WEB - 厳選クルマ情報

宇宙船のような未来的なデザインと世界初の量産ロータリーエンジン搭載。あの”MAT”も制式採用した‼︎ 常識を覆した2シータースポーツ

宇宙船のような未来的なデザインと世界初の量産ロータリーエンジン搭載。あの”MAT”も制式採用した‼︎ 常識を覆した2シータースポーツ

コスモスポーツは、1967年に世界初の量産ロータリーエンジン搭載車として誕生した伝説的なスポーツカー。「宇宙」を意味する車名にふさわしく、流麗で未来的なエクステリアが特徴だ。なんといっても、最大の魅力は、マツダが社運をかけて実用化した2ローターのロータリーエンジン(10A型)。軽量・コンパクトでありながら、高回転まで滑らかに吹け上がる独特の走行フィールは、当時の常識を覆した。生産台数はわずか1,176台と少なく、日本の自動車史における技術革新の象徴として、今なお高い価値を誇っている。
ちなみに、1971年より放映が開始された「帰ってきたウルトラマン」のMAT(怪獣攻撃部隊)の制式採用車マットビハイクルのベース車(10B型)としても有名だ。

●文:月刊自家用車編集部

前期型

「走るというより、飛ぶ感じ」というキャッチコピーが示すように、航空機や宇宙船を彷彿とさせる。ロータリーエンジンのコンパクトさを活かし、ボンネットを極限まで低くく抑えられたボディと滑らかな曲線で構成されている。

ボディの厚みを抑えたデザインを象徴する、特徴的な上下2段のテールランプは、コスモスポーツのアイデンティティの一つとなっている。

フロントからリアにかけて滑らかに繋がる美しい曲線は、空力を意識したデザインであり、当時の国産車としては非常に先進的だった。

ロータリーエンジンの開発は、自動車メーカーとして生き残りをかけたマツダの賭けだった

コスモスポーツの開発は、単なる新型車の開発ではなく、マツダの社運をかけた一大プロジェクトだった。当時の松田恒次社長は、自動車メーカーとして生き残るためには、他社にはない「独自の技術」が必要だと考えた。そして、当時実用化は困難とされていたロータリーエンジンにすべてを賭けることになる。

ほとんど未完成な状態だったロータリーエンジン

高価かつ不利な条件で西ドイツのNSUヴァンケル社からパテントを買い、手に入れた試作ロータリーエンジンは、未完成な状態で、まったく実用に耐える代物ではなかった。当初のロータリーエンジンには、「チャターマーク(ハウジングの内壁に発生する波状摩耗)」や「アペックスシール(気密性を保つための部品)の摩耗」など、技術的な課題が山積みだったのだ。

これらの課題をクリアするのに6年の歳月を費やすことになる。のちにロータリー四十七士と呼ばれるマツダの47人のエンジニアたちは、課題であったチャターマークの傷つきや異常な振動などの難関を乗り越え、1963(昭和38)年に試作エンジンを完成させた。

前期型コスモスポーツに搭載された、市販車としては世界で初めての2ローター式ロータリーエンジン型エンジン(10A型)。最高出力110ps、最大トルク13.3kg-mを発生。後期型には、改良型の10B型が搭載され、最高出力128ps、最大トルク14.2kg-mへと向上された。

異次元のスタイルと走り。世界で初めて誕生させた量産ロータリースポーツは、ついにマツダの代名詞となった

そして、1964年には美しいデザインのコスモスポーツに積んでの正式発表にこぎつけた。その後3年もの間、公道をふくむ耐久テストを続け、1967年にようやく正式に発売されたコスモスポーツは、異次元の走りを見せた。大学卒の初任給が2〜3万円の当時、148万円という価格は現在の感覚なら1000万円超であり、1972年までに1000台あまりが造られたに過ぎないが、世界で初めての量産ロータリースポーツカーの実現は、マツダの名を世界に轟かせるに十分な価値を持っていたのだ。

前期型のインパネ周り。インパネセンター部分に5連メーターを配置。その右に回転計、スピードメーターと並ぶ。トランスミッションは4MT。

視界の確保とデザインのシンプルさを優先した当時のスポーツカーに倣って、前期型のシートには、ヘッドレストが装備されていない。

市販コスモスポーツに搭載されたのは、491ccのローターを2基備えた「10A型ロータリーエンジン」だった。発売当初は最高出力110ps/7000rpm、最大トルク13.3kg-m/3500rpmを発生。同じ排気量のレシプロエンジンに比べて圧倒的にコンパクトで軽量であり、高回転域まで一気に吹け上がる特性を持っていた。車両重量を940kgという軽量ボディと相まって、最高速度185km/hを達成した。翌年の1968年にホイールベースを延長、エンジンも改良され128Psと向上した後期型が登場した。5MTの採用などで最高速度は200km/hに達している。

以後、マツダはこのエンジンを広く車種展開し、都度改良を重ねながら、ファミリアやカペラ、サバンナなどに搭載することで、「ロータリーのマツダ」をアピールした。

前期型は水平のスリット型に対して、後期型は開口部が拡大され、フロントディスクブレーキの冷却用ダクトも追加された。

後期型

後期型(L10B)では様々な変更が加えられた。これらの違いは、単なるマイナーチェンジに留まらず、走行性能、快適性、そして安全性について大きく向上が図られている。

丸形7連メーターは速度計と回転計を中心に、右に油温計と水温計、左に時計、燃料計、電流計が並ぶ。回転計のレッドゾーン7000rpm。木製リムのステアリングは60㎜の前後調整が可能。トランスミッションが5MTに変更され、高速走行時の快適性向上や燃費改善に貢献した。

後期型は、安全性向上のため、3点式シートベルトやヘッドレスト一体型シートなどが追加された。

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