
トヨタの「ランドクルーザー」は、いまや世界的に最も多くの人に支持されていると言える本格オフロード車です。世界中にまだまだ多く存在する未開の地では、その走破性能の高さが支持され、今でも旧い機種が現役で活躍していますし、その一方で、大柄な車格による存在感の高さをアピールできるとして、アーバンクルーザーとしても高い地位を獲得しています。ここでは、そんな「ランドクルーザー」の源流のひとつとして挙げられる“40系”についてすこし掘り下げていきたいと思います。
●文:往機人(月刊自家用車編集部)
トヨタBJ型(1951年)
「BJ』はB型エンジンとジープ型シャシーの組み合わせを表す。三菱ジープ、日産パトロール(後のサファリ)と争った警察予備隊の採用には敗れたものの、富士山走行テストでのライバルを上回る走破性能を認められたBJは、国家地方警察のパトロールカーとして制式採用が決まり、林野庁や電力会社にも納入されるようになる。
ランドクルーザー「BJ」(1954年)
1954年、「ジープ」がウィリス・オーバーランド社の商標だったため、商標権問題で名乗ることになったのが「ランドクルーザー」。その壮大な名前は、このクルマのもつ性能へのトヨタの自信の表れでもあった。
始祖にあたるのはジープ由来の軍用トラックだった?
「ランドクルーザー」の源流を辿っていくと、他の国産自動車メーカーと同様に「(バンタム)ジープ」を模倣した軍用の4輪駆動車に行き当たります。第二次大戦の時代、4輪駆動車といえば世界的に見てアメリカ(軍)の「ジープ」が最も優れた車輌と認識されていたため、多くの模倣車が産み出されました。
“和製ジープ”といえば戦後にライセンス生産された三菱製が有名ですが、それより10年も前にトヨタは軍の要請により、海外で鹵獲された試作車の「バンタム・ジープ」を急ごしらえで模倣した「AK10型小型4輪駆動トラック」の試作車を1944年に完成させています。
この「AK10型」は翌年の敗戦によって日の目を見ずに終わってしまいましたが、その製造技術は開発部門にしっかり蓄積され、その当時に平行して開発が進んでいた大型の「KYC型4輪駆動トラック」の基本構成と合流して、ランクルの元祖と言われる「トヨタ・ジープBJ型」が誕生することになります。この「トヨタ・ジープBJ型」はジープと名付けられていますが、由来がトラックのためサイズと排気量が「ウィリス・ジープMB型」よりひとまわり大きい存在でした。
「ジープBJ型」には、特殊用途向けに排気量の大きい「FJ型」もラインナップされていました。「BJ/FJ型」は警察や電力会社、消防署などに納入される“公用”的なものでしたが、基本構成はそのままに、民生用として新たにリリースされたのが、はじめて「ランドクルーザー」の名が冠された「20系」です。「20系」は多くのボディバリエーション展開と排気量に余裕のあるエンジンなどが支持されて北米を中心に好調な売れ行きとなり、モデル終盤にはロングホイールベースのステーションワゴンタイプも追加されました。
ちなみに先日、新型「ランドクルーザー」シリーズに「FJ」モデルが追加されました。この「FJ」は、ライトデューティ系の「250」シリーズを短くコンパクトにしたような位置づけのモデルで、本格オフロード性能をさらに追求して仕上げられています。
「250」自体が“原点回帰”のコンセプトで企画されたモデルですが、この新型「FJ」は、その名が示すように、始祖「ジープMB型」のDNAを色濃く受け継いだ初代を意識していることは明白でしょう。
ランドクルーザー20系(1955年)
1955年、ランドクルーザー2代目となる20系にフルモデルチェンジ。初代のBJ型に比べて、民間向けを意識したスタイリングに変更され、後のランドクルーザーの発展において重要な役割を果たしたモデルである。
“和製ジープ”から脱却してロングセラーモデルとなる「40系」の誕生
3代目となる「40系」の「ランドクルーザー」が発売されたのは1960年です。2代目の「20系」から飛んで「40系」となったのは、先述のロングホイールベース版に「30系」が充てられたためです。それと同様にこの「40系」にも「50系」、「60系」の派生系統が存在します。
この「40系」はメインのマーケットである北米市場の要望を採り入れてモデルチェンジがおこなわれたのが特徴です。
外観デザインはモダンさを増して乗用車のような雰囲気が加えられたものとなりました。特徴的な長円形のグリルに丸目の2灯ヘッドライトが収まる顔つきは、後に「FJクルーザー」のモチーフにもなりました。高評価の走破性能はそのままに乗用の快適性を高めるため、前後に駆動を振り分ける“トランスファー”に2速の変速機構を組み込んでいます。これにより乗用車と同じ速度域でのクルージングができるようになりました。
搭載されるエンジンは、当初直列6気筒の「F型(2977cc)」とその拡大版の「2F型(4230cc)」の2種展開でしたが、1973年にはランクルシリーズで初めてとなるディーゼルエンジン(直列6気筒3576ccの「H型」)を追加。
その翌年には直列4気筒版の「B型(2977cc)」を追加。この時期の日本国内はオイルショックによる燃料不足から燃費の低いエンジンは敬遠されるようになっていましたが、この「B型」の登場によって大排気量エンジンを積むランクルを取り巻く暗雲に晴れ間をもたらし、これが無ければ「40系」のモデルライフはそこで終わっていたかもしれません。
ランドクルーザーFJ40型(1960年式)
1960 年に登場しその後24年にわたって販売、ランクルの名を世界に轟かせたロングセラーモデル。発売時はショート(2285㎜)、ミドル(2430㎜)、ロング(2650㎜)のシャシーだったが、荷台が狭いという声があり海外向けに2950㎜を追加する(後に2650㎜は廃止されロングは2950㎜に一本化)。長い歴史の中、3回の大幅仕様変更(1967 / 79 / 80 年)で、4期のモデルに分類されることもある。ちなみに2010年に国内投入されたFJクルーザーは40のデザインテイストをモチーフにしている。
ランドクルーザーFJ40型(1960年式)
●全長×全幅×全高:3840㎜×1665㎜×1950㎜ ●ホイールベース:2285㎜●トレッド(前/後):1404㎜/1350㎜ ●車両重量:1480㎏ ●積載量:400㎏●乗車定員:3/7名●エンジン(F型):直列6気筒OHV3878㏄ ●最高出力:125PS/3600rpm●最大トルク:29.0㎏-m/2000rpm●燃料タンク容量:70L●最高速度:135㎞/h●最小回転半径:5.3m●トランスミッション:前進3段、後進1段 ●タイヤサイズ(前/後):7.60-15 4P/7.60-15 6P
スピードメーターの下に左から油圧計/燃料計/水温計/電流計が並ぶ。どれも極地では生死に関わる情報、メーターにもメンテナンス重視が窺える。
豪華さよりも、過酷な環境下での使用に耐えるよう、シンプルで機能的なデザインが採用した2対1可倒式ベンチシート。
初期型FJ40に搭載されたパワーユニットは、3.9L F型 水冷直列6気筒OHVガソリン。当初はガソリンエンジンのみの設定だった。
上部が跳ね上げ、下部が観音開きの3分割式のリアドア。このタイプのほか、観音開きの2分割ドアも設定していた。また、荷室の床面はフラットでスクエアな形状になっていて、トラックの荷台のように使えるように設計されていた。これは、荷物などを積みやすくするため、徹底して機能性が優先されたゆえである。
“ランクル”が長きにわたって高い人気を維持するワケ
冒頭でも触れたように、「ランドクルーザー」はもはや世界的に悪路走破車のイメージリーダー的存在として認知されていると言って過言ではないでしょう。そのイメージはこの「40系」で築かれました。
その支持理由の筆頭はやはり高い走破性能でしょう。ジープ由来のシンプルな構成の4輪駆動システムを独自の技術で熟成させ、あらゆる路面で高い走破性を発揮することで、アフリカのサバンナなどの過酷な環境でも確かな移動手段として支持されています。また、その走破性を支えるタフネスさも重要なファクターです。いくら走破性が高くても故障したら走破が絶たれてしまいます。
ランクルは「壊れない」、「故障しても修理が早い」といった評判が多く聞かれるのもランクルの特色です。そして、車体のバリエーション展開の豊富さも欠かせない要素でしょう。ホイールベースやボディタイプ、幌車やハードトップなど、乗用車と比較にならない多くのタイプが用意されていて、世界中のあらゆる用途にフィットした、という点が、ロングセラーにつながったとのだと言えるでしょう。
この「40系・ランドクルーザー」は、現役当時にロングセラーとなるほどの高い人気を維持し続けたモデルですが、それから40年が経過した現在でも高い人気を保持しています。
そのため、高級車の価格帯となった現行モデルと同じくらいの価格で取引されるほどに高騰しているようです。またその一方で2021年に本家のTOYOTA GAZOO Racingから「GR Heritage Parts」として補給部品が復刻されましたので、「40系」はまだまだ現役選手として活躍できそうです。
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