福島の希望を乗せて走る「水素キッチンカー」の物語【食と観光、そして水素が結びつく、地域再生プロジェクトの取り組みに密着】│月刊自家用車WEB - 厳選クルマ情報

福島の希望を乗せて走る「水素キッチンカー」の物語【食と観光、そして水素が結びつく、地域再生プロジェクトの取り組みに密着】

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街なかに漂うフレンチトーストの香り。その発信源に近づくと、そこにあったのは、エンジン音も排ガスも感じさせない不思議なキッチンカーだ。実はこのクルマ、最新の燃料電池技術を載せた“静寂の屋台”。ここでは、福島で進んでいる再生可能エネルギーの社会実装の取り組みに迫ってみました。

●文:まるも亜希子 ●写真:澤田和久/月刊自家用車編集部 ●BRAND POST提供:トヨタ自動車株式会社

音も排気もないキッチンカーが示す、未来のレストランのかたち

真夏の日差しがアスファルトを照りつける中、福島県・郡山市の街中で一角だけ風がスッと通り抜けるような爽やかな空気に包まれた空間があった。

そこに停まっていたのは、一見どこにでもあるようなキッチンカー。

だが、近づいてみると様子が違う。エンジン音がまったく聞こえない。排気ガスの匂いも一切ない。ただ静かに、美味しそうな桃のジュースの香りとフレンチトーストの甘い匂いが漂ってくるだけ。

メニューに並ぶのは、福島県産の桃を使ったジュースと、郡山が誇る老舗・柏屋のあんこを使用した「贅沢フレンチトースト」。和と洋が出会った限定スイーツだ。

注文を済ませると、涼しげな笑顔のスタッフが手際よく対応。夏場のキッチンカーといえば熱気に包まれているイメージだが、ここは車内も快適そのもの。エアコンが効いていて、まるで移動式カフェのような雰囲気すらある。

走る本格レストラン、その動力はクリーンな水素

実はこのクルマ、水素を燃料にして走る“燃料電池キッチンカー”。

ベースとなっているのは、オーストラリア仕様のハイエースで、ディーゼルエンジンの代わりに燃料電池車「MIRAI」のユニットを組み込んだ特別仕様だ。

郡山観光交通株式会社とトヨタ自動車が連携してNEDO実証事業として作られた水素を燃料とする燃料電池キッチンカー。ちなみにキッチンカーのナンバー「5924」には、59市町村ある福島県の隅々まで、二十四節気で生まれる食材をこのキッチンカーで旅をしながら調理し、その魅力を開拓するという想いが込められている。

車内に足を踏み入れると、その静けさと機能性に驚かされる。大人が腰をかがめることなく立って作業ができるように天井は305mm高く設定されていて、本格的な調理もこなせる余裕のスペース。エアコンアウトレットも備わり、厨房空間としての快適性は抜群だ。

燃料電池キッチンカーの車内は、ルーフ部分を改造し、標準車より天井を305mm高くすることで、快適なキッチン環境を実現。換気扇やエアコンも装備されており、真夏でも快適に過ごせるとのこと。

さらに驚くべきは、搭載されている調理機器のクオリティ。IHクッキングヒーター、冷蔵庫、スチームコンベクションオーブンなど、プロの料理人も唸る装備がコンパクトに収められており、まさに“本格レストランが走っている”という表現がぴったりくる。

燃料電池キッチンカーには、IHクッキングヒーター3台、スチームコンベクションオーブン1台、コールドテーブル冷蔵個1台、電気温水器1台を搭載。

燃料電池キッチンカーは、外部給電アウトレットから可搬型外部給電器に直流で入力し、そこから交流出力(家庭用100V/200V)に変換し、調理機器を動かす。

音も排気もない静かな環境で、街の喧騒を背に頬張る桃スイーツとジュース。目の前を通り過ぎる人々の流れを感じながら味わうそのひとときは、どこか特別で、五感にやさしく、未来の食体験を垣間見たような気持ちになる。食物の恵みが身体全体に染み渡っていくようだ。

燃料電池キッチンカーでは、福島名産の一つで知られる桃のジュースや、日本三大まんじゅうの一つに数えられる和菓子の老舗・柏屋のあんこを使った和洋折衷の「贅沢フレンチトースト」(期間限定)などを提供。

「畑を汚したくない」そんな想いから生まれた静寂のキッチンカー

水素を燃料にした静かなキッチンカーが、なぜ郡山市に現れたのか。そこには、震災後の福島で生まれた一つのレストランと、郡山観光交通の山口松之進社長の覚悟があった。

話は、2011年の東日本大震災直後にさかのぼる。

山形県の名店「アル・ケッチャーノ」の奥田政行シェフが、福島を元気づけたいと郡山に開いたのが、トレーラーハウスを活用したレストランだった。やがて、奥田シェフから「このレストランを引き継いでほしい」と声がかかり、山口社長は関連会社「孫の手」を通じて本格的にレストラン事業へ乗り出す。

背景には、彼が持つ「季節感を感じる人が旅に出る」という独自の観光哲学がある。

ネットやAIによって暮らしは便利になったが、同時に季節の移ろいを肌で感じにくくなった現代。そのことに危機感を覚えていた山口社長は、「旬」を五感で感じられる体験を提供できないかと模索していた。

その答えが、野菜や果物の収穫現場である畑や農園に“1日限りのレストラン”を開く「フードキャンプ」だった。参加者は、畑のそばでその場の食材を調理して食べる。地産地消を五感で体感できるツアーだ。このユニークな取り組みは大きな注目を集め、2019年には環境省主催の「グッドライフアワード」で環境大臣賞を受賞する。

だが、喜びも束の間だった。イベントの主力機材であるキッチンカーがディーゼル車であることに、あるとき気づいてしまう。畑の隣で排ガスをまき散らすことに、環境への罪悪感が拭えなかった。

「自然に向き合う旅なのに、自分たちが自然を汚してしまっているかもしれない──」。その疑念が、水素へのシフトを本格的に検討するきっかけとなった。

まさにそのタイミングで舞い込んできたのが、トヨタ自動車との連携による「燃料電池キッチンカー」の実証事業だったというわけだ。

郡山観光交通(株)の関連会社、(株)孫の手が運営する地産地消レストラン:「Best Table」。取材に伺った「Best Table」で提供されていたランチメニューの「農園野菜のサラダプレート」。これ以外にもメニューは豊富で、ほとんどのメニューが燃料電池キッチンカーで提供出来るとのこと。

〒963-8024
福島県郡山市朝日1丁目14-1
TEL:024-983-3129 火曜日定休
https://magonotetravel.co.jp/besttable

山口タクシーグループ/郡山観光交通株式会社代表取締役山口 松之進さん。水素を通じた福島の食文化の継承や食育の大切さを教えて頂きました。

【後編に続く】https://jikayosha.jp/brand/2025/08/26/271588/

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