VWゴルフのハイパフォーマンスモデル「ゴルフR」最新型を国内初試乗。FFベースの4WD車とは思えない!アクセルワークで姿勢変化を楽しめる!!

2025年1月の東京オートサロン2025で日本初公開され、1月下旬から発売を開始したフォルクスワーゲン・ゴルフシリーズのフラッグシップモデル「ゴルフR」。最高出力333PSを発揮する直4 2.0Lターボエンジン+4MOTION(4WD)を搭載するハイパフォーマンスモデルだ。5ドアハッチバックと5ドアステーショワゴンのヴァリアントが用意され、車両本体価格はゴルフRが7,049,000〜7,499,000円。ゴルフRヴァリアントが7,129,000〜7,579,000円となっている。今回、このゴルフRをクローズドコースであるポルシェエクスペリエンスセンター東京で試すことができた。新型ゴルフRの実力をモータージャーナリストの橋本洋平氏が解説する。

●文:橋本洋平 ●写真:フォルクスワーゲングループジャパン/Volkswagen AG

ゴルフRの起源はゴルフⅣのR32。大パワー×4WDという構成が当時からの流れ

今年1月にマイナーチェンジを行ったゴルフ8(通称8.5)のトップモデルとなるゴルフRを、千葉県木更津市にあるポルシェエクスペリエンスセンター東京というクローズドコースで試すことになった。起伏に富んだ地形を生かし、ラグナセカのコークスクリューを再現したロードコースや、スラロームが行えるフラットな広場、そして散水を行える定常円旋回スキッドパッドを走ることで、ゴルフRの理解を進めてみよう。

「ゴルフR」の前身モデルである、2002年に登場したゴルフⅣベースの「ゴルフR32(アールサーティートゥー)」。241PS/320Nm を発生する排気量 3.2 リッターの狭角V6エンジン VR6を搭載し、このハイパワーを受け止めるためにマルチリンクリヤサスペンションと4MOTION(4WD)を採用。ハッチバックとしての実用性とスポーツカーに匹敵するパフォーマンスを両立させていた。

ゴルフRは、そもそも2002年のゴルフⅣで登場したR32(アールサーティートゥー)が起源。大パワー×4WDという構成が当時からの流れであり、ゴルフ5まではV6 3.2Lを搭載していた。そこから32の文字が外れて現状の「ゴルフR」となったのは6代目になってからだ。この時からエンジンを4気筒2Lターボに改めて現在に至る。目的は軽量化と燃費向上。R32時代はおよそ1600kg。ゴルフRの6では60kgほどの軽量化を実現した。7代目では搭載されるDSGが6速から7速へ。ゴルフ8になりそのほか安全装備や豪華装備を充実するといったことがありながらも1500kgちょっとで収めている。

搭載する2.0L直列4気筒ターボエンジン(EA888型)は、最高出力245kW(333PS)/最大トルク420Nmを発揮し、0-100km/h加速はわずか4.6秒。吸排気可変バルブタイミング機構、排気側の 2 段階バルブリフト量可変機構を備え、電子制御化されたクーラント制御の採用や徹底した内部損失の低減などにより、パフォーマンスと環境性能を高い次元で両立したスポーツエンジン。

それでいてパワーアップはかなりのものだ。新型ゴルフRはゴルフR“20 Years”という特別仕様車で先行投入されたエンジンと同じ仕様が標準装備となり、最大出力245kW(333PS)、最大トルク420Nmを発揮。低負荷状態時にターボが一定の回転を維持して待機することで、その後の加速でレスポンス良く応答するようにしたプリロードターボを搭載。レースモード選択時にはさらにコースティング時のスロットル全閉状態を行わず、これまた再加速時のトルクの立ち上がりレスポンスを向上させている。

4MOTION(4WD)と「R-Performanceトルクベクタリング」により、コーナリング性能も飛躍的に向上。高度に統合されたシャシー制御「Vehicle Dynamics Manager」が、限界域での安定性と操作性を実現している。

一方で4WDシステムも改善が行われている。先代まではハルデックスカップリングという前後のトルク配分だけを行うものだったが、現行型からはRパフォーマンストルクベクタリングと名付けられたシステムを採用している。これはフロントからプロペラシャフトを介してリアに伝えられたトルクを、リアの左右それぞれに備えられた湿式多板クラッチによって左右に振り分けるというもの。左右のトルク配分は自由自在で、例えば左に旋回したい時には右後輪にすべてのトルクを振り分けることも可能。これでトルクベクタリングを行おうというわけだ。ニュルブルクリンクにおけるテストでは、ユニットの新旧比較だけを行うと12秒もの差が生まれていたというから驚くばかりだ。

ボディサイズは、5ドアハッチバックのゴルフRが全長4295mm×全幅1790mm×全高1460mm。ゴルフRヴァリアントが全長4650mm×全幅1790mm×全高1465mm。ホイールベースは共に2620mm。車両重量はゴルフRが1510㎏。ゴルフRヴァリアントが1590㎏。R Advanceは、ゴルフRが1520㎏で10㎏増し。ゴルフRヴァリアントは1590㎏で標準と変わらず。電動パノラマサンルーフはR Advanceのみにオプション設定され、ゴルフR Advanceが1540㎏、ゴルフRヴァリアント Advanceが1620㎏となる。

それだけでなくRパフォーマンストルクベクタリングは、センターデフとしての役割も担い、前後のトルク配分も自在に変化させている。前後トルク配分は最大で50対50まで。低負荷走行時には94対6まで変化するそうだ。なかなか凝ったことができるシステムではあるが、シンプルかつ軽量に仕立て、さらには先代同様MQBプラットフォームを使いながらも、アルミ素材のサブフレームを使うなどの工夫もあり、前述した車重を維持し続けることができたのだろう。

キビキビとした走りの5ドアHBに対して落ち着いた動きのヴァリアント。ファミリーにはヴァリアントの方がオススメかも!

全グレードにACC(全車速追従)、Emergency Assist、Travel Assist、Side Assist Plusなどの先進運転支援システムを標準装備。加えて、ダイナミックコーナリングライトやアラウンドビューカメラ、ドライバー疲労検知システムなど、安全性を高める装備が充実している。衝突安全面では、フロント・サイド・カーテン・センターの全エアバッグを搭載。

そんな新型ゴルフRをいよいよ走らせてみる。まずはスラロームから肩慣らしだ。まずはノーマルモードで走ってみると、しなやかな動きでパイロンをするすると抜けて行く感覚が程よく扱いやすい。これなら乗り心地も満足だ。レースとモードへと変化させると、電子制御ダンパーが引き締められ、機敏な動きをみせつつ、安定して速く駆け抜けられるように変化して行く。

写真上がゴルフR、写真下がゴルフRヴァリアント。外観は新型LEDヘッドライトとリアコンビネーションランプ、新デザインのバンパーとベンチレーショングリルを採用し、よりアグレッシブで洗練された印象を与える。フロントのVWエンブレムはイルミネーション付きに進化。19インチの軽量アルミホイール“Warmenau”(1本あたり8kg軽量)は、R Advanceに標準装備され、スポーティさを強調している。

4WDシステムもさらにスポーツ度を増して行くようだ。それと共にパワーユニットは応答性をみるみる高めて行くから面白い。アクセルを少し踏んだだけで即座にレスポンスするパワーユニットは、過敏すぎることがないために扱いやすさも備えている。それに引きずられるようにRパフォーマンストルクベクタリングは後押し。アクセルを踏めばリアから旋回するような動きを展開してくれるところが面白い。

このステージではワゴンタイプのヴァリアント仕様も試してみた。こちらは5ドアハッチバックに対してホイールベースが50mm伸び、重量が約80kg増しとなるが、それにしてはキビキビとした運動性能が得られていた。もちろん、細かいターンでは5ドアのほうが明らかに上なのだが、ロングドライブ主体に使う方や、ファミリーの人数が多い人ならばコレを選ぶのも悪くはない。落ち着いた動きはむしろ高速ワインディングに合っているかもしれない。

インテリアにはR専用のデジタルメータークラスターを採用し、中央に大型のレブカウンターを配置。ステアリングはタッチ式スイッチ付きで、大型パドルシフトを装備。シートはヘッドレスト一体型のスポーツシートで、マイクロフリース仕様が標準。「R Advance」グレードでは、カーボン調エレメントを配したナパレザーシートを採用し、上質感を演出している。

続いてはそのRパフォーマンストルクベクタリングの威力をもっと知るためにスキッドパッドに移動。スタビリティコントロールを外した状態でどう動くのかを試してみた。すると、アクセルを入れれば入れるほどリアがフロントを追い越すかのように動き、フロントはインに向かって行く。慣れるまではちょっと独特な動きに感じたが、手にうちに収めることができるようになれば、定常円をドリフトしながら駆け抜けることも可能。これもまたかなり面白い。これならスノードライブに行ったとしても、フロントからドリフトアウトするようなこともなく安心して駆け抜けることが可能になるだろう。

LED マトリックスヘッドライト “IQ.LIGHT” (ダイナミックターンインジケーター付) を全車に標準装備。装着されるタイヤ&アルミホイールは、標準モデルが225/40R 18 タイヤ/ 7.5J x18 アルミホイール”Jerez” 。R Advanceは、先に紹介した通り1本あたり8kg軽量な8J x19 アルミホイール”Warmenau” (ヴァルメナウ)に235/35R 19 タイヤが組み合わされる。

最後にロードコースにおいて、その全てを味わってみる。コースインしてフル加速をさせてみると、さすがは0-100km/h加速4.6秒を誇るだけのことはある。急勾配であっても不満なくハイスピードまで持って行ってくれるところが心地いい。けれども危うい感覚が一切ない。シャシー全般はVehicle Dynamics Managerによって統合制御。電子制御ディファレンシャルロックのXDSや電子制御可変ダンパーのDCC、そしてRパフォーマンストルクベクタリングを統合制御し、安全を担保した上で限界を高めてギリギリのラインをいとも簡単に楽しませてくれる。その上でコーナーの立ち上がりでアクセルを積極的に踏めば、かつてないヨーイングを即座に生み出してくれるから最高だ。

5ドアハッチバックの「ゴルフR」の価格は7,049,000円、「ゴルフR Advance」は7,499,000円。5ドアステーションワゴンの「ゴルフR ヴァリアント」は7,129,000円、「ゴルフR ヴァリアント Advance」は7,579,000円。R Advanceでは、電動パノラマスライディングルーフやプレミアムオーディオを含む「ラグジュアリーパッケージ」もオプション設定(価格は253,000〜275,000円)。有償オプションカラーの「ラピスブルーME」は全グレードで選択可能(44,000円)。

FFベースの4WDとは思えない、アクセルで動かす面白さがこのゴルフRには存在することを、まざまざと見せつけられた。これはクローズドコースだけでなく、一般道でもその動きを味わえるはず。ライントレース性が高まったゴルフRなら、ワインディングはかなり面白いことになりそうだ。

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