未来のモビリティの行く末を占う、壮大な社会実証都市「Toyota Woven City」:2025年秋以降にオフィシャルローンチへ【Phase1の建築完了を発表】

Toyota Woven City

トヨタ自動車は、米国ラスベガスで開催されているCES 2025にて、モビリティのテストコース「Toyota Woven City(以下、Woven City)」のPhase1の建築が完了し、2025年秋以降のオフィシャルローンチに向けて、その準備を本格化することを発表した。

●文:月刊自家用車編集部

CES 2025 プレスカンファレンスにおいて、豊田章男会長が進捗状況をプレゼンテーション

静岡県裾野市のトヨタ自動車東日本(以下、TMEJ)東富士工場の跡地に、リアルなテストコースとして建設される「Toyota Woven City」は、「自分以外の誰かのために」という思いをもつInventors(インベンターズ/発明家)が、“モビリティの拡張”を目指し、自らのプロダクトやサービスを実証を行う実証都市として開発が進んでいる。

今回、CES2025プレスカンファレンスにて豊田章男会長が登壇したプレゼンテーションにおいて、最初に実証を開始するPhase1の建物が完成して、2025年秋以降に実証を開始するオフィシャルローンチを予定していることを明らかにした。

Woven Cityに住む住民は、2025年秋以降のオフィシャルローンチ時点ではトヨタ及びWbyTなどの関係者とその家族100名程度を想定。

Phase1エリアは社外のInventorsやその家族などに少しずつ拡大し、最終的な住民は約360名を予定している。

完成したPhase1の建物は、日本初となる“LEED for Communities”で最高ランクであるプラチナ認証を取得済み。今後内装工事やインフラなどの準備を本格化させ、オフィシャルローンチを目指すとのこと。

一部の建物には木材がふんだんに用いられるなど、日本的な温もりを感じさせる都市に仕立てられる。

Woven Cityはヒト中心の街として、InventorsやWeaversといったWoven Cityに集う人々を中心に据え、モビリティの拡張によりヒトや社会の可能性を広げ、幸せの量産という共通のゴールを目指すという。

また、TMEJ東富士工場の建屋を一部残し、Woven Cityにおけるモノづくりの起点として活用すべく、リノベーション工事も進められている。

左がリノベーション後の旧東富士工場の建屋コンセプトイメージ、右がリノベーション中の現在の旧東富士工場の建屋の写真。

Woven Cityに参加するInventorsは、トヨタやWbyTを含むトヨタグループ企業だけでなく、社外の企業やスタートアップ、起業家など同じ志をもつ企業や個人も含まれる。

現時点で決定しているWoven CityのInventorsは以下の通り。

参加を発表したInventors企業
企業名おもな事業内容Woven City実証テーマ
ダイキン工業株式会社空調製品、フッ素化学製品等の製造/販売/アフターサービス“花粉レス空間”や“パーソナライズされた機能的空間”に関する実証実験
ダイドードリンコ株式会社清涼飲料等の製造販売自動販売機を通じた新たな価値創造
日清食品株式会社即席麺等の製造および販売新たな“食文化”創造に向けた食環境の構築とその環境が及ぼす影響の検証
UCCジャパン株式会社コーヒー製造販売等国内事業会社の統括未来型カフェの運営を通じたコーヒーの潜在価値の実証
株式会社増進会ホールディングス通信教育、教室を展開する総合教育事業データ活用による先進的な教育スタイル及び新しい学びの場の実現

上記に加え、公表済みのENEOS株式会社/日本電信電話株式会社/リンナイ株式会社とも引き続き検討を進めていることも発表されている。

Woven City Phase1 基本情報

住所静岡県裾野市御宿1117(TMEJ東富士工場跡地)
敷地面積約5万m2(将来は約708,000m2)
おもなタイムライン・2020年1月7日 CES 2020にてコンセプト発表
・2021年2月23日 Phase1地鎮祭。同年3月より造成工事を開始
・2022年10月10日 Phase1安全祈願祭。同年11月より建築工事を開始
・2024年10月31日 Phase1竣工
・2025年秋以降 Phase1オフィシャルローンチ
住民2025年秋以降トヨタやトヨタ関係者を中心に住み始め、Phase1では最終的に約360名が居住予定(将来的には全エリアで2,000人に拡大予定)

CES 2025 プレスカンファレンス プレゼンテーションの概要

豊田章男会長プレゼンテーション

みなさま、こんにちは。

本日はご来場いただき、誠にありがとうございます。多くのカメラに撮影され、テイラー・スウィフトになった気分です!

冗談はさておき、トヨタと聞くと、おそらくみなさんはクルマの信頼性や品質、お手頃価格といったことを思い浮かべられるでしょう。

一方で、“未来の実証都市”を真っ先に思いつくことは少ないかもしれません。

しかし5年前、まさにここ、この同じステージで、どうやら同じネクタイをしていたようです。

トヨタは実証都市をつくると発表しました。それが「ウーブン・シティ」です。

ウーブン・シティは、美しい富士山のふもとに位置しています。ここは人が住み、働き、楽しむだけの場所ではなく、あらゆる新しいプロダクトやアイデアを発明・開発できる場です。

住民たちが自発的に参加する、実証実験の街であり、インベンター(発明家)は実際の生活環境で、新しいアイデアを安全かつ自由に実証できます。

ウーブン・シティは、未来の暮らしを考え、向上させる仲間を、世界中から歓迎します。

そして本日、ウーブン・シティのフェーズ1の竣工を発表させていただきます。

今年から住民が住み始め、徐々にリアルな実証の場として発展させていきます。フェーズごとに住民は増加し、最終的には約2,000名が住む予定です。住民にはトヨタ従業員やその家族、定年を迎えた方、小売店舗、実証に参加する科学者、各業界のパートナー企業、起業家、研究者などが含まれます。

そしてもちろん、ペットも大歓迎です! こちらが私のペット・ミニーです。ミニーもウーブン・シティにすぐに馴染むことでしょう。

ウーブン・シティの交通手段はすべて低排出、もしくはゼロエミッション…理由はサステナビリティが私たちが取り組む優先事項のひとつだからです。

そして日本で初めて、コミュニティに対するLEED認証カテゴリで、最高ランクであるプラチナを取得しました。

ウーブン・シティでは、4つの領域の研究とイノベーションに注力していきます。ヒト/モノ/情報、そしてエネルギーのモビリティです。ここを“モビリティのテストコース”とし、私たちが抱える課題の解決策を開発していきます。

たとえば、車椅子レースカーのようなパーソナルモビリティです。誰もが速いクルマを楽しむべきですからね!

夜間に安全に帰宅をエスコートしてくれるドローンや、高齢者に寄り添って支援するペットロボット。

私たちの仲間であるJobyが開発した空飛ぶクルマなどもあります。空飛ぶクルマなら、ウーブン・シティから東京まで、迅速かつ渋滞なく移動できます!

そしてJobyのようなパートナーのために、工場だった建物の1つを、航空機を格納できるほど大きい実験場に作り変えました!

ですので、広いスペースを探しているインベンターの方がいましたら、ぜひ私たちのことを覚えておいてくださいね!

ウーブン・シティの住居も未来のテクノロジーのための実証の場となります。たとえば、日常生活をサポートしてくれる在宅ロボットもそうです。

私たちはいま、搭載したカメラで人間の動きを観察して家事を学習するロボットを開発中です。

ご存じかもしれませんが、日本をはじめアジアでは、洗濯物を畳むことは重要な家事のひとつです。こちらは、スタッフが手持ちカメラを使ってロボットにTシャツの畳み方を見せている様子です。そしてこちらが、送られたデータを学習した、翌日のロボットです。

ロボットは一夜で、3点をつまむ畳み方を完璧に習得しています!

これは一例ですが、このようなテクノロジーを、ウーブン・シティで開発して、実証することを考えています。

自動化した物流や、e-Paletteの自動運転による移動など、自動化にも取り組みます。

ここだけの話ですが、私自身、トヨタのマスタードライバーとして、自動運転は少し退屈だと思っていました。

しかし、開発チームから自動でドリフトする2台のレースカーを見せてもらい、その考えは変わりました。子供なら「最高!」と言うでしょう。私もぜひ乗ってみたいです。

自動運転は人工知能(AI)含め、ウーブン・シティで開発予定の数多くのテクノロジーのひとつです。

とくに、AIを活用し、ウーブン・シティの範囲を広げていきたいと考えています。これで、外部の方々と、ウーブン・シティで取り組んでいるプロジェクトをバーチャルにつなぐことができます。

彼らはウーブン・シティでのバーチャルな私を作ろうとしています。ただし、それはまだ作成中のものです!

2021年に着工したウーブン・シティは、Woven by Toyotaのチームメンバーが愛情を込めて作り上げています。

Woven by Toyotaはこのプロジェクトをサポートする、独立した会社で、世界中の60以上の国と地域から集まった2,200人のチームメンバーが在籍しています。

Woven by Toyotaのミッションはヒト中心のテクノロジーを作り、モビリティを拡張して、幸せを量産することです。

クルマの新しいオペレーティングシステムの「Arene(アリーン)」や、実世界の環境を再現するデジタルツインのプラットフォームも開発中です。

またVision AIは、ビデオデータ分析とAIを組み合わせることで、ヒトやモノの動きをより深く理解できます。

リアルとデジタル両方の環境を活用し、新しいテクノロジーをウーブン・シティで迅速に実証、開発していきます。

さて、みなさんは「ウーブン・シティはトヨタに収益をもたらすのか」と考えているかもしれません。

おそらく、そうはならないでしょう! しかし、それで構いません。

グローバル企業市民として、私たちの未来に投資し、トヨタが培ってきた知見や技術を他の人たちと共有し、地球と人々に幸せをもたらす新しいアイデアを支援する責任があると考えています。

新しいアイデアで人々を幸せにする、それがウーブン・シティをつくった理由です。

今年の夏にはピッチコンテストを開催し、経済的支援が必要なスタートアップや個人がウーブン・シティでアイデアを実現するための資金を提供します。

トヨタの強みと、自動車産業ではない業界の強みを組み合わせることで、一社やひとりでは創りだせない新しい価値や新しいプロダクト、新しいサービスを創りだせると信じています。

私たちはこれを“かけ算による発明”だと考えています。

一緒に取り組めば、スカイ・イズ・ザ・リミット、不可能なことはありません!

スカイ/空といえば、私たちはロケットにも着目しています。

モビリティの未来は、地球や自動車会社1社に制限されるべきではありません!

ご存じない方もいるかもしれませんが、トヨタはもうすぐ100周年を迎えます。

ただし自動車会社としてではなく、世界初の自動織機のインベンターとして、です。そうです。

トヨタはクルマづくりから始めたのではなく、布を織ることから始まりました。それが、将来ウーブン・シティに住む方を「Weavers(ウィーバーズ)」と呼んでいる理由です。

クルマのテストドライバーと同様に、ウーブン・シティの住民には、インベンターが開発した新しいプロダクトやサービスを体験していただき、未来をともに紡いでいく大切な役割を担っていただきます。

ウーブン・シティではコラボレーションがすべてです。多様な視点や才能、能力をひとつの布に一緒に織り込み、私たちの未来の当たり前を創るチャンスです。

その未来で、私たちはヒトだけではなく、心も動かしたいと考えています。

今日、私の話を聞いて、未来をより良くしたい、変化を起こしたい、価値のあることをしたいと感じ、ワクワクしたみなさん。ウーブン・シティに参加する招待状を受け取ってください。

ご清聴ありがとうございました。

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