価格&発売日が決定した中国発のe-SUV「ATTO 3」、速攻インプレ

2023年1月31日(火)より発売を開始する中国発のe-SUV「ATTO 3」の価格が判明した。実車を通して感じた、インテリアなどの装備類や走りの実力などをお伝えしよう。

●文:川島茂夫 ●まとめ:月刊自家用車編集部 ●写真:奥隅圭之

先達の残したものをしっかりと理解して過不足なくまとめている

機械は部品の数ほどノウハウがある。内燃機車のパワートレーンその代表例だろう。その機械ノウハウの塊となる内燃機変速機がないBEVは自動車産業への進出ハードルを大きく低下させる。とは半ば自説なのだが、当たらずとも遠からずとは思っている。試乗したBYD(Build Your Dreams)社製BEVのアット3(atto3)もそんな新興勢力の一車だが、新興ならではの斬新さとクルマに必要不可欠な手堅さを巧みバランスさせているのが印象的だった。

斬新さはインテリア。インパネやドアトリム、空調レジスターが奇抜とまでは言わないが、かなり個性的なデザイン。メーターパネルはステアリングコラム上にコンパクトに設置。対して中央には大型ディスプレイを配し、しかも90度転回して縦長の横長の表示を選択可能。ステアリングのスイッチでワンタッチというのもグラスコックピットの使い勝手で好感触。試乗車は日本向けの細かな適合が終了していないため、ナビを含む情報表示も未整理だったが、多様な情報に合わせた使い勝手はトレンドになりそうな予感がした。

細部の造りは並みのレベル。デザイン志向からしてもプレミアム売りでないのはすぐに理解できる。小さな飾り気ないメーターパネルも然り、これも既存のクルマ観からの脱皮を感じさせてくれた。

一方、キャビン実用性や走行性能は手堅い。先達の残したものをしっかりと理解して過不足なくまとめ上げた印象である。

走行性能に関しては先ずBYD社の成り立ちを理解するのが重要だろう。同社は1995年にバッテリーメーカーとして設立され、二次電池事業を世界展開。2003年から自動車事業に参入する。2005年には日本法人を設立し、電動バスや電動フォークリフトの販売、太陽光発電事業など展開し、日本国内事業所も広範囲に展開している。電動系のサプライヤーとして確固たるポジションを築いているメーカーでもあるのだ。乗用車事業は新興でも電動事業への根は太いのだ。

アット3の走りはウェルバランス。ケレン味がない。電動の特技というか癖でもある発進や加速時の蹴り出し感は抑えて、加減速はアクセルペダルコントロールに的確かつ穏やかに追従する。凄いと思わせるような特徴はない。黎明期の試行を省略していきなり熟成期の落ち着きなのだ。もっとも、乗客へのストレス減が肝要なバス事業の展開を考慮するならドライバーや乗員に配慮したドライバビリティの実現もそう難しくはなかったのだろう。

フットワークについても同様。過度な反応はなく、BEVの車重や低重心を活かしたしなやかさを特徴にする。高速域の据わりなど安心感をもたらす部分もしっかりしている。いずれも他BEVを出し抜くほどではなく、これもまた手堅いまとまりなのだが、BEVからの乗り換えはもちろん、内燃機車からの乗り換えでもすぐに馴染める特性である。

7月21日発表時のATTO 3

全長は4.5m弱。SUVではコンパクトクラスの上級。カローラクロスとほぼ同じサイズである。駆動方式はFWDで駆動モーターの最高出力は150kW、最大トルクは310N-m。ニッサン・アリアB6(FWD)と同等レベルである。バッテリー容量は59kWh弱。リーフ+と同等。WLTCモード航続距離は485kmであり、アリアB6よりも多少長い程度だが、スペックを見る限り最新BEVとして実用性能も手堅く押さえている。

SUVとして見ればFWD限定なのが気になるものの、床下にバッテリーを置くBEVがパッケージング面からSUVを選択するのは常套でもあり、それを欠点として論うべきでもないだろう。

価格競争力に優れているのもアット3の魅力のひとつ。前述のアリアB6が539万円、同等航続距離の現代アイオニック5のベーシック仕様が税込479万円に対してアット3は440万円である。個性的なデザインに手堅い走行性能と使い勝手、そして高いコスパを見所として注目すべきBEVのニューカマーがアット3なのだ。


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