時代の波に翻弄されたプリメーラ。’90年代以降、ミニバンやSUVの人気に押され、影が薄くなっていったセダン。とくに苦戦が顕著となったミドルセダンのプリメーラは初代以上に欧州へと軸足を移していく。
●文:月刊自家用車編集部
ミドルセダンへの逆境で国内販売は失速したが欧州での評価は不変
初代プリメーラが登場した’90年ごろの日本車は、それ以前の、エンジンパワーや操舵応答性といった数値性能追求型の開発から、味やフィールといった、五感に訴える走りを重視する方向へとシフトする過渡期にあったということができるだろう。’70年代に大きな課題となった排ガス対策に成功し、高性能と環境性能の両立にいち早くメドをつけた日本車は、それでも欧州車に叶わない理由を、彼の地の環境や速度域に合わせた走りの経験で見つけ、’80年代にそれを学ぶことで、新しいクルマの価値や魅力を訴求する可能性に目覚めたのだ。
ボディ剛性の重要性
プリメーラはその初期の作品と言えた。そうした変化のきっかけは、たとえば日産が’84年に開始したVWサンタナのノックダウン生産時のエピソードからも、見て取ることができる。事前の準備を進める中で、「日本の速度域ではこのボディ剛性は過剰だから、コストダウンのために溶接個所を減らしたい」と申し入れた日産のエンジニアに、VWのエンジニアは「それではVWの走りではなくなる」と譲らなかったという。ドイツ車の高いボディ剛性は、超高速での数値性能だけではなく、安心感のある走りのフィールにも大きく関わることを、日産はそうして学んだのだ。
2代目のプリメーラ ソフトな乗り味
初代プリメーラが日本のクルマ好きや欧州市場での好評を得た一方で、国内の一般ユーザーからは乗り心地のクレームも出た事実を受けて、2代目のプリメーラはキープコンセプトながら、普通の日本人にも受け入れられる、ソフト方向の乗り味で登場した。ところが、乗り心地と引き換えに、初代と比べるとシャープなフィーリングをやや薄めた2代目の味付けは、今度はクルマ好きからのブーイングを浴びてしまう。実際には、リヤにもマルチリンクビーム式のサスペンションを与えられた2代目の走りは十分に欧州車水準だったのだが、作り手の進化とは裏腹に、日本のクルマ好きたちは、「プリメーラの走りのフィーリングが喪失した」という失望も少なくなかったのだ。
2代目P11型(1995-2001年)
走行安定性に磨きをかけつつ、乗り心地も向上
3代目プリメーラ 欧州で高い人気
2代目が登場した’90年代後半からは、日本国内ではいわゆるセダン離れが進み、ファミリーカーの主役がミニバンへと急速に移りつつあった。そこで、3代目では国内市場をなかば諦め、3ナンバーの国際サイズのボディと、日本市場ではアバンギャルド過ぎると言われた流麗なデザインを採用した。その目論見通り、3代目P12は日本国内での販売を終了後も、欧州で高い人気を保ったのだった。
3代目P12型(2001-2005年)
斬新な内外装デザインは数多くの賞を獲得
プリメーラとモータースポーツ
「このクルマなくしてP10なし」日産VWサンタナ
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