トヨタ自動車株式会社は2月5日に「トヨタの物流に関する取り組みについて」の説明会を開催した。”物流の2024年問題”に向けた活動内容や具体的な現場の改善事例、2019年8月から可能になった25m連結フルトレーラーの導入事例などをトヨタ自動車物流管理部の担当者が説明を行った。
●文:月刊自家用車編集部 ●写真:トヨタ自動車株式会社
新しい物流対策でドライバー不足への対応や負担軽減、カーボンニュートラルの実現を目指す
2024年4月からトラックドライバーの年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることで、輸送能力の縮小や運賃上昇、ドライバーの収入減少などでさらなる人手不足が懸念されている状況だが、これらの改善に向けてのトヨタ自動車の取り組み状況が説明された。
トラックドライバーは2030年には2015年比で減少の見込みで、国土交通省、経済産業省、農林水産省が「ホワイト物流」推進運動を展開している。「ホワイト物流」とは、トラック輸送の生産性向上や物流の効率化、女性や60歳以上のドライバーも働きやすいホワイトな労働環境の実現を目指し、荷主と輸送会社が協力して対応していこうというもの。これにトヨタ自動車も参加している。また、CO2排出量の削減も2030年には2013年比でマイナス26%の水準が求められている。
そこでトヨタ自動車は、さまざまな物流改革に取り組んで来た。最初に紹介されたのが、「引き取り物流」だ。これは、今まで部品物流に関して仕入れ先の工夫で対応してきたが、仕入れ先単独の荷物量ではトラックの積載率向上に限界があり、輸送会社ごとに荷物をまとめるため、長時間の走行とリードタイム、追加作業が発生していた。
これを解決するために、トヨタ自動車による「引き取り物流」を導入。仕入れ先や輸送会社をまたぐ形での運搬や中継地の集約と再編を行い、トヨタ生産方式の原則である後工程引き取りへ変更して、ドライバーにやさしい労働環境作りを実施した。2024年1月の時点で対象の約4割の引き取り化を完了しているという。
さらに物流現場の改善として、部品仕入れ先の荷積みと荷下ろし作業を人力での積み込みからフォークリフトでの積み込みに変更し、ドライバーの負担軽減と作業時間短縮を推進。また、安全な出荷スペースの整備を行い、構内作業者の安全確保とリフト作業を行うドライバーの安心確保も行ったという。そして、改善前は1社分の積み込みで非効率だったが、複数の仕入れ先の荷物の積み込むミルクラン方式へ移行。効率よくトレーラーに積み込むために、各社の荷物量に合わせた最適な組み合わせとして、高効率な物流を実現したという。
最後に紹介されたのが「25m連結フルトレーラー導入による輸送効率の改善」だ。前述したCO2排出量の削減を含めたカーボンニュートラルへの取り組みとドライバー不足となる2024年問題への対応として1台で2台分の輸送が可能なダブル連結トラックの導入を行っている。
2019年8月から岩手県北上市の東北自動車道・北上江釣子ICから九州自動車道・太宰府ICまで規制緩和が行われ、25m連結フルトレーラーの走行が可能となり、2022年6月の時点で運行台数が205台と大きく増加。同年9月の国土交通省・物流小委員会で走行経路拡充が決定し、同年11月にはそれまでの約2050㎞だった許可ルートが約5140㎞に拡充された。
説明会では、25m連結フルトレーラーのトヨタ自動車での導入事例が紹介され、10040mmの大型車両と後方車両となる11150mmのセミトレーラーを「ドリー」で連結。工場納入時には脱着拠点で前後を切り離し、後方トレーラーにトラクタを装着し、それぞれ荷下ろし先に向かうという。
実際には愛知県にあるトヨタ上郷物流センター(中継地兼脱着拠点)で大型車とセミトレーラーを「ドリー」で連結。幹線750㎞を25m連結フルトレーラー状態で走行。トヨタ自動車九州の5㎞手前にある脱着拠点で再び分離し、工場に部品を納入する。このルートを10t車(12便)で運行したのに対し、25m連結フルトレーラー(6便)で運行したことにより、ドライバー数は総数36名から22名へと39%減、CO2排出量は2843tから2212tへと22%減らすことができたという。
現在走行している25m連結フルトレーラーは、帰路については空荷ということだが、今後は積載の検討や長距離走行ルートの拡充も検討しているという。
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