2030年には、5兆円規模のマーケットになる可能性大! トヨタが狙う「水素で未来をかえていく」取り組みとは?

トヨタは、2024年2月28日に東京ビッグサイトで開催された「H2&FC EXPO」において、水素社会実装の取り組みについてのプレゼンテーションを行った。

●まとめ:月刊自家用車編集部

FCEVは、商用車を中心に急速な普及が見込まれている

トヨタは1992年に燃料電池開発をスタートさせてから、これまで約30年の間にMIRAIを筆頭としたFCEV(水素燃料電池車)を世に送り出し、企業・自治体等を対象とした法人向け水素燃料電池製品に関しても、すでに世界15か国、100社以上のクライアントにFCシステムを提供している。

また今年2月には、インフラプラントの設計、建設等を手がける世界的なエンジニアリング企業の千代田化工建設と、大規模水電解システム(水を電気分解して高純度の水素ガスを発生供給する水素プラント)の共同開発および戦略的パートナーシップを構築していくことで合意。協業基本合意書を締結するなど、国内外を対象とした水電解装置の導入普及を、これまで以上に積極的に取り組みことを公表している。

今回「H2&FC EXPO」が開催された東京ビッグサイトにおいて、トヨタ自動車水素ファクトリーを牽引する山形プレジデントより、これまでトヨタが取り組んできた水素事業の活動の歩みと、これからの展望が示されたが、想定以上に水素化を求めるニーズが高まっていることを実感させられた。

トヨタ自動車の水素ファクトリーは、2023年7月に専任組織として新設された部門。そのトップを務める山形プレジデントがプレゼンテーションを担当。

まず水素市場の規模に関しては、世界的に需要増加が見込まれており、2030年には欧州/中国/北米の主要マーケットで9000万トンの水素を“つかう”需要が生まれるという。このうち欧州と中国では、モビリティ分野への使用活用の目標も数値化されており、欧州は230万トン、中国は数百万トンが目標数値として示されている。なお日本の“つかう”需要に対しては300万トン(2030年)で、うちモビリティ分野には8万トンの活用を目標としている。

今後のモビリティ分野の市場見通しに関しては、2030年に向けて急激に水素需要が拡大することが予想されており、なかでも小型商用車と中大型トラック・バスといった商用車を中心としたビジネス向け需要が高まるという。そのうちトヨタへのオファーとして全体で年間10万台の需要が生まれることを想定している。

2030年の移動モビリティ全体のグローバル水素市場は、年間5兆円規模になる見通し。2025年を境に需要が急速に高まることが想定されている。

千代田化工建設と共同で、大規模水電解システムの普及を目指す

この需要に応えるべく水素ファクトリーとしては、それぞれの国のマーケットに合わせて開発・生産「量産化、現地化」、有力パートナーとの連携強化「標準規格化」、競争力「次世代FC技術の革新的進化」、の3つを軸に活動しており、今後その動きをさらに加速化させるとのこと。

そのひとつといえるのが、千代田化工建設と進めていく、大規模水電解システムの共同開発事業である。トヨタが持つ燃料電池技術を用いた水電解セル・スタックの生産や量産技術と、千代田化工のプロセスプラント設計技術や大規模プラントの建造技術を融合させ、競争力のある大規模水電解システムを実現させるのが狙いだ。これにより、今後急激に拡大していく国内外の水素製造事業に対応し、国内外の事業者から求められる水素燃料を、ニーズがある場所地域で生産することで、迅速かつ低コストで提供できるようになるという。この事業を進めることで、燃料電池車が普及するためのネックのひとつになっている、水素燃料の供給体制を強化できるというわけだ。

左が水電解装置(高集積化されたトヨタ製水電解スタック群)、右が大規模水電解システム(千代田化工によるスマート・スケーラブルエンジニアリング)のイメージ図。

世界最小レベルのサイズでありながら、水素の製造効率が高い水電解システムを構築できることが特徴。水素の使用量や設置面積の制約などのさまざまなニーズに対応できるよう規模に応じたパッケージング化を行うことで、水電解システムのコストダウン、生産効率アップ、品質安定化が狙えるという。

なお、クルマ以外のモビリティに関しても、MIRAIで高く評価されているトヨタ製FCモジュールを搭載する製品は登場しており、そのなかには実用的な性能を持つ製品も数多く見受けられる。山形プレジデントが述べていた「すでに『社会実験』から『社会実装』の段階に来ている」という言葉も、とても印象的だった。

パートナー各社との協力関係も強化。クルマ以外の移動モビリティに関しても水素燃料を用いた製品を展開している。

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