
トヨタ・ランドクルーザーは、世界中で「キング・オブ・4WD」として揺るぎない地位を築いてきたが、その栄光の核をなすのは、華美なラグジュアリーを排し、極限の環境下での信頼性・耐久性・悪路走破性に特化した実用重視のモデル群になる。このルーツを受け継いでいるのは、ランドクルーザー40系、70系などになるが、今回発表された”FJ”もこの佳き時代の路線を強く意識しているのは間違いない。
●文:月刊自家用車編集部
世界中から支持されるランドクルーザー、その人気は永遠なり!
もともとランドクルーザーは、単なる移動手段ではなく、人々の命を預かる「道具車」として、特に僻地や未開の地で切実なニーズに応え続けてきた歴史を持つ。
そして、その本質的なタフさと機能美こそが、世界中の熱狂的なマニアから求められる理由であり、ランドクルーザーのアイデンティティにもなっている。
ランドクルーザー40系:伝説の礎を築いたロングセラー
ランドクルーザー40。撮影車は1974年式の2ドアバン。
このランドクルーザーの無二の魅力を不動のものとしたのは、1960年に登場したランドクルーザー40系(通称ヨンマル)だ。40系はその後24年間という長きにわたり販売され、その信頼性の高さから、世界のクロスカントリー車としての地位を確立し、ランドクルーザー神話の礎を築いた存在として広く認知されている。
40系は、徹底して実用性を追求した設計が特徴で、その頑健な作りは、まさに「走破性と信頼性」に特化している。シャシーは2代目(20系)を踏襲し、ショート(2285mm)、ミドル(2430mm)、ロング(2650mm)のホイールベースがあり、後に海外向けに2950mmが追加されている。ボディはソフトトップ、2ドアバン、4ドアバン、ピックアップ、消防車など、幅広い用途に対応するバリエーションを展開された。
1960年に登場し、24年間にわたり販売されたロングセラーモデル。タフなデザインが特徴で、高い信頼性と悪路走破性が世界中で評価された。
内装に関しても、車内は内張りなどがなく、ワイルドに鉄板むき出し。実用性に徹していることが見て取れる。前席は3人掛けのベンチシートを採用し、後席は進行方向に対し横に座る簡易式のベンチタイプで、左右に跳ね上げて格納可能。荷室の床はトラックの荷台のように平らでスクエアな形状をしており、徹底して機能性が優先されている。
車内は内張りがなく、ワイルドに鉄板むき出しの構造が特徴。
前席は3人掛けのベンチシート。車内は内張りなどなく、ワイルドに鉄板むきだし。
このモデルの神話的な実績を支えているのは、極地での修理までを想定した、歴代主査がサインをした古文書のような図面に基づいて作られてきた設計思想だ。実際に、50年以上前に誕生した40系とまったく同じ部品が、現在も一部のランドクルーザーの足回りや駆動系に使われているという事実は、このモデルが単なる工業製品を超えた「生きた遺産」であることを示している。
後席は進行方向に対し横に座るベンチタイプで、左右跳ね上げで格納する。荷室の床はトラックの荷台のように平らでスクエア。
1974年式はバックドアは上下分割式で、さらに下部分は観音開きで開閉する。
撮影車のエンジンは3.9Lの6気筒を搭載。1973年には6気筒3.6Lディーゼルエンジン、1974年には4気筒3Lディーゼルエンジンも追加されている。
現在でも、30年以上前の40系が400万円前後で取引され、レストア済みの個体は600万円に迫るものも見受けられるなど、中古車相場は高値安定の状態が続いている。
ランドクルーザー70系:命を預かる究極の実用車
ランドクルーザー70は、国内でも2023年に復活。国内再導入に伴い、パワートレーンや操縦安定性、デザイン、安全性能がアップデートされている。
1984年に登場したランドクルーザー70系は、40系の実用モデルとしてのキャラクターを最も色濃く継承したモデルだ。
快適性よりも「120点の突出した信頼」を最優先した思想で作られ、その高い信頼性や走破性が、命がけの現場を含む、世界中の過酷な環境で支持されてきた。
活躍するフィールドは世界中の極地で、町から何時間も荒れ地を走り続けてたどりつく奥地の集落では、食料や燃料を運ぶライフラインであり、救急車やドクターカーであり、治安を守る警察車両や軍用車としても運用されている。
1984年の登場以来、基本設計を変えずに受け継がれてきた究極の実用車として名高い存在。
車体構造は、頑丈なラダーフレームにリジッドサスペンションを吊り、自身の判断でギヤと駆動輪を切り替えるパートタイム4WDシステムを採用する、シンプル極まりないクルマ。道なき道を走るような途上国では、70系が廃車されても、足回りなどの主要パーツは大切に保管され、貴重な残りの同型車の維持修理に使われているというケースも聞かれるほどだ。
2004年に排ガス規制の影響で国内販売は終了したが、世界市場では販売が継続されていた。2014年には誕生30周年記念として期間限定で国内復活(復刻シリーズ)販売され、商用車規格のガソリンMT車のみであったにもかかわらず、目標月販台数200台を大きく上回る3600台の受注を記録。
復活を遂げた70系は、チルト&テレスコピック付きステアリングが採用されるなど、機能装備を中心に近代化が図られる。6速ATのシフトレバー、その奥には駆動輪を切り替えるマニュアル式のトランスファーレバーなど、操作感を意識したレイアウトも見どころのひとつ。
さらに2023年には、型式上は継続生産モデルとして9年ぶりに国内販売が再開され、待望の3ナンバー乗用車登録のディーゼル車にATが設定されたことで、再び大人気を呼んでいる。現在はオーダーストップが続いている状況だが、このモデルが持つ「ホンモノ」の価値が、現代においても強く求められていることを証明している。
2023年に復活した70系は、2.8Lディーゼルターボ+6速ATの組み合わせになる。
ランドクルーザー”FJ”:原点回帰と新たな「自由」を獲得
ランドクルーザー”FJ”(プロトモデル)
そして、この実用重視の伝統を未来につなぐのが、新型のランドクルーザー”FJ”になる。
開発コンセプトは、250シリーズに続く「ランクルの原点回帰」を強く意識して開発され、「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」としての信頼性・耐久性・悪路走破性の継承と進化を追求。さらに自分らしく楽しむ自由「Freedom & Joy」という新たな価値を提供するという。
デザインと機能性は、歴代ランクルが重視した居住性と積載性を考慮したスクエアなキャビンと、サイコロをモチーフとした直方体ボディのシルエットを踏襲し、無駄のない強い塊感を表現。フロント&リヤのコーナーバンパーは、修理性の向上とカスタマイズへの対応に配慮した取り外し可能な分割タイプとなっていることも、実用車を意識した工夫のひとつになる。
ランドクルーザーFJ(プロトモデル)。全長4575mm、全幅1855mm、全高1960mm、ホイールベース2580mmというランクルとしてはコンパクトなサイズながら、ランクルにふさわしい信頼性と悪路走破性を実現。
内装も車両姿勢が認知しやすい水平基調のインストルメントパネルを採用し、様々な環境で運転する際も瞬時に認知・操舵ができるコックピットレイアウトを実現している。
様々な環境で瞬時に認知&操舵できるコクピットレイアウトも踏襲。
オフロード性能に関しても相当な煮詰めがされており、IMVシリーズで鍛えたプラットフォームを活用することと、70シリーズと同等のホイールアーティキュレーションを用いることで、ランクル入門車に課せられるコストの制約をクリアしながら、優れた悪路走破性を実現している。
現時点で採用がアナウンスされているのは、2.7Lの直4ガソリンエンジンのみ。国内向けモデルは2026年年央に登場、モノグレード展開となる予定だ。
なお、ホイールベースは250シリーズ比で270mm縮小されたことで、最小回転半径5.5mという取り回しの良さとオフロードでの機動性を確保している。
歴代のランクルを彷彿とさせる丸目型ヘッドランプや、多様な用途に応じた荷室空間を提供するモールパネルなどの、カスタマイズの楽しさが拡がるオプションが順次導入される予定。一から自分だけのランクルを仕上げられるアプローチも見どころのひとつだ。
熱狂的なマニアから熱い視線を浴びるのは必至
ランドクルーザーの実用モデル群は、そのタフネスと信頼性によって、世界中の過酷な環境で人々の生活と命を支えてきた。40系、70系が長年にわたり培ってきた「道具」としての揺るぎない評価は、国内で販売台数が少ないにもかかわらず、プリウスやハイエースと並んで盗難ワースト上位にランクインするなど、その卓越した耐久性と人気を裏付ける事実からも読み取れる。
今回のランドクルーザー”FJ”の登場は、まさにこの「ヘビーデューティ」な血筋を継ぐ待望のモデルともいえ、最新の安全装備を備えながらも、本質的なタフネスと機能美を追求したその姿勢は、「120点の信頼」を求める熱狂的なランクルマニアの期待に確実に応えるものとなりそうだ。さらに70系や250シリーズの価格設定から考えると、経済的な価格設定も期待できそう。新型”FJ”は、この伝統的な実用モデルの系譜に連なる最新作として、発売前から大きな注目を集めるのは間違いない。
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