●文:まるも亜希子●写真:澤田和久
上級を意識した内外装仕立てで、新たなユーザー層の獲得を狙う
「新しいコンパクトSUVの市場を切り拓く」
そんな狙いを持って、この秋インドから日本国内への導入が予定されている新型フロンクス。コンパクトカーづくりにおいて独自のノウハウを持つスズキの自信作ということもあって、新しいアプローチが目白押しだ。
まず目を惹くのが、キリリと精悍なフロントマスクとクーペのようなルーフラインが与えられたエクステリア。都会的な雰囲気を持ちつつもSUVらしいタフな要素が感じられるデザインで、多くのクルマが行き交う街中でも埋もれることのない、ハッと目を惹く個性とユニークさを目指したという。
インテリアは、左右からセンターに大胆に切り込むような、高輝度シルバーの金属フレームが特徴的なインパネデザインでクラス上を意識させる重厚さを表現。運転席に座ってみると、シートの座面高は高すぎず車両感覚も掴みやすい。クーペライクなエクステリアではあるが、視界も思いのほか広く、左右まで見やすいことがとても印象的だ。後席は座面左右のクッションに厚みがあってゆったりと座れるタイプ。ブラック×ボルドーの配色は国内仕様専用になるそうで、革とファブリックのコンビシートは、ショルダーまわりをボルドー色とすることで、外から見た際にも個性的なインテリアを演出しているという。
クルマを操ることが楽しくなる、絶妙のチューニングに好印象
パワートレーンは、1.5L直列4気筒の自然吸気エンジンに6速ATの組み合わせ。まず2WD車は、加減速のコントロールがしやすく、素直な操作感が楽しめることに好印象。俊敏な挙動の中にも落ち着きがあるため、カーブでは低重心なクルマに乗っている感覚が強くなる。さらに切れのあるハンドリングに加えて、エンジンの吹け上がりもエモーショナルな抑揚がたっぷり効かせてあって、アクセル操作もかなり楽しい。4WD車も基本的な特性は2WD車と同じだが、こちらは四輪がしっかりと大地を踏み締めている感覚が強まり、走りに骨太さが強まる。具体的には、カーブでの揺れが少なくなったことで上質さがアップしたように思える。
ボディまわりも国内専用設計、圧倒的に静かなキャビンを実現
この絶妙のサスチューンは、国内導入にあたり、タイヤやコイルスプリング、ショックアブソーバー、ステアリングのEPSなどを日本の路面に合わせてチューニングした結果で、おのおののマッチングは上々。走行モードには「SPORT」や「SNOW(4WD車)」が選べるので、シーンに適した操作感や乗り味が楽しめるのも魅力のひとつ。 なお、4WD車に関しては、リヤからの振動入力に対してダイナミックダンパーの設定やダンパー周波数の最適化、防振ゴムの設定などを施しており、FFの2WD車と遜色のない静粛性や乗り心地の良さを持つこともポイントだ。
そして見逃せないのが、走行時のキャビンがとても静かだということ。新型フロンクスは、ボディ骨格の断面内に複数の遮音壁を設定し、ダッシュパネルやリヤドアガラスの板厚を厚くするなど、静粛性アップやロードノイズ低減にも力を入れている。おかげで前後席での会話のやりとりに不快なノイズを意識しないため、ファミリーカーとして使いたいユーザーにもかなり向いている。
ライバル筆頭はホンダ・WR-V。日本国内でも熾烈な争いは必至
そんなフロンクスのライバルは、共通点が多いホンダ・WR-Vだろう。フロンクスは、開発当初から円安や物価高騰の影響を受けており、価格については予定より上がる可能性があると聞くが、WR-Vにはない4WDが設定されていることや、ACCが全車速対応となること、電動パーキングブレーキやシートヒーターが装備されるところがフロンクスの長所になる。
一方でWR-Vは、後席の頭上スペースが広く、ラゲッジも大容量というのが強み。後席用のエアコンアウトレットやセンターアームレストが備わるなど、常に多人数で乗車する人やアウトドアレジャーが好きな人にも合いそうだ。
どちらもインドを主戦場の1つとする世界戦略車だが、フロンクスはすでに2023年から海外で販売されて高い評価を得ている。現時点では詳細な情報は公開されていないが、プロトモデルの走りは予想以上の仕上がり。この秋の正式発表が楽しみだ。
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