
メルセデスベンツのスペシャリティカーを象徴する伝統のオープンモデル「SL」のAMGバージョン「AMG SLクラス」に、初めてプラグインハイブリッドシステムを搭載した「メルセデス AMG SL 63 S E パフォーマンス」が加わった。メルセデスベンツSL300の誕生から70年を経て、電動化という新たな武器を与えられたニューカマーの魅力とは?
●文:月刊自家用車編集部 ●写真:メルセデス・ベンツ日本 ※写真は海外仕様を含みます
メルセデスの伝統モデル「SL」が新機軸を投入してデビュー
流麗なスタイリングと開放感あふれるオープントップボディをもつメルセデスベンツのSLクラスは、その誕生の経緯を遡ると、1952年にサーキットデビューを果たしたレーシングカー・300 SL(W194型)にまで至る。
車名のSLは英語で「S=Super」「L=Light」、つまり超軽量を意味し、レーシングプロトタイプの300SLが国際レースのカレラパナメリカーナメヒコで勝利。後にはルマン24時間レースで1-2フィニッシュするなど、世界中のレースで輝かしい戦績を収めたレジェンドネームだ。
300SLは、その後ロードモデル(W198型)を派生し、スポーティーでありながら豪華な装備を併せ持つエレガントなモデルへと進化。とくにオープンカーが好まれるアメリカマーケットでの成功を受け、70年以上という、世界のあまたあるクルマの中でも屈指の長寿シリーズになった。
そして今回、メルセデスAMGブランドから「メルセデス AMG SL 63 S E パフォーマンス(以下、SL 63 S Eと呼称)」がデビュー。時代の趨勢によりもはや「Super Light」とは言えないものの、シリーズのフィロソフィを受け継ぐエレガントなロングノーズ/ショートデッキのスタイルを堅持しつつ、新たに採用した電動システム=Eパフォーマンスによって元祖モデルに恥じない動力性能を手に入れてリリースされる。
メルセデスベンツ300SL(W194型)をロードバージョンとしたW198型は、ロードスターとガルウイングドアを備えるクーペが製造され、未だ根強い人気を誇る。新型のメルセデス AMG SL 63 S E パフォーマンスも、そのデザインエッセンスを見事に継承している。
元祖SLがカレラパナメリカーナメヒコで勝利を掴んで以来、メルセデスベンツは縦桟のパナメリカーナグリルを伝統意匠にしており、メルセデス AMG SL 63 S E パフォーマンスにも採用した。サイドとリアには「E PERFORMANCE」のエンブレムが備わる。
F1からフィードバックした駆動システムを搭載
車名についたEパフォーマンスが主張するように、SL 63 S Eはプラグインハイブリッドをパワートレーンに採用するPHEVだ。
搭載する容量6.1kWhのAMGハイパフォーマンスバッテリー(HPB)は、560個のセルを個別に冷却可能とし、サーキットユースなどでの頻繁な充放電をもこなす。このテクノロジーはメルセデスAMGペトロナスF1チームのF1ハイブリッドレーシングマシンがレースを通じて実証してきたものであり、公道でもその威力を遺憾なく発揮する。
ドライブモード「AMG ダイナミックセレクト」には、Electric/Battery Hold/Comfort/Smoothness/Sport/Sport+/Race/Individualの 8 つのモードが設定され、Electricモードをチョイスした場合、EV走行可能距離は15kmに達するという。
動力に用いられて失った電力は、4段階の強さから選べる強力な回生ブレーキで補填。Smoothnessモード以外のすべてのドライブモードで、それぞれ異なる設定のエネルギー回収を行う。また、回生ブレーキの強さや交通状況によってはフットブレーキをまったく使わずに制動することも可能で、ブレーキパッドの摩耗を抑制する副次効果も発揮する。
PHEVシステムを採用することでEV走行も可能。通常の内燃機モデルではオープントップ時にエンジンサウンドが室内に流れ込むが、Electricモードを選択していれば高級車にふさわしい静かなドライブを堪能できるはずだ。
816ps/1420Nmを生み出すPHEVパワートレーン。0-100km/h加速は2.9秒
プラグインハイブリッドシステムに組み合わされるのは、4リッターV型8気筒ツインターボガソリンエンジン。
エンジン単体でも最高出力612ps/最大トルク850Nmのハイパワーを出力するうえ、さらにリアアクスルに備わる最高出力204ps/最大トルク320Nmの電動モーターが加わると、システム最高出力816ps/最大トルク1420Nmのスーパーカーへと変貌する。
リアアクスルに装備された電動モーターは電動シフト式2速トランスミッションを介して動力を伝達。P3ハイブリッド(変速機内あるいは変速機よりも下流に電気モーターを置く)レイアウトをとり、AMGハイパフォーマンスバッテリーはリアアクスル上方に搭載した。
主となるトランスミッションは9速のAMGスピードシフト MCT。トルクコンバーターに代えて湿式多板クラッチを搭載し、ダイレクト感のある素早いシフトチェンジと高い伝達効率を実現するもので、シフトダウン時には自動ブリッピング機能を発揮し、素早い発進加速を促すレーススタート機能も有する。
結果、最高速度は317km/hを記録し、0-100km/h加速は2.9秒をスペックシートに刻むスーパースポーツカーへと仕上がった。
AMGアクティブライドコントロールサスペンションやアクティブリアアクスルステアリングを搭載。状況に応じてリアアクスルに備わった電動モーターは、フロントアクスルにも動力を伝える全輪駆動モデルであり、前後ホイールは20インチが標準装備となる。
オープントップ時に“魅せる”インテリア
伝統的にラグジュアリーかつコンフォータブルな装備が人気を博してきたSLクラスの一員らしく、インテリアの設えにも妥協はない。
2+2シートレイアウトのフロントシートにはAMG専用のナッパレザーを用いたAMGスポーツシートが標準装備されるが、標準の4色以外にダイヤモンドステッチ入りのマニュファクチュア・ナッパレザーを選択することもできる。
また、AMGパフォーマンスパッケージまたはナッパレザー/MICROCUTを選択すると、ヘッドレスト一体型のAMGパフォーマンスシートが装着される。大きく張り出したサイドボルスターは、スポーツ走行はもちろんストリートでも運転姿勢を正確に保ってロングドライブを快適に支える。
+2のリアシート後方にはドラフトストップを装備し、室内への乱気流の侵入を抑制して快適な走りを後押しするなど、オープンカーのネガティブさは徹底的に対策されているようだ。
12.3インチのデジタルコックピットディスプレイと、11.9インチの縦型メディアディスプレイの2画面を標準装備。それぞれAMG およびハイブリッド専用のコンテンツを表示する。
標準装備の11スピーカー650Wのオーディオシステムを用いた「Burmester サラウンドサウンドシステム」はDolby Atmosに対応しており、没入感溢れるサウンド体験も味わえる。
ナッパレザーを用いたAMG専用スポーツシートを標準装備。オプションでAMGパフォーマンスパッケージまたはナッパレザー/MICROCUTを選ぶと、サイドサポートが張り出してヘッドレスト一体型のハイバックシートが備わる。
フルデジタルメーターは12.3インチ、センターコンソールの縦型メディアディスプレイは11.9インチの大型サイズを採用。室内にはレーシーなムードを演出するカーボンが多用され、人目に触れるオープントップ時にも存在感をアピールする。
気になるお値段は3350万円から
その他にもパフォーマンスに特化した「AMG 4マチック+」、セミアクティブドライブを実現する「AMGアクティブライドコントロール」、速度感応式の「アクティブリアアクスルステアリング」、強力なストッピングパワーを生む大径の「AMGセラミックコンポジットブレーキシステム」他を標準装備するなど、メルセデスベンツが誇るテクノロジーを満載。
このパフォーマンスと装備を見れば予想がつく通り、車両価格は現行のメルセデス AMG SLクラスでもっとも高価な3350万円をプライスタグに掲げる。
この価格に見合うカーライフをお望みなら、ぜひとも全国のメルセデス・ベンツ正規販売店の門戸を叩こう。
■車両価格
メルセデス AMG SL 63 S E パフォーマンス:3350万円
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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