
トヨタのオフィシャルチューナー・TOM’S(トムス)が手かけるレストアサービスは、最新の修正技術を注ぎ込み、ボディからエンジンまで、オーナーのオーダーに合わせた徹底的に仕上げるもの。快適性&走行性能を追求することで、トヨタの名車を現代に蘇えらせてくれるのだ。
●文:橘祐一(月刊自家用車編集部)
トムスブースに展示されていた、真っ白のボディ。そこにはプロのこだわりの技が注がれる
「トムス」といえば、1974年の設立以来、トヨタのオフィシャルチューナーとしてレーシングカーの製作やチューニングパーツの開発を行ってきたメーカーである。そのトムスの『東京オートサロン2025』の展示ブースには、ひときわ目立つホワイトにペイントされた車のボディが展示されていた。
トムスが手かける旧車レストアサービス。ボディからエンジンまでフルレストア&ワンオフカスタムが楽しめる。
じつはこれ、2024年に創立50周年を迎えた同社がスタートさせた「TOM’Sレストアサービス」によりボディのレストア作業を終えた、カローラ レビン(AE86)のボディだ。
AE86といえば、コンパクトな後輪駆動クーペとして支持され、多くのプロドライバーが腕を磨いたことでも知られるクルマ。アニメでも主人公の愛車として描かれ、今では絶大な人気旧車として幅広く認知されているのはご存知のとおり。
しかし、当時は安価でFRらしいドライビングフィールが楽しめたこともあり、多くの車両がサーキットやワインディングなどで酷使されたことでも有名だ。レビン/トレノ合わせて総生産台数10万台といわれているが、すでに発売から42年、生産終了からも38年が経過している現在では、良い状態で現存する台数も少なく、程度の良いノーマル車両を見つけるのは、事実上不可能といってもいい。
そこでトムスは、これまでレーシングカーの製作などで培った技術を投入することで、ホワイトボディ(エンジン/シート/補器類すべてを取り除いた塗装前のボディの状態)からのリフレッシュを行い、歴史に残る名車を復活させるべくレストアサービスを開始した。
具体的な流れとしては、車体は完全に分解。ボディはアンダーコートを剥がしてパネルを剥き出しにした状態で、フレーム修正機により正確な数値を計測して歪みを修正していく。
パネルのサビやスポット溶接の剥がれなどはひとつひとつ補修を行って、工場出荷時に限りなく近い状態まで近づけるという。レストアの流れを知っている人ほど、驚いてしまう内容が注がれるのだ。
さらにその先もトムスらしいこだわりでいっぱい。当時を知るエンジニアやメカニックが、スポット溶接の数を増すなどの補強を行い、ボディの剛性を高める施工がプラスされる。オリジナルの魅力を尊重しながらも、現代の技術を適時投入することで、快適性やパフォーマンスを向上させているというのだ。
完全に塗装を剥がし、フレーム修正機で計測してミリ単位で修正。サビやパネルの歪みなどを補修して工場出荷状態にまで復活させた。
サイドシルやパネルの接合部などに当時のメカニックやエンジニアの監修によりスポット増しなどの処理が行われ、剛性がアップしている。
サビが出やすいリヤフェンダーやテールランプまわりも綺麗に補修されている。現代のクルマよりパネルの作りが複雑だ。
フレームとフロントのインナーフェンダー部分も錆びやすい箇所。まだシーリング前だがパネルを交換して再溶接してある。
Aピラーの根本もサビが出やすいポイント。失われたパネルはワンオフで制作して補修が行われている。
かつての名機と呼ばれたトヨタエンジンも完全レストア&チューニング。単体で購入することも可能
ちなみにトムスのブースには、ハチロクのホワイトボディの奥に3機のエンジンが並べられていた。いずれも1990年代に多くのスポーツモデルに搭載されたエンジンで、4A-GELU20バルブをベースにした「TRA-4AL165」、3S-GEをベースにした「TRA-3S220」、2JZ-GTEをベースとした「TRA-2JT380」だ。
これらにも熟練のレースエンジンメカニックがオーバーホールを実施。段付修正や重量バランスの最適化、さらには専用パーツを組み合わせることで、当時のエンジンを最新の技術で蘇らせている。嬉しいことにこれらのエンジンは、エンジン単体での販売も行われているそうだ。
いずれのエンジンでも、ノーマル部品を基準としたオーバーホールを加えた「A Spec」、A Specをベースにさらなるパフォーマンスを得るために選りすぐりのパーツを使用し組み上げた「B Spec」、ユーザーの用途に合わせて仕様を決めて組み上げたオーダーメイドの「C Spec」の3つのチューニングスペックが用意される。トヨタの古いクルマのレストアに困っているオーナーにとっては、トムスのレストアサービスは検討する価値があるメニューだろう。
レースに携わるメカニックによってオーバーホール/バランスの最適化などを行い、専用パーツを組み込んだトムスエンジン。
AE101や111に搭載された20バルブの4A-GELUをベースにしたTRA-4AL165は275万円から。16バルブの4A-GEは258.5万円から。
セリカやMR-2(SW20)などに搭載された3S-GEをベースにしたTRA-3S220は220psを発生。価格は302.5万円から。
スープラ(JZA80)などの搭載された2JZ-GTEをベースにしたTRA-2JT380は654.5万円から。いずれもチューニングメニューをオーダー可能。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(メンテナンス | トヨタ)
トヨタ自動車が直接運営することで体制強化、直系専門店ならでは濃密なサービスをオーナーに提供 70数年にわたり世界中のユーザーから愛され鍛えられてきたトヨタ ランドクルーザー。2023年よりランドクルー[…]
安全・安心装備や機能の後付けを新たに可能とするサービス これまでもトヨタは、KINTO FACTORYを通じて新車購入時に未装着だった装備の後付けなどを提供してきたが、今回のアップグレードサービスでは[…]
人気記事ランキング(全体)
見た目では用途がわかりにくい、意外性のあるカー用品 世の中には多種多様のカー用品があり、奇抜なものから思わずおっと唸ってしまうようなアイテムがたくさんある。カー用品のお店やECサイトでカーグッズを探っ[…]
コンパクトに収まるベース仕様 RS1+のベースとなるのは、スズキ・エブリイワゴン。標準設定としてベッドマット、カロッツェリアの楽ナビ、そして諸費用を含む構成になっている。軽キャンピングカーを求める人に[…]
大人が手にする秘密基地 N-VAN コンポの最大の魅力は、まるで子供の頃に夢見た秘密基地を現実にしたような空間にある。助手席側の大開口部とフラットな床が生み出す自由度は抜群で、サイドオーニングを展開す[…]
全方位型のツインタイプの小型ファン 先日、ヘッドレストに装着するタイプの扇風機を愛車に導入したのだが、ファンとしてはオーソドックスな丸型タイプの扇風機も使う機会があったので、便利そうな2種を紹介してい[…]
日本車が手本とした、美を優先する伊デザイン。その代表が117クーペ 日本において、商品のデザインが売れ行きを大きく左右することに最初に気づいたのは、松下電器器具製作所(後の松下電器産業、現パナソニック[…]
最新の投稿記事(全体)
デリカのDNA&魅力が軽モデルに凝縮 新型デリカミニは、デリカの名にふさわしいタフなデザインと、軽自動車の枠を超えた快適な走行性能、先進の安全技術を兼ね備えているスーパーハイト軽ワゴン。 コンセプトは[…]
構造用接着剤を延長し剛性を強化、より過酷な走行環境に対応 今回実施される改良では、スーパー耐久シリーズ参戦で得た学びを活かし、さらなる過酷な環境での走行に耐えるため、基本性能の向上に重点を置いている。[…]
走りへの期待を高める特別な内外装を採用 ヴェゼル e:HEV RSは、「URBAN SPORT VEZEL(アーバン スポーツ ヴェゼル)」をグランドコンセプトに、デザインと走りのスポーティーさを追求[…]
車内を快適に! カーエアコンの正しい使い方とは? 車内を快適な温度に保つために必要な、カーエアコンの正しい使い方を4つのポイントから見ていこう。 まずひとつ目のポイントは、カーエアコンの起動タイミング[…]
初期型 NA6CE(1989年) 未知の需要に果敢に挑戦して大ヒットを記録 初代ロードスターこと、「ユーノス・ロードスター(NA系)」が発売されたのは1989年です。年号が昭和から平成に切り替わった年[…]