創設から123年、英国最古のカーブランドと呼ばれるACカーズは、いにしえの名車「コブラ」を現代に復刻し、エンスージアストに向けてリリースしているが、新たに2リッターエンジンを搭載したバリエーションを発表した。大排気量/ハイパワーが代名詞だったコブラを大幅にダウンサイジングしたニューカマーは、はたして“毒蛇”と呼べるのか?
●文:月刊自家用車編集部 ●AC Cars
ダウンサイジングした「コブラ」
前後にマッチョなオーバーフェンダーを携え、丸みを帯びたスタイリングが特徴的な「ACコブラ」は、英国最古のカーブランドと呼ばれるACカーズにより生産され、1960年代から70年代にかけてサーキットで活躍。紆余曲折を経た現在では、そのクラシカルなスタイルに最新技術を投入して「ACコブラGTシリーズ」として復活を遂げている。
そんなACコブラGTシリーズに、新たなパワートレーンとして2リッターエンジンの追加が発表された。ACカーズでは1950年代から60年代に生産していた「ACエース」も復活させており、こちらには2.3リッター直4ターボモデル(最高出力320bhp)とEVモデル(最高出力301bhp)をラインナップしているものの、コブラに小排気量エンジンを搭載するのはAC Carsの歴史上初となる。
現段階では新しい2リッターエンジンの詳細は未発表で、2025年春に詳細が明かされる予定だが、最高出力は390bhp(約395ps)になると予想されている。
ACカーズでは、この2リッターモデルにロードスターとクーペのボディバリエーションを用意し、トランスミッションには従来の6速MTに加え、新たにデュアルクラッチギアボックスをオプション設定。また、シャーシにカーボンファイバー素材を多用し、エンジンユニット自体の重量も軽減できるため、“パフォーマンス重視”のモデルだと喧伝している。
最強コブラは5リッターV8のスーパーチャージャーを搭載
ACコブラGTシリーズ初の2リッターエンジンモデルのキモは、大幅な軽量化による軽快なハンドリングとコーナリング性能の向上だろう。しかし、「コブラ」の名前を戴くのであれば、やはり大排気量/ハイパワーでなければ! というクルマ好きは多いはずだ。
そういった向きは、既存モデルの5リッターV8モデルを選ぶべきで、しかもACコブラGTシリーズの5リッターV8は、スーパーチャージャー付きとNA(ノーマルアスピレーション)から選択できる。前者は最高出力663HP/最大トルク780Nm、後者は最高出力460HP/最大トルク570Nmを発揮し、0-100km/h加速は前者が3.4秒、後者は4.5秒をスペックシートに刻む。
暴力的な加速のコブラらしい直線番長的ドライブは5リッターV8でしか味わえないが、そのパフォーマンスを発揮させられるのはある程度腕に覚えがあるカスタマーに限定されており、コブラの名前とスタイリングに惚れた初心者は、2リッターモデルを選ぶのが無難かも。
スタイリングに惚れたなら、電動の「ACエースEV」という選択肢も
さらにACカーズは、コブラとアピアランスの共通性を備える「ACエース」もリリースしている。史実的にはACコブラに先んじてデビューし、ACエースをベースにパフォーマンスアップしたのがACコブラだったが、現在のAC Carsでは「AC Carsクラシックス」としてACエースをリリースしている。
こちらは2.3リッター直4ターボモデルと、電動モーターをパワートレーンに採用したEVモデルが用意され、1950年代の古き佳き時代のスタイリングを気軽に楽しむのにうってつけのモデル。
ACコブラGTシリーズほどのハイパフォーマンスは不要で、時代の流れに沿った電動モデルをクラシカルなスタイルで満喫するなら、ACエースEVを選択肢に加えたいところ。
選択肢が増えるのは良いことだが…
ダウンサイジングした2リッターモデルのACコブラにはライトウェイトスポーツカーの魅力があり、大排気量車に重い税金をかけるマーケットでは恩恵を受けるカスタマーも少なくない。単純に選択肢が増えることも歓迎すべきだろう。
しかし問題は価格だ。付加価値税込みで23万5000ポンド(2025年2月現在で邦貨約4500万円以上)からというのは、強気にもほどがある設定だ。とくにこの円安のご時世、日本のカスタマーにはハードルが高いお値段であるのは間違いない。
もちろん、唯一無二のスタイリングに軽快なライトウェイトカーのハンドリングの組み合わせは、きっと想像以上にファンなドライビングを提供してくれるだろうけれど、4000万円以上の資金を注ぎ込む価値はあるのか? というのは正直疑問である。
それだけにこの2リッターエンジンを積んだACコブラGTは、真のエンスージアスト向けといえる究極のファンカーなのかもしれない。
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