氷上「グリップ力」とドライ「安定性」を極めた最新スタッドレス・ブリザックWZ-1先行試乗【長持ち性能の向上も嬉しいポイント】│月刊自家用車WEB - 厳選クルマ情報

氷上「グリップ力」とドライ「安定性」を極めた最新スタッドレス・ブリザックWZ-1先行試乗【長持ち性能の向上も嬉しいポイント】

氷上「グリップ力」とドライ「安定性」を極めた最新スタッドレス・ブリザックWZ-1先行試乗【長持ち性能の向上も嬉しいポイント】

ブリヂストンのタイヤ開発思想「エンライトン」を初めて採用した新スタッドレスタイヤ、「ブリザックWZ-1」が登場した。発売に先駆け開催された先行試乗会では、その圧倒的な氷上性能と、ドライ路での優れた安定性を体験する機会に恵まれた。従来モデルを凌駕するコントロール性と、ドライバーに安心感をもたらす新タイヤの実力ぶりをお届けしよう。

●文:川島茂夫 ●写真:ブリヂストン

次世代開発コンセプト「ENLITEN」を初採用

ブリヂストンの新しいスタッドレスタイヤ「ブリザックWZ-1(以下WZ-1)」は、同社が掲げるタイヤ開発コンセプト「ENLITEN(エンライトン)」を初めて採用したモデルになる。

この「ENLITEN」とは、特定の技術要素を指すのではなく、技術の進化によってタイヤの基本的な性能を高め、用途や車両の特性(重量、重心高、サイズなど)に合わせて最適な性能バランスを実現するという開発思想を意味する。特に注目して欲しいのが、この思想にはタイヤの「持続性」や「環境への配慮」が含まれていること。

個人的には、性能バランスを目的用途に合わせて最適化する「エンライトン」は、氷上性能の向上が最重要課題であるスタッドレスタイヤとの相性は抜群だと考えている。

ブリヂストンの商品計基盤技術「ENLITEN」を搭載した乗用車用スタッドレスタイヤ「ブリザックWZ-1」 

発売サイズは145/80R13から275/30R20まで、全119種類を設定。9月1日より順次発売される。

新たな視点を取り入れた新技術を導入

さっそくWZ-1を特徴を紐解いていくと、技術的な進化の核は、「トレッドパターン」「発泡ゴム」「形状と構造」の3点にある。

新トレッドパターンの採用で、水の除去性能がアップ

まずトレッドパターンは、従来の除水性やエッジ効果を高める技術に加え、新たにL字タンクサイプを採用している。

この新サイプは、タイヤが路面に接地する際に、トレッド面の薄い水膜を吸い上げて貯蔵し、路面から離れると遠心力で水を排出する役割を持つ。具体的には、タイヤの接地部分への水の回り込みを減らすことで、除水性能を向上させている。

2つのポリマーの組み合わせで、グリップ性能と長持ち性能を強化

次の発泡ゴムは、ブリヂストン・スタッドレスタイヤの代名詞とも言える技術だ。従来モデルのブリザックVRX3と発泡のサイズや形状は踏襲しているが、WZ-1ではトレッドゴムに親水性ポリマーを加えているのが大きな特徴だ。

この親水性ポリマーは、WZ-1の技術的なハイライトと言っても過言ではないもので、トレッド面と水分子の間に働く分子間力(引力)を利用してグリップ力を高める効果を持つ。さらに驚いてしまうのが、対象となる水膜の厚さはナノメートル(100万分の1ミリ)オーダーと極めて薄いこと。この極薄の水膜(水分子)が、ごく薄い接着剤のように作用するイメージと思ってもらえればいい。

さらに、新発泡ゴムには、ロングステイプルポリマーも配合されており、これは時間の経過による性能低下を抑制する機能となる。ブリヂストンのシミュレーションでは、約4年後の氷上制動性能でもVRX3を上回る結果が出ているとのこと。

ドライ路での操縦安定性や静粛性も向上

そして第3の要点は構造と形状だ。WZ-1は、同社の最新プレミアムコンフォートタイヤとなる「レグノGR-X Ⅲ」と同様に、トレッド部からビード部までの各部にかかる張りを均等化することで、走行時の接地圧を均等にしている。これにより氷雪路での性能向上だけでなく、ドライ路での操縦安定性や静粛性の向上にも寄与している。

長年にわたる知見の積み重ねと、新たな視点を取り入れた技術が導入されたWZ-1の設計思想を見ると、スタッドレスタイヤの新しい時代が始まったかのように感じられる。

氷上でのコントロール性能が、さらに向上

実際にWZ-1を試してみると、その性能の高さはすぐに分かる。氷上で、非常に大きな舵角で旋回すると、さすがに「どアンダーステア」の状態になるのだが、舵角を一定に保ち、加減速のコントロールだけで定常円旋回を試みると、驚くほど簡単にラインに乗せられる。現行モデルのVRX3で同じことを試すと、ラインが膨らんだり、深く入りすぎたりと、コントロールに若干のギャップが出てしまうのだが、WZ-1で同じような感覚で走らせると、走行ラインは円弧のようにスムーズに描けてしまう。例えるならば、VRX3は歪な多角形だとすれば、WZ-1は美しい円を描く。

氷上での定常円旋回テストの様子。氷上で大きな舵角で旋回するとアンダーステア傾向を示すものの、舵角を一定に保ち、加減速でコントロールすると驚くほど容易にラインが維持できる。グリップ限界の向上に加え、滑った状態からの回復の早さとコントロール性の高さが大きく貢献している実感した。

走行時→停車までの全制動では、停止までABSが効率的に作動し、加速時にはホイールスピンが抑えやすい特性を強く感じる。これまででもかなりの優等生だったVRX3と比較しても、スリップ時のグリップ低下の少なさと回復の早さは、WZ-1の方が明らかに上。

新しい発泡ゴムやトレッドパターンにより氷上での接地性が向上。氷上走行時のクルマのコントロール性が高まっているのは明らか。

ブリヂストンの社内データでは、氷上制動距離で11%減、旋回ラップタイムで4%減という結果が出ているが、グリップ限界の向上以上に、滑った状態でのコントロール性の良さが実感できる。リアルワールドを走る上で、ドライバーに大きな安心感を与えてくれるのは間違いなさそうだ。

オンロード性能でも、走行質感はスタンダードラジアル級

そしてWZ-1で見逃せないのが、オンロード性能の向上ぶりだ。ノーマルタイヤに比べると、高速直進時の安定感は若干劣るものの、操縦感覚に大きな差は感じない。履き替えてもすぐに慣れるレベルの差だ。

全体的に静粛性や乗り心地は穏やか傾向で、走行の質感はスタンダードラジアルに匹敵する。氷上でのコントロール性や乗り心地、静粛性など、全体を通して感じるのは、ドライバーや同乗者の体感にまで踏み込んで、安心感や快適性を徹底的に追求している点だ。

トレッド部からビード部までのタイヤ全体の張りを均等化されたことで接地圧が均一になった恩恵は明らか。氷雪路だけでなくドライ路でも夏タイヤに近い感覚で運転できる。

さらにロングステイプルポリマーを採用したことで、タイヤの長持ち性能が高まったことも、販売現場では相当な訴求力を発揮できそう。このタイヤは、冬のドライブをより安全で快適なものに変えてくれるのは間違いなさそうだ。

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