
「トヨタ・セリカ」といえば、国産初のスペシャリティカーであり、トヨタを代表するスポーツカーですが、その「セリカ」から派生した「セリカXX(ダブルエックス)」も、今に続くトヨタのスポーツ系のフラッグシップの系譜の元祖と言える重要な存在です。人によっては、トヨタのスポーツカーの象徴としての始まりの車種「2000GT」の後継車だという意見もあるほどなので、トヨタの歴史を語るうえで重要な一台と言えるでしょう。ここでは「セリカXX」について、2代目を中心にすこし掘り下げていきたいと思います。
●文::月刊自家用車編集部(往機人)
初代は“高級な”スペシャリティカー路線、ソアラの前身となったモデルだった
「セリカ」は、初代(1970年〜)、2代目(1977年〜)とスペシャリティカーとしての資質を高めてきたが、ちょうどこの時代の日本は高度成長が著しく、その経済力に見合ったより“高級な”スペシャリティカーが求められていました。
そこで「セリカ」をベースとして、その上位車種の展開を広げるという方針が打ち立てられます。
単純に言ってしまうと、セリカのシャーシを使って、上位モデルの象徴の直列6気筒エンジンを搭載するというものです。
そうして作られたのが、1978年に世に送り出された初代「セリカXX」です。
この初代「セリカXX」は、スポーツ色よりも高級志向を重視したモデルで、次代ではその高級スペシャリティカー路線は新生車種の「ソアラ」に引き継がれます。
そんなソアラとの差別化という理由もあって、2代目「セリカXX」は、初代よりもスポーツ色を強めたモデルとして開発されました。
初代セリカXXは、1978年にセリカの上級車種として登場。北米市場を意識したこともあって、2代目セリカのベースに直列6気筒エンジン(2.6L SOHCなど)や豪華なキャビンを採用することで、明確に車格の向上が図られた。ラグジュアリースポーツというキャラは、次代ではソアラに継承されることになった。
ダブルの「X」が意味するもの。「セリカXX」の由来とは?
2代目「セリカXX」が発売されたのは1981年。
ベースとなった「セリカ(3代目)」の後輪は従来どおりのリジットアクスル方式でしたが、「セリカXX」は「ソアラ」と同じセミトレーリングアーム式を採用して4輪独立懸架となっています。
ちなみに「XX(ダブルエックス)」というサブネームは、当時のSFやアニメ、ヒーローものなどで好んで使われた“未知のもの”という意味合いの「X」を2つ連ねて強調したもので、“最上位の”という意味が込められたようです。
これは、デジタルを前面に打ち出した近未来感がテーマのクルマづくりをアピールするもので、当時10代だった筆者は憧れの目で見ていたのを思い出します。
ちなみに「X」の文字は、当時の主要市場だった北米では、映画の年齢制限で“成人向け”の印象が強く、「XX」はポルノ映画にも使われてイメージが良くないということから、北米では“超越する”という意味の「SUPRA」に名を変えて販売されていました。
1981年に発売された2代目セリカXX(A60型)は、初代のラグジュアリー志向から一転し、スポーツ性を強調したモデルに変貌。
リヤビューは、シャープな直線的ラインを基調としたウエッジの効いたサイドビューと、ヒップアップしたリアエンドが特徴の3ドアハッチバッククーペスタイル。
スポーツカーを意識させる、ウェッジシェイプ形状が大人気
2代目「セリカXX」の外観のハイライトといえるのは、なんと言ってもリトラクタブルヘッドライトの採用でした。スポーツカーらしいウエッジシェイプ形状を強調するには必要な要素であり、当時再流行していたスーパーカーを思わせる魅惑のアイテムとして映りました。
そしてトヨタとしては「2000GT」以来となる久々の採用とあって、クルマ好きの心を射止めるインパクトは充分でした。
外観のデザインは、トヨタがカリフォルニアに創設したデザインスタジオ「CALTY」によるもので、この当時最先端とされていた直線基調のカチッとしたテイストでまとめられています。
スッと引かれた張りのある直線が整然と組み合わされるグラフィックは、今見ても新鮮さが感じられる優れたデザインだと思います。
しかもただの見てくれだけではなく、Cd値(空力抵抗を表す数値)は最高クラスの0.35を達成していました。
当時のクルマ好きの若者には、国産のスーパーカーとして捉えていた人も少なくなかったでしょう。
ちなみに、前期モデルはフェンダーミラー仕様でしたが、Aピラーの付け根の形状を見ると、開発段階でこの時期に認可待ちだったドアミラーを前提としたデザイン処理がなされていることに気付きます。
低めのダッシュボードは圧迫感も少なめ。インパネは80年代らしい色使いで、未来志向を表すデザインを採用。上級グレードにはエレクトロニックディスプレイメーター(デジタルメーター)なども採用されていた。
ワインレッドなどの80年代らしさを醸し出す色使いが用いられるなど、スポーツカーというよりは「スペシャルティカー」の雰囲気が強め。
ツインターボを先取り? 漫画が描いた「セリカXX」の未来
このクルマを語る上で外せないのが、1980年代に大ヒットした、クルマのチューニングをテーマにした少年漫画「よろしくメカドック」です。
リアルタイムで見ていた人の中には、あのマンガでクルマのチューニングという世界を知ったという人も少なくないでしょう。
それまでのクルマを扱う作品ではファンタジーの割合が多く、現実とは少しは慣れた物がほとんどでしたが、この作品は「実際に実現できるのでは?」と思わせられるしっかりとした技術背景がウリでした。
その作中の序盤に主役車として「セリカXX」が登場します。
名を売るために、アメリカのストリートレース「キャノンボール」への出場資格を得るため、日本での予選を戦うためにと作られた車両です。
当時の市販車ではまだ採用されていなかった“ツインターボ”を先取りして導入、エンジン自体も排気量をアップさせて、大径バルブへの交換や追加の燃料供給装置を装着したり、映画「MADMAX」で有名になった「Nos(亜酸化窒素噴射装置)」を導入したりと、かなり本格的な設定が盛り込まれていました。
その後、“メカドック仕様”の「XX」を実際に製作してしまったチューニングショップもあったほどです。
この2代目「セリカXX」は、旧車界隈ではずっと根強い支持を受け続けていた車種ですが、その魅力のわりに不思議と需要のメインストリームに入ってくることが少なく、比較的安価で入手できていました。
しかし、昨今のプレミア価格化の波に巻き込まれ、15年前から見ると相場価格が倍以上にハネ上がっています。タマ数はあまり多い車種ではないので、入手したいと考えているユーザーにとっては、買い時を逃してしまったかも、しれませんね。
エンジンは、2リッター直6SOHC(左:1G-EU型・125馬力)と2.8リッター直6DOHC(右:5M-GEU型・170馬力)がラインナップされるなど、スポーティな走りを追求。特に2.8L DOHCエンジンは、同時期にデビューした初代ソアラにも搭載された名機としても名高い存在だ。
3代目となるスープラ(A70型)は1986年にデビュー。このモデルから国内でも「スープラ」を名乗ることになった。トップグレードの3リッターターボ車(230馬力)に加え、2リッター直6のツインターボ車(185馬力)も設定されている。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(トヨタ)
広がりを感じる室内空間 ハイエース・スーパーロングワイドをベースにしたRSプレミアムは、車内に一歩足を踏み入れただけでその広さを実感できる。飛行機の機内をイメージしたデザインは、単なる移動手段ではなく[…]
TOMOYUKI HANAI 090_1833_4510 1980-1999年生産の国産車オーナー必見! 10月3日(金)から愛知・トヨタ博物館で始まる「What’s JDM?-世界が熱中する’80-[…]
老舗ビルダーが本気を注いだ、世界限定5台の特別なキャンピングカー 新潟県燕市を拠点とする老舗キャンピングカービルダー「Katomotor」は、1956年の創業以来、自動車やバイクを扱い、1990年代か[…]
最新技術が投入されたFC路線バスの利用拡大を目指す 今回の共同開発では、いすゞと日野自動車が2024年度に市場投入したBEV(バッテリーEV)フルフラット路線バスのプラットフォームをベースに、トヨタの[…]
二人旅を前提にしたレイアウト 銀河の最大の特徴は、夫婦二人旅にフォーカスしたレイアウトにある。常設二段ベッドとダイネット、独立したキッチン、トイレルームを通路でつなぎ、使いやすさを重視した構成だ。ベッ[…]
最新の関連記事(ニュース)
BYDの最新技術やブランドビジョン、日本市場への取り組みを発表 今回の出展では、設立3周年を迎えたBYDオートジャパンの乗用車ブースと、日本での運行開始から10年を迎えたBYDジャパンの商用車ブースに[…]
冒険心を呼び覚ます、心豊かなモビリティライフを提案 今回の三菱ブースのテーマは「FOREVER ADVENTURE」。遠い未来においても変わることのない“冒険”の素晴らしさを、三菱自動車の将来技術を盛[…]
「陸・海・空」の幅広いモビリティとその関連技術、コンセプトモデルを展示 今回のホンダブースでは、プレリュードやN-ONE e:などの最新モデルがディスプレイされるほか、「陸・海・空」の幅広いモビリティ[…]
TOMOYUKI HANAI 090_1833_4510 1980-1999年生産の国産車オーナー必見! 10月3日(金)から愛知・トヨタ博物館で始まる「What’s JDM?-世界が熱中する’80-[…]
ファンに愛された「コペン」。スペシャルイベントは2026年4月以降、全国で開催 ダイハツ・コペンは、気軽に楽しめる本格的なオープンスポーツカー。2002年に発売されて以来、軽自動車としては初となる電動[…]
人気記事ランキング(全体)
二人旅を前提にしたレイアウト 銀河の最大の特徴は、夫婦二人旅にフォーカスしたレイアウトにある。常設二段ベッドとダイネット、独立したキッチン、トイレルームを通路でつなぎ、使いやすさを重視した構成だ。ベッ[…]
様々な用途に対応する、INNO ルーフギアケース720 SUV系のクルマのルーフによく積まれている細長いボックスを見たことはないだろうか? 実はコレ、ルーフボックスと呼ばれる人気のカー用品。中でも、カ[…]
軽トラックから生まれた本格派キャンパー バロッコは「軽キャンパーでありながら本格的なモーターホームを作る」というコンセプトから生まれている。ベースはダイハツ・ハイゼットトラックだが、ただ荷台にシェルを[…]
ツインターボの圧倒的なトルクパワーは当時から評判だった。でもなぜV6なのに横置きにしたのか? 三菱「GTO」が発売されたのは1990年です。 当時の国内メーカーは、280馬力の自主規制の枠内でいかにハ[…]
ドアミラーに吊り下げるように設置するサポートミラー 筆者は運転があまり上手くないほうだと自覚している。特に駐車に関しては、今でも一発で綺麗に停められないこともある。毎日のように駐車している自宅の駐車場[…]
最新の投稿記事(全体)
1981年にデビューした2代目セリカXXは、北米では「スープラ」の名前で販売されていた。(写真は北米スープラ) 初代は“高級な”スペシャリティカー路線、ソアラの前身となったモデルだった 「セリカ」は、[…]
広がりを感じる室内空間 ハイエース・スーパーロングワイドをベースにしたRSプレミアムは、車内に一歩足を踏み入れただけでその広さを実感できる。飛行機の機内をイメージしたデザインは、単なる移動手段ではなく[…]
サンバーライトバンデラックス(1964年型) 経済成長に沸く1960年代、軽四輪トラックが街の物流の主役だった 戦後の復興期から高度経済成長のピークとなった1960年代末にかけての日本の経済・産業の構[…]
BYDの最新技術やブランドビジョン、日本市場への取り組みを発表 今回の出展では、設立3周年を迎えたBYDオートジャパンの乗用車ブースと、日本での運行開始から10年を迎えたBYDジャパンの商用車ブースに[…]
フラッグシップSUVに新たな表情をプラス 特別限定車XC90 Bright Editionは、ボルボのフラッグシップSUVの最上位グレードになるプラグインハイブリッド「XC90 Ultra T8 AW[…]
- 1
- 2