メッキのバンパーは、クラシックカーらしい雰囲気を生むパーツのひとつです。ビートルのバンパーも年式によって進化を続けていました。ビートルの進化の歴史はバンパーの進化の歴史なのです。
●文/まとめ:ストリートVWs編集部
自動車の前後に備わるバンパーは、多少ぶつかってもクルマ本体に大きなダメージを与えないというのが本来の目的だ。今の日本ではバンパーさえもぶつけたら大騒ぎだが、世界を見れば「バンパーはぶつけるためにある」という感覚の人も存在する。
空冷ビートルのバンパーも、万が一ぶつかったときのことを考えて設計されている。だから安全基準の強化にあわせて進化していった。そしてエクステリアでも目立つパーツであるため、バンパーのデザインがクルマ全体の印象を大きく変える。ビートルを見たらバンパーを観察してみよう!
スプリット時代のバンパー
1938年 左右分割バンパー
最初のビートルのバンパーは、なんと左右で分割していた。
ビートルのデザインが決定し、試作車が完成したのが1938年だ。そのオリジナルデザインのバンパーがこれである。約50台製作された試作車のなかでも、初期の約25台にのみ装着されていた。一見すると1950~1960年代のバンパーに似ているが、ナンバープレートの裏を見るとフロントバンパーは左右に分割しているのがわかる。これは当時のヨーロッパ車ではよくあるスタイルである。なお、リアバンパーは普通に左右が一本につながっている。
1939~1949年 バナナ・バンパー
バンパーは試作開発中の1939年に早くも形状が変更された。立ち往生した他車を押しやすい、あるいは押されやすいよう考慮された形状のオーバーライダーは、来たる戦時下の混乱を想定したものなのだろう。まさにぶつけるためのバンパーである。
オーバーライダーがバナナのように反っていることから「バナナ・バンパー」と呼ばれている。見ての通りフロントバンパーも左右が一本につながり、そのまま1941年以降の量産車に採用された。
1949~1952年 スプリット時代のリブド・バンパー
1949年にビートルの本格販売にあたり、バンパーのデザインが変更された。バナナ・バンパーは歩行者に危険であり攻撃的な印象があるため、1938年のようなデザインに回帰した。さらにバンパー・ブレードにはリブ状のプレスラインが入り、ボディカラーで挿し色が入るというオシャレぶり。このリブがあることから「リブド・バンパー」と呼ばれている。
低年式時代のバンパー
1952~1967年式 カマボコ断面のヨーロピアン・バンパー
スプリット時代の最終型から1967年式までに採用されたバンパー。ブレードのリブが廃止され、なめらかなカーブを描く。オーバーライダーは洋ナシ型に変更された。
このバンパーはヨーロッパを中心とした地域で装着されていたため「ヨーロピアン・バンパー」と呼ばれる。また、日本では「シングル・バンパー」とも呼ばれているが、その理由は、この下で説明しよう。
1955~1967年式 北米仕様のUSバンパー
1955年から北米仕様車にはブレードの上にパイプ状のバンパー・ボウが追加された。これは主に「USバンパー」と呼ばれる。また、日本ではバンパーが二重であるため「ダブル・バンパー」と呼ばれている。
アメリカとカナダにおけるバンパーの高さと強度の法規に適合するための装備。そのような法規がない日本でも標準装備されていたため、日本で古いビートルに憧れる人は、このバンパーこそが低年式の魅力だと捉える人が多かった。
1967年式 ロクナナ・オンリーのUSリアバンパー
低年式の最後の年となる1967年式では、デッキリッドの形状が変更されたことに合わせてリアバンパーのボウの形状が変更された。バンパーの他にも1967年式だけが採用したディテールが多く、それらを日本では「ロクナナ・オンリー」と呼んでいる。
高年式のプレスバンパー
1968~1974年式 プレスバンパー
ビートルを大きく低年式と高年式に区切る特徴のひとつがバンパーだ。1968年式から四角い断面形状に変更され、また装着位置も高くなった。日本では、中央にプレスラインが入ることから「プレス・バンパー」と呼ばれている。プレスラインには黒いテープが貼られ、高級グレードにはラバーストリップが装着された。
1974~1979年式 北米仕様の衝撃吸収バンパー
アメリカとカナダでは1974年式からバンパーの法規がさらに厳しくなり、北米仕様車は衝撃吸収バンパーを採用した。バンパーブレードが太く頑丈で、ブラケットはガスダンパーになっている。ラバーストリップも標準装備だ。
これは5MPH(時速5マイル、時速8km)で衝突しても灯火類や各リッドとドアが機能することを保証するバンパー。そのため日本の北米仕様マニアの間では「5マイル・バンパー」とも呼ばれている。
1975~1992年式 ウィンカー内蔵バンパー
北米以外の国では、1975年式からウィンカー内蔵型のバンパーに変更された。ウィンカー以外の形状は1974年式までと同じだが、ブラケットが簡素化され取付穴の位置も変わっている。
ドイツでの空冷ビートルの生産が終了したあとも、メキシコ工場があとを継いでこのバンパーを採用していた。
1993~2003年式 メキシコ製の太いバンパー
15年以上姿を変えなかったメキシコ製ビートルは、1993年式で多くのマイナーチェンジを受け、バンパーも変更された。
ブレード中央のプレスラインが太くなり、バンパー全体が上方向に太くなった。これはメキシコでバンパーの高さの基準が引き上げられたためである。なお、ウィンカーレンズの大きさは変わっていない。
全体のイメージを決定づけるバンパー
バンパーが違うだけで、ビートルの顔の印象が大きく変わるんだなぁ……そう感じた人は、すっかりビートル通だ。もしも愛車のビートルをイメージチェンジしたくなったら、バンパーを交換するのも楽しい。
毎週水曜日はVOLKSWEDNESDAY! 面白くて勉強になるフォルクスワーゲン情報をお届けしますので、お楽しみに。
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