1月14日に国内で発表され、4月25日に価格が公表された日産の新型「フェアレディZ」。幸運にもテストコースにてハンドルを握る機会に恵まれた。これまでベールに包まれたいた、その走りの実力を速報する。
●文:川島茂夫 ●写真:日産自動車株式会社
3.0L V6ツインターボの一気にレブリミットに達する加速は凄いの一言
フェアレディZを駆った瞬間に頭の中は「楽しいはすべてに優先される」に染まってしまう。もちろん、安全性や環境性能等々の社会的な良識が後回しなるようでは粗暴な愚か者だし、力学的正論から著しく逸脱すれば偏った嗜好の変わりモノ。
クルマとの対話を楽しみながら脳筋思考にも陥らずに、時として強大なパワーに振り回されたり、破綻を抑え込んだり。ハメの外し方が実に上手い。現行モデルが端的だが、R32以後のGT-Rが最強エンジンのパワーを使い切って速さを求めたのと対照的だ。
もっとも、破綻を楽しむなんていえるのはメカと電子制御の性能向上の賜。Zの進化では「楽しい」と並行して力学的正論で性能向上も図っている。Z33に対して先代のZ34はだらしなくオーバーステアに陥らないようにフットワークを安定性とコントロール性に振っている。新型もハンドリングの志向は先代に近いが、だからこそ圧倒的なパワーも楽しめる。
スカイライン400Rと共通スペックの3.0L V6ツインターボは405PS。最高出力を発生する6400rpmでのトルクは約45.3kg・mであり、これは最大トルクの約94%の値。最大トルクの上限となる5600rpmを超えても加速の鈍化はない。一気にレブリミットに達する加速は凄いの一言。
トランスミッションは6速MTと新開発の9速ATを用意。バージョンSがMTに限定される以外はMT/ATの選択可能。MTには先代同様にダウンシフト時の回転合わせを補助するシンクロレブコントロールも採用。ヒル&トゥ等々、自分で操作するより素早く正確でちょっと悔しいが、制動旋回ではペダル操作がブレーキに集中できるのが利点。ただ、楽してリズミカル、という面ではATパドル変速と悩ましい。また、1-6速のギア比はMT/ATとも大差なし。変速タイムラグとアクセルオフの過給圧低下のためテストデータでは発進加速性能でATが勝るとのことだが、どちらのミッションを選ぶかは楽しみ方次第である。
小開度からの全開で最大トルク発生までのタイムラグは回転数の影響を受けるのだが、細かなアクセルワークでのコントロール性は好印象。中庸アクセル域での反応が素早く、踏み込み加減に上手に付いてくる。クリッピングからの加速でトラクションの掛かりと横Gでグリップ限界をトレースさせるような微妙なアクセルコントロールに意図どおりに反応する。加減速や横Gで4輪の荷重バランスは変化するが、連続的かつ収束性がいい。また、ターンイン時なら前外輪側、加速に移行すれば後外輪側が沈み込むよいう具合に荷重増の変化がサスストロークに反映されるのが心地よい。
ハンドリングでは旋回加速時はトラクションで前輪をじわりと押し出すような感覚。セオリーに背いた扱いだが、大きめにアクセルを開けながらの増し切りでも回頭してくれる。その反動か、定速あるいは緩減速時の初期回頭反応が神経質。舵角に正直すぎるので高速直進も含めてステアリングの保持にちょっと気を使う。分かっていれば対応すればいいだけだが。
本来「400馬力超はヤバイ!」なのだが、クルマの状況や限界が掴みやすく、限界を超える予見性も高いし、その結果も大体理解できる。予想外が少なければ「破綻も技のひとつ」くらいの余裕を持てる。と記すとカウンターステア練習機的FRを想像するかもしれないが、そんな次元では400PSオーバーを消化しきれない。本物のFRスポーツであり、きっちり走りを計算できるマシンでもあり、昔話も弾む相棒でもある。新型のフェアレディZはそんなクルマだった。
と、ここまで試乗して、ではどのグレードを選ぼうかと考えてみると、ダイレクトな挙動や405PSのパワーを味わうなら標準仕様の「フェアレディZ」の6速MT車だろう。しかし、限界を含めた「Z」らしい走りと装備を含めた快適なツーリング性能を求めるなら最上級グレードで最高価格になるが、「バージョンST」の9速ATがオススメだ。
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※特別な表記がないかぎり、価格情報は消費税込みの価格です。
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