Horacio Pagani(オラチオ・パガーニ)が1992年に創立したPaganiは30周年の節目を迎える。そのタイミングで、Zonda(ゾンダ)とHuayra(ウアイラ)に続く第3のクリエーションとなる新型のスーパーカー「Utopia(ユートピア)」をイタリア・ミラノで公開した。
●文:月刊自家用車編集部
第3のパガーニは理想郷の名を冠する『Utopia』
パガーニ・アウトモビリは、アルゼンチン生まれのオラチオ・パガーニ氏がイタリアに設立した。1999年に『ゾンダC12』と呼ばれるスーパーカーを発売。その後、ロードスター、ゾンダF、ゾンダRなど、絶えず進化の手を加えてきた。その最新作となるのは、パガーニが追い求めた理想を形にした「ユートピア」だ。
その外観は、これまでのパガーニ車よりもアグレッシブではないが、巧みなエアロダイナミクスワークがふんだんに盛り込まれている。丸みを帯びたアッパーエッジを持つフロントガラスから、 ウィングやボンネットのディテールまで、流れるような曲線的シェイプは、長い時間をかけて洗練されたフォルムだ。最初のスケッチから、最終的な形状が固まるまでに6年間もの月日を費やした。
そして果てしない研究と数え切れないほどの修正を経て、その空力性能は完璧なものとなった。ハイパーカーの中には、多数のスポイラーを備えているものもあるが、ユートピアはこれらの付属物の機能を全体の形状に組み込んでおり、デザインのみによってより大きなダウンフォースと空気抵抗の低減を実現した。エアロダイナミクスを活かし、どんなに高速でも確実なハンドリングと安定性を最大限に発揮。電子制御ショックアブソーバーと相まって、あらゆる走行条件下で最適な動的挙動を確保している。ドライバーの操作に、これまで以上に反応し、最高のドライビング体験を保証する一台となっている。
歴代モデルに採用されてきたカーボンモノコックの強みをさらに強化し、繊維の織り方を改良し、 カーボチタンやカーボトライアックスなどの新しい複合材料を発明。さらに、新しいタイプのAクラスカーボンファイバーは、同じ繊維密度で約38%の強度向上を実現している。
ユートピアは安全性能においても徹底している。開発からプレテスト、ホモロゲーションモデルに至るまで、50以上の厳しい衝突テストをクリアし、 グローバルな認証を受けている。世界で最も厳しいレギュレーションをクリアした車作りへのこだわりが、ここにも表れている。
機能を備えた個性とこだわりが細部に宿る
リヤライトはリヤウィングの脇に浮かび、 エアエクストラクターにセットされ、 その一つひとつのパーツは、宝飾店のウィンドウに飾られていてもおかしくないほど美しく仕上げられている。
パガーニの特徴であるサイドミラーはユートピアでも健在。まるで宙に浮いているようなサイドミラーは、エアフォイル形状によりボディから離され、空力的な性能を高めており、風洞実験による綿密な最適化が施されている。
フロントホイール後方、ドアにはエアスクープが設けられており、これ以外にもエンジンベイにフレッシュエアを導くベント類が設置されている。
鍛造ホイールには、タービン状のカーボンファイバーのエクストラクターが装着され、ブレーキからの熱気を逃がし、車体下部の乱気流を低減している。また、カーボンセラミックディスクに装着されるブレーキキャリパーは、新たにデザインしたもので、軽量化にも成功している。
タイヤはPIRELLI社製。サイドウォールに「Utopia」のシルエットが刻まれ、専用開発されたことを物語っている。フロント21インチ、 リア22インチという異例の大径ホイールにより、強大なトルクを効率よく路面に伝えると同時に、全体のデザインに新しい創造性を付与している。
パーソナルモニュメントでもあり、ブランドのシグニチャーでもあるチタン製クワッドエキゾーストは、熱を効率よく逃がすためにセラミックコーティングを施しながらも、 6kgをわずかに超える程度の重量に留まっている。
ユートピアはメルセデスAMGがパガーニのために特別に製作した6リットルV12気筒ビターボエンジンを搭載。こちらも膨大な時間をかけた開発の結果、864bhpの出力と、1100Nmという驚異的なトルクを発揮する仕上がりに。最も厳しい排ガス規制をクリアしながら、より高回転であり、柔軟であり、パワフルな走りを実現した。
精密機器を連想する斬新な内装
ユートピアの内装は、外観よりもさらに独創的である。ドアを開くとすべての印象が変わると言っても過言ではない。モダンでもレトロでもない、タイムレスなデザイン。ドライバーの前にある最小限のディスプレイ以外には、スクリーンが無いのだ。大きなスクリーンは、 設置も簡単でデザインの手間も省けるが、美しさが損なわれてしまう。計器はシンプルで、ダイヤルの一つひとつが、まるで腕時計のスケルトンムーブメントのように、そのメカニズムの一部をさりげなく披露している。
高性能な自動車用トランスミッションの分野で、最も権威のあるメーカー、Xtrac(エクストラック)に依頼し、ヘリカルギアを用いた最も素早いシフトチェンジが可能なギアボックスを開発。コンパクトで軽く、横置きのため重心が最適化されている。 さらに、パガーニ愛好家の希望に最も合致するよう、バーチャルなマニュアルではない、本物の7速MTが開発された。シンクロナイザーリングを備え、ピュアマニュアルとして十分な100Nmのトルクを扱える機構を持つこのようなギアボックスを設計するのは容易ではないが、ユートピアにとっては必須条件であった。
※ユートピアは99台の生産が予定されているが、既に完売している。
– SPECIFICATIONS –
重量:1.280Kg (2822lb)
パワー出力:864HP (635kW)/6000回転/分(18°Cにおける)
最大トルク:1100Nm from 2800回転/分 to 5900回転/分
エンジン:AMG製6.0リッター・V型12気筒ツインターボ
総排気量:5,980cc
ギアボックス: XTRAC製7速AMT(Automated Manual Transmission)ディファレンシャルギア付きマニュアル車
ボディ構造:モノコックCarbo-Titanium HP62 G2、Carbo-Triax HP62
フロント&リア:CrMo合金銅製のチューブラーサブフレーム
ブレーキ:ブレンボ製 カーボンセラミック4ベンチレーテッドディスクブレーキ(F):410x38mm、6ピストンモノリシックキャリパー、(R)390x34mm、4ピストンモノリシックキャリパー
ホイール:APPモノリシック・アルミニウム合金鍛造、フロント21インチ、リア22インチ
タイヤ:型式:フロント ピレリ Pゼロコルサ 265/35 R21、リア:25/30 R22 / 低温時の走行に適したPirelli SottoZero(ピレリ・ソットゼロ)
※本記事の内容はオリジナルサイト公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
※特別な表記がないかぎり、価格情報は消費税込みの価格です。
よく読まれている記事
給油の際に、給油口のフタの裏にある突起のようなものに気づいたことはないだろうか? 実はコレ、とても便利な機能をもっているので、次回の給油で是非活用してみてほしい。 目次 1 知っているようで、実は見落[…]
パンクなどの応急処置の際に利用する車載ジャッキ。飽くまでも緊急用で、メンテナンスでの使用はNG。この、便利ではあるが、使い方を間違えると事故の原因にもなるツールの、正しい使い方と、絶対にやってはいけな[…]
冬は車内の温度が極端に低くなるため、適切に車内を温める必要がありますが、そんなとき頼りになるのがカーエアコン。しかし、正しい使い方を知らずに利用すると、逆に快適さを損なってしまうこともあります。今回は[…]
「ETC2030年問題」という言葉、聞いたことがありますか? 2030年までにセキリュティシステム規格の大幅変更により、現在使われているETC車載機器の一部が使えなくなってしまうという問題です。「20[…]
普段クルマに乗っているときに遭遇する問題のひとつとして、フロントガラスが曇ってしまうことが挙げられます。この現象は単なる不便さを超え、視界が制限されて交通事故につながる可能性もあります。ガラスの曇りは[…]
最新の記事
- 1
- 2