
2022年9月15日からいよいよ販売開始となったマツダの新世代SUV「CX-60」の3.3Lディーゼル+マイルドハイブリッドのe-SKYACTIV D搭載モデル。今回は、XDハイブリッド・エクスクルーシブ・スポーツとXDハイブリッド・プレミアム・モダンの試乗インプレッションをお届けする。PHEVや標準仕様の3.3Lディーゼルや2.5L直4ガソリン搭載車は12月以降の発売開始が予定されている。
●文:川島茂夫 ●写真:澤田和久
4気筒並みに軽快に回りパワフルな3.3Lディーゼル。コーナリングではFR感覚の4WDで懐深く扱いやすいハンドリング
XD-HYBRID Exclusive Sports
重質な滑らかさで回転の精度感が高いとかいう味わいが直6の魅力。これを大前提としてCX-60の3.3Lディーゼル+マイルドハイブリッドのe-SKYACTIV Dを評価すると見誤る可能性がある。優秀なディーゼルエンジンを求めた結果の直6なのだ。

興味深いのは排気量とボア×ストロークの設定だ。新開発の燃焼室形状や鉄製ピストンの採用など、部品レベルでは異なる部分が大半だが、ボア×ストロークはCX-5等が採用する4気筒ディーゼル(2.2L)と共通。乱暴な言い方なら2気筒追加して6気筒化、排気量1.5倍の3.3Lとなったのだが、燃焼制御に影響が大きいボア×ストロークが共通という点で、従来型のノウハウを活かしやすい設計でもある。
さらに増加した排気量を活かして最大過給圧の減少、圧縮比の向上、全域EGRを採用。新型の燃焼室形状と合わせて高効率稼働域を2.2L型から大幅に拡大した。
e-SKYACTIV D
ただし、動力性能向上が主眼でないのはスペックを見れば一目瞭然だ。排気量は1.5倍になっているのに最高出力は約17%、最大トルクは約11%しか増加していない。ラージクラスのサイズや重量に応じた動力性能を得ながら燃費を一段上に引き上げるのが狙いであり、これはCX-5とのWLTC燃費を比較すれば理解できるだろう。
試乗モデルは2クラッチ型パラレル式を用いたマイルドハイブリッド仕様。標準型ディーゼルより1割以上燃費が向上し、WLTC総合モード燃費はハリアーHVと同等。ラージクラスでは圧倒的な燃費性能である。
実際に走らせた時のドライブフィールも興味深い。滑らかかつ軽快に回る4気筒エンジン的。吸排気音や燃焼音もディーゼルらしくなく独特。高回転まで伸びやかな加速を維持し、スポーティなドライビングにも相性がいい。低負荷域で効果的な電動アシストもあり、低負荷域のコントロール性も良好だ。
XD-HYBRID Premium Modern
付け加えるなら、同じ回転数でも6気筒は燃焼回数が4気筒の1.5倍となり、3000回転は4気筒の4500回転相応の回転感覚。エンジンフィール面の低回転域の滑らかさと高回転域の伸びやかさは直6の恩恵である。
新開発のトルコンレス8速ATは低負荷域の変速の滑らかさは従来のトルコン式より若干劣るものの8速化での各段の減速比の近接化による小気味よさや高負荷時の変速の心地よさは魅力的。スポーティな味わいと燃費の両立を重視するほどに評価が高くなるタイプである。直6ディーゼルの特性との相性もいい。
XD-HYBRID Premium Modern
CX-60のもうひとつの特徴となるFRプラットフォームだが、4WD車であってもコーナーの立ち上がりではFR感覚たっぷり。後輪の蹴り出しがしっかり伝わってくる。後輪の駆動力が過剰にならないように制御された前後駆動力配分も妙味。FRの挙動と操縦感覚に4WDの懐深さを加えて扱いやすさと安心感を高めている。
ただ、一般走行などの低負荷域ではフラットな姿勢維持にこだわり過ぎているせいか、路面の凹凸に神経質な部分もある。加速時のリアサスの沈み込み感も希薄。走行速度域が高まるほどにしなやかさと据わりのバランスがよくなり、どちらかと言えば高速ツーリングで真価を発揮するタイプだ。
キャビンスペースはCX-5と同等。車体サイズの割りに狭いとも言えるが一般的なレジャー用途には十分。内装の素材感はミドルSUVプラスαくらいのレベルだが、和装センスのトリムや色遣いの巧みさで大人っぽい雰囲気。とくにコントラストの利いた明るい内装色は寛ぐプライベート空間を上手に演出している。
直6とFRということで思い切りクルマ趣味に奔ったモデルを想像していたのだが、ドライバビリティと燃費主眼のパワートレーンといいユーザーの現実的な用途でメリットを求めた設計。余談ながら縦置エンジン効果で車体寸法の割りに最小回転半径が小さい。アウトドアレジャーのヘビーユーザーには勧めにくいが、高速長距離を主体としたツーリング派にはイチオシ。山岳路も得意であり、「人馬一体」と「魂動デザイン」の象徴的SUVといえる。
■XD-ハイブリッド エクスクルーシブスポーツ(4WDのみ・車両本体価格: 505万4500円)主要諸元 ※メーカーオプションを含まず
●全長×全幅×全高(mm):4740×1890×1685
●ホイールベース(mm): 2870
●最低地上高(mm):180
●最小回転半径(mm):5.4
●車両重量( kg ): 1910
● パワーユニット:3283 cc 直列6気筒DOHCディーゼルターボ(254PS/550Nm)+モーター(12kW/153Nm )
●WLTCモード総合燃費:21.1km/L
●タイヤサイズ:235/50R20
※本記事の内容はオリジナルサイト公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
※特別な表記がないかぎり、価格情報は消費税込みの価格です。
よく読まれている記事
車内の内窓掃除は意外と見落としがちだが、視界のクリアさは安全運転の要となる。特に傾斜が鋭いフロントガラスや大型モニター搭載車では、従来のワイパーでは奥まで届かず拭き残しが発生しやすい。そこで登場したの[…]
夏の日差しは強烈だ。クルマを駐車してわずか15分、車内の温度は外気温32℃の場合で58℃にも達する。シートやハンドル、ダッシュボードが高温になり、触れるのもためらうほどだ。そんな過酷な車内環境を防ぐた[…]
炎天下に駐車したクルマの中は、まるでサウナのように熱くなる。その暑さを簡単に防ぐのが、ロール式サンシェードだ。サッと引き出すだけで直射日光と紫外線、熱をブロックし、車内の温度上昇やパーツの劣化を抑える[…]
真夏の炎天下に車を駐車したあと、ドアを開けた瞬間に押し寄せる熱気。誰もが一度は経験したことがあるはずだ。エアコンを全開にしてもすぐには冷えず、シートやハンドルも熱くて触れない。そんな悩みを根本から解決[…]
軽キャンパーに求めるものは、もはや「寝られる場所」だけではない。街中でも気軽に走れて、立体駐車場にも困らず、車内では快適にくつろげること。そのすべてを叶えたのが、フィールドライフが手がけるVitaだ。[…]
最新の記事
- 1
- 2