8年ぶりのフルモデルチェンジを行ったミニバン王者トヨタ「アルファード/ヴェルファイア」。4代目となる新型は、両車でパワートレーン設定やボディ構造などハードウェアで差を付けるという新たなチャレンジを行っている。その実力を公道試乗で確かめてみよう。
●文:川島 茂夫 ●写真:奥隅 圭之/トヨタ自動車株式会社
価格差を考えてもオススメは重厚な走りのE-Four。ヴェルファイアの2.4L直4ターボはリズミカルでトルクフルなパワーフィールが魅力的
人気芸能人の移動車両として定番化しつつあり、開発陣に尋ねればハイヤー需要でエクゼクティブラウンジも珍しくないそうだ。アルファード&ヴェルファイアがVIPカー用途(ショーファードリブン)の定番なのは既定路線だ。
新型の開発コンセプトではVIPカー用途での魅力、つまりは快適性や高級感にさらに磨きを掛けるのが第一義に掲げられている。車体骨格を強化するとともに構造用接着材塗布部の大幅増などの車体から伝わる振動騒音の軽減や乗り心地と操安性の向上が図られた。
また、最上級仕様のエクゼクティブラウンジシート(セカンドシート)はバックレストに低反発素材、座面には体圧分散型のクッションを採用するなど、くつろぎに対するコンセプトを変えることなくステップアップを図っている。
VIPカー用途適性ばかり採り上げるとドライバーズカーとしての魅力が薄く思えるかもしれないが、そこで注目されるのがヴェルファイア。従来型では加飾の異なる姉妹車という立ち位置だったが新型は車体フレームの強化や周波数感応型ダンパーの導入などハードウェア面からもアルファードとの差異を持たせた設計となった。
中でも注目されるのはパワートレーンだ。フルモデルチェンジでV6が消滅してしまったが、代わって導入されたのがレクサスNX350やトヨタクラウンクロスオーバーRSにも搭載されている2.4L直4ターボである。8速ATと組み合わせられ、ヴェルファイアのみに設定される。
ダウンサイジングターボらしい実用域の余力、一気呵成の加速の伸びの良さ、しかもエンジンフィールに荒々しさが無く、全開加速でも意外なほど圧迫感がない。日常域からスポーティな走らせ方でもリズミカルにしてトルクフルなパワーフィールが楽しめる。
従来型のV6の重厚な質感と滑らかさはないにしてもWLTC総合モードで10km/Lを超える燃費性能を考えれば、経済性とファントゥドライブの両立で魅力的なパワートレーンに仕上がっていた。
ヴェルファイアのもうひとつの特徴がキレのいい操縦性である。中でもターボの2WD(FF)がヴェルファイアのハンドリングの考え方を強く表していた。
操舵初期から応答遅れ少なく回頭。後輪の旋回力の立ち上げも早く、車重やサイズ、重心高を意識しないライントレース性を発揮。ロールは大きめだが、収束性も良好。回頭性を誇張気味なのが少々気になったが、軽快感を求めるドライバーにはちょうどいいだろう。
ただし、同じヴェルファイアでもHEV(ハイブリッド)の電気式4WDであるE-Four車になると印象が異なる。後輪への駆動力配分を積極的に活用しているせいか、応答遅れの少なさや収束性はそのままに回頭や旋回力の立ち上げや挙動が穏やかになっていた。
操縦感覚にいい意味での重質味わいがあるといってもいいだろう。また、215/55R19を履くが周波数感応型ダンパーの効果もあって路面からの神経質な振動を上手に遮断。車軸周りの細かな揺動感も少なく、乗り心地の質も従来の最上級グレード以上だ。
試乗グレードはエクゼクティブラウンジだったが、後席で感じる横Gの変化も落ち着きがあり、同グレードが狙うVIPカー用途にも違和感のないまとまりである。
操る手応えという点では2.4L直4ターボ搭載の2WD車に及ばないが車格を実感させる乗り味とファントゥドライブの両立では新型アルファード&ヴェルファイアのトップモデルと理解していいだろう。
ちなみに同じパワートレーン、駆動方式、グレードのアルファードにも試乗したが、装着タイヤが225/65R17となることもあり、ヴェルファイアと比べるとハンドリングの方向性が多少変わってくる。相対的にはピッチングなどの挙動が大きめになるが、ライントレース性や操縦感覚が曖昧という意味ではない。
高速コーナリングや車線変更などはさして補正を加えることなく狙ったラインに乗る。往なしの巧みさもあって、気を使わずに高速走行もこなしてしまう。ファントゥドライブはヴェルファイアに及ばなくても安心感や運転ストレスの少なさでは同等。路面凹凸の吸収や余韻のあるサスストロークは重量車特有の質を感じさせながらドライバーにも優しい運転感覚を実現していた。
もう一車、アルファードHEV(ハイブリッド)の2WD車にも試乗してみた。前述のモデルの駆動方式違い。従来型のHEVはE-Fourのみの設定だったので、新型が初お目見えのモデルでもある。新世代エンジンや高出力モーターの採用もあって、高速追い越し加速でのダッシュも良好だ。
低速から高速までドライバビリティの変化は少なく、エンジン稼働中の静粛性も高い。ただ、E-Four車と比較すると乗り心地の重厚な味わいが異なる。E-Four搭載の重さがそのまま質感に繋がっており、2WD車は軽やかな印象で上級設定パワートレーンらしいまとまりであるものの、走りの質感全般でE-Four車に多少ながら及ばない。
全5モデル試乗した印象では、快適性と車格感や乗用車らしい洗練感は共通し、アルファードはそのままに、ヴェルファイアはそこにファントゥドライブの香り付けがされた感じだ。また、走りの車格感あるいは快適性は価格設定の準じ、HEV(ハイブリッド)のE-Four車が最もプレミアム性が感じられた。なお、HEV(ハイブリッド)の2WDとE-Fourの価格差は22万円でしかなく、HEV(ハイブリッド)狙いのユーザーはE-Four車を勧めたい。
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