カローラのボディにGRの最新チューニングが注がれたGRカローラ。そのセカンドエディションともいえる一部改良モデルを試乗する機会に恵まれた。国産車屈指のホットハッチの実力は如何に?
●文:川島茂夫●写真:奥隈圭之
最もスポーツ性が高いGR系は、4モデルを展開中
トヨタのスポーツモデルブランド「GR」は、大きく分けて三つの系統がある。それぞれのシリーズの違いを一言で言うならは性能に対する熱さであり、GRスポーツ系/GR系/GRMNの順にスポーツ性のホット度が上がると考えていい。
「GR」ブランドのモデルの中でも最もホットなのは、市販車最強を狙ったGRMN。ラインナップとしてはGRMNヤリスのみで、世界ラリー選手権RC1規定の認証を受けるために開発されたGRヤリスの性能向上仕様として数量限定で生産されていた。このモデルはすでに完売しており、中古車としても非常に高価な価格帯で取引されている。
その対極にあるのがGRスポーツ系だ。モータースポーツでの車両開発のノウハウを活かしたスポーツ仕様と理解すればいいモデルで、基本パワートレーンはベース車と共通しているが、専用の内外装カスタマイズや車体骨格補強も含む専用サスチューンなどを採用。四輪のグリップとバランスを上手に使い、揺れ戻し等の修正も少ない特徴を持ち、乗り心地の犠牲も最小限に収めている。良質なツアラーという側面も持ち、モデル展開としてもヤリスクロスやアクアなどにもグレードが設定されるなど、最も身近なGRだ。
現在、新車で購入できるモデルの中で最もスポーツ性が高いGR系は、4モデルを展開中。GRスープラとGR86はクーペ、GRヤリスとGRカローラはハッチバックとなる。モータースポーツで勝つためのホモロゲションを目的に開発されたパワートレーンやシャシー、駆動系を採用しており、GRヤリスとGRカローラは、そのスタイルにはベース車の面影があっても中身は別物。ヤリスやカローラをベースにするのも車格の問題ではなく、コンパクトサイズの軽さを利した戦闘力の向上が狙いで、「GR」が求めた高性能を象徴しているモデルといえる。
GRヤリスでは少し手狭‥‥。そんな走り好きの救世主
今回、試乗したGRカローラ。特別な高性能エンジンを搭載したカローラと言えば、二代目カローラに1.6LのDOHCエンジンを搭載してモータースポーツフィールドで大活躍したTE27を思い出す。GRカローラはその後継車に位置付けたくなるのだが、その役割を担っているのはGRヤリスであり、GRカローラはモータースポーツの魅力と、公道での使い勝手や快適性を両立していることが特徴。
今回の改良モデルでは、サスメンバーとボディの締結剛性を向上した新型ボルトと、空力安定向上のフロントバンパーエアダクト内部の形状変更などの改良が加えられているが、ハードとしては、GRヤリスのパワートレーンや駆動系、サスをカローラスポーツに移植したモデルとなる。車体サイズの拡大や、車両重量の増加により、限界性能は多少低下するものの、5ドアボディの大きくなったキャビンと荷室により、実用性はGRヤリスから大幅に向上している。
さらに大画面のディスプレイオーディオやステアリング&シートヒーター、MT仕様で少し運転支援機能が制限されるがトヨタセーフティセンスも標準装備され、上級コンパクトにふさわしい利便快適装備が採用されている。
走りの印象は、大トルクを受け止めるクラッチの操作力は重いとは言え、普段乗りで苦にしないレベル。慣れてしまえば大して気にならない。適度にストロークがあるタイプなので、足のアクションは大きめになるがクラッチは繋ぎやすく、ミスシフトに気を使わなくても済む。もちろん、低回転域のトルクもたっぷり。回転を抑えれば悠々と、7000回転まで回すようなレブリミット基準のシフト操作なら、強烈な加速が味わえる。
さらに驚いたのはフットワークの出来栄え。路面に正直な上下動の特性は変わっていないが、GRモデルの本領である操縦性はすこぶる良好。操舵と回頭、旋回力(横G)が一致しているので、操舵に神経質にならず済む。具体的にはコーナー半径や横Gの大小で操縦特性が大きく変わらないため、狙ったとおりにキレイで効率的なコーナリングがいともたやすく自然にできてしまうのだ。それでいて乗り心地は品よく懐深い特性で、街なかでも違和感は全く感じない。走り重視のプレミアムコンパクトとして、相当高いレベルにまとまっている。抽選に当たった550人のユーザーが羨ましくなってしまうほどだ。
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