
トヨタ自動車が愛知県豊田市と岡崎市にまたがる山間部に建設を進めてきた研究開発施設「Toyota Technical Center Shimoyama」が完成。2024年3月25日から全面的な運用を開始した。トヨタにおける「もっといいクルマ」の車両開発を牽引するフィールドとなる。
●文:月刊自家用車編集部 ●写真:トヨタ自動車株式会社
下山の地形を活かした高低差と多数のカーブが入り組んだ厳しいテストコース
「Toyota Technical Center Shimoyama」は、2018年4月から建設を開始。2019年4月にははやくもカントリー路を備えた中央エリアの運用を開始し、2021年10月に高速評価路や世界各地の特殊な路面を再現した特性路などを備えた東エリアの運用を開始していた。
Toyota Technical Center Shimoyama 全体図
これまで2020年に発表した大改良が行われたレクサス「IS」を皮切りに新型車の開発を同施設で行い、下山のテストコースで鍛え上げ、次々に開発を進めている。
今回、新たに新たに車両開発棟や来客棟を備えた西エリアが完成。全面運用を開始した。
車両開発棟は、レクサスカンパニーとGR カンパニーの事業/開発拠点となり、企画・デザイン、開発・設計、試作・評価などあらゆる機能のメンバーが、ドイツ・ニュルブルクリンクのピットのようにクルマを中心に集結。テストコースを走らせることで開発中のクルマの課題を発見し、改良を繰り返しながら車両の開発を進めていくという。さらに、最先端のデジタル技術を活用し、リアルなクルマづくりとデジタルを融合した開発に取り組む。
同時に運用が開始された来客棟は、ビジネスパートナーやサプライヤーの方々との垣根を越えた共創の場となるとのこと。開発拠点ならではのクルマを間近に感じた交流で、新たな発送を促しながら、イノベーションを作り出す空間として活用する。
この「Toyota Technical Center Shimoyama」の建設にあたり、敷地面積(約 650ha)の約 6 割で土地本来の森林を残して環境保全に取り組みつつ、新たに緑地を造成。2023年3月には東エリアに環境学習センターが完成し、環境保全に向けて、里山体験イベントなど地域住民との交流の場として活用している。

4月2日に開催された「Toyota Technical Center Shimoyama」お披露目式において、トヨタ自動車株式会社会長 豊田章男氏は『この施設の構想がスタートしてから 30 年近く経ちます。地域の皆さまに「トヨタが下山に来てよかった」と笑顔になっていただきたいという想いで、ずっとやってまいりました。この「皆さま」には、本日お越しいただいた“人間”の皆さまだけでなく、古くからお住まいの“動物や植物の皆さま“も含まれております。そんな地域との共生に向け、愛知県、豊田市、岡崎市など行政の皆さまに多大なるご協力をいただきました。また、下山および松平地区にお住まいの皆さま、長きにわたる建設期間、そして、これからも末長くとなりますが多大なるご理解とご支援をいただいていること、心より感謝いたします。GR、レクサスのメンバーなど総勢 3,000 人が、本日より、ここで「走る・壊す・直す」を繰り返してまいります。私もマスタードライバーとして“下山の道”をたくさん走ってまいります。“下山の道”がクルマをつくる…。生産工場ではありませんが、これから“下山産のクルマ”が世界のあらゆる道を走り、たくさんの人を笑顔にしてまいります。下山で加速していくトヨタの「もっといいクルマづくり」をお誓い申し上げて、これまでのご協力と、これからもずっと続いていく皆さまとの共生へのお礼に代えさせていただければと思います。 』とコメントしている。
■Toyota Technical Center Shimoyamaの概要
・所在区域:豊田市(旧下山村)および岡崎市(旧額田町)の一部
・面積内訳
施設用地面積:159.2ha/(総面積に占める割合24%)
道路:7.1ha/(総面積に占める割合1%)
調整池等:16.2ha/(総面積に占める割合3%)
造成緑地:81.8ha/(総面積に占める割合13%)
残置森林等:386.5ha/(総面積に占める割合59%)
総面積:650.8ha(6.508km2)/(総面積に占める割合100%)
・事業主体:用地造成工事 愛知県企業庁/施設建設工事 トヨタ自動車株式会社
・主な施設:中央エリア カントリー路/東エリア 高速評価路&特性評価路/西エリア 車両開発棟&来客棟
・投資額:約3,000億円
・従業員数:約3,000人(2024年3月 全面運用開始時)
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