かつて、スーパーカーブームで注目され、国産車にも多数採用されたリトラクタブルヘッドライト。しかし、現在はこの方式を採用する国産車はゼロ。見た目もカッコよく、空力抵抗的にも有利そうなのだが、なぜ、絶滅してしまったのか? その詳細を調べてみた。
●文:月刊自家用車編集部 ●出典:すごいクルマ事典(内外出版社 刊)
技術の進化がリトラクタブルヘッドライトを絶滅に追い込んだ?
ボンネットに格納されていたライトがスイッチオンで顔を出すリトラクタブルヘッドライト。日本では1970年代後半のスーパーカーブームでで注目を浴び、1980年代にはファミリーカーにまで採用されるほど流行します。ところが法律で禁止されたわけでもないのに、令和の時代にこのライトを採用するクルマはなく、絶滅してしまいました。
その多きな理由は技術の進化にあります。リトラクタブルヘッドライトは、1983年まで使えるライトの形が法律で決められていたアメリカで、少しでも他とは違う顔を作るために編み出されたもの。そうした規制のない日本やヨーロッパでは、デザイナーが自由な発想で生み出した新しい形のライトを、自動車部品メーカーがとんどん開発していたのです。
日本のライトメーカー最大手の小糸製作所は、1980年代に軽量で自由なデザインができる樹脂製異型ライトの開発に世界で初めて成功します。その後も世界各国の企業協力により、より遠く明るく周囲を照らし、デザインの自由度が高く、耐久性や重量も申し分のないライトが次々と世に送り出されていきました。じつは、リトラクタブルヘッドライトの開閉には複雑な仕組みが必要とされます。そのために故障しやすかったり、クルマが重くなり燃量が悪化したりというデメリットもありました。そんなワケもあって、リトラクタブルヘッドライトは過去の技術となったのです。
ヘッドライトの技術進化は目覚ましく、わずか30年あまりでハロゲンからHID、現在主流のLEDへと進化していきました。自動部品メーカーの戦いはこれからも続きます。
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今回の記事は『満タン豆チシキ!すごいクルマ事典』から一部抜粋して掲載。同書では、すごいクルマの豆知識を6章に分けて解説。国産車から外車まで、幅広いモデルをラインナップ!