●文:松本隆一/編集部
「うちのクルマはまだ乗れる……」は、かなりもったいない選択
松本「今回はもったいぶらず、結論からいっちゃおうか?」
担当「そういうのもアリですよね。いっちゃってください」(笑)
松本「この夏はズバリ、新車の買い替え時だ!」
担当「おっ、いきなり断言ですか?」
松本「間違いないね。『今夏、新車を買い替えようか? それとももう少し先にしようか?』なんて迷っていたら、即、動いたほうがいい。ぐずぐずしていると、チャンスを逃すよ」
担当「で、その理由は?」
松本(どや顔で)「またまた〝中古車バブル〟がきているのだよ」
担当「おおっ、中古車が高騰すれば、下取り額もあがる……」
松本「下取り額があがれば、新車が安く買える……」
担当「だから〝ズバリ買い替え時!〟ってわけですね」
松本「めでたし、めでたし……では、また来週……」(席を立つ)
担当「お疲れさまでした……って、そんなわけにはいきませんよ(笑)……〝おおっ、なるほど!〟って膝を打てるような、説明をお願いします」
いま中古車市場では、タマ不足が深刻な問題に……
松本(座り直して)「中古車の値段は〝需要と供給〟によって決まってくるよね」
担当「世界の常識です」
松本「いま中古車市場では急激に品不足となってきているんだよ。商品のことを、中古車業界では〝タマ〟っていうけど……タマ不足になれば、需要と供給のバランスが崩れて、中古車の値段があがるってわけだ」
担当「それって、数年前にも起こりましたよね」
松本「2021年頃から半導体が供給不足に陥り、新車の生産に大きな支障が出始めた」
担当「そこからえらいことになりましたよね。『納車まで数か月待ちは当たり前、1年待ち、2年待ち』なんて、異常事態が続きましたね」
松本「新車の納期が遅れれば、下取り車の引き渡しも遅れるし、『納車に時間がかかるなら、いったん車検を通して買い替えを先延ばししよう』ってことにもなる……これによって中古車の発生率が急激に減って、市場はタマ不足となり、中古車が高騰した。これが〝中古車バブル〟って呼ばれたわけだ」
下取りの価格が高い=安く新車が購入できる
担当「そうそう、松本さん、あの頃、クルマ、買い替えましたよね」
松本(苦笑しながら)「忘れもせんよ、まいったね、あのときは……2022年9月から国内販売される新型メルセデスCクラスを発売前から注文していたんだ。当初は9月に納車ってことになっていたんだが、10月になっても11月になっても……音沙汰なし……」
担当「原因は『半導体の供給不足で生産が遅れてる』ってやつですね」
松本「そのとおり。年末になってようやく連絡があった。私が注文したのはシルバーのワゴンだったんだけど『ブルーのセダンなら年内になんとか用意できます』っていうんだよ」
担当「ブルーの4ドアCクラスですか……リセール価値、ヤバくないですか?」
松本「だよな、さすがに『ブルーはかんべしてくれ』って断った。すると、年明け早々にこんどは『ブラックのセダンはどうだ?』っていうじゃないの」
担当「やっぱ、ワゴンでしょ」
松本「そう思うよな、でも、その頃、中古車バブルによって下取り車の査定額がめちゃ高かったんだ。しかし、バブルってのは急にはじけるからね」
担当「やっぱ高いうちに買い替えたいですよね」
松本「聞けば『ワゴンはいつ納車できるかわからない、あと半年、いや1年待つかも……』みたいなことをいわれちゃってね」
担当「そうそう、同じ頃、しょこたん(タレント·中川翔子)も新型Cクラスを買ったけれど、『ワゴンを頼んだのに、来たのはセダン』っていってましたね。色は赤で、これは譲れなかったみたいですよ」
松本「……おれは色も譲ってしまった……」
担当「待ちきれずに手を打っちゃったわけですね。根性なしじゃないですか」(笑)
松本「ほっとけ……しかし、シルバーのワゴンに乗りたかった……半導体不足の犠牲者だよ、おれは」
担当「でも、下取り車、めちゃ高値で売ったんでしょ」
松本「ま、やっぱり、これ(指で〇をつくって)優先になるわな」(笑)
円安で日本の中古車の輸出が活発化、それに伴って国内市場のタマ不足が加速中
担当「松本さんが身をもって体験したように、前回の中古車バブルは新車を買い替えるユーザーにとって大きな恩恵をあたえてくれましたよね」
松本「2年くらい前に中古車価格はピークとなったけど、その後は半導体の供給不足が徐々に解消されてきたので、新車の納期も平常に戻ってきつつある。これにタイミングを合わせて中古車価格も下落に動いた」
担当「年くらい前には『中古車バブルは終わった』っていわれてましたね」
松本「ところがだ、ここにきて歴史的な円安の影響が強くあらわれてきた」(最新の為替相場は1ドル=161円 ※2024年7月1日のレート)
担当「円安って中古車価格に影響をあたえますか?」
松本「輸出だよ、輸出。最近、日本製中古車の海外輸出がめちゃ盛り上がっているんだ」。
担当「以前から国内で使用されていた日本車は『品質が素晴らしい!』ってことで、東南アジアや中東、アフリカなどではもてはやされていましたよね。『真面目な日本人が丁寧に乗っていた最高品質の日本車』って感じで、いい印象しかないですよね」
松本「向こうではボディに日本語の文字が入っているバンがそのまま走っているって聞くね。〝なんちゃら建設〟とか〝なんちゃら幼稚園〟って書いてあると『日本の中古車』の証明になるからね」
担当「〝寿司〟とか〝忍者〟なんて入ってたら、もうサイコーですよね」(笑)
松本「ともあれ、日本の中古車は円安を背景に割安感が大きくなっているため、ますます人気に拍車がかかっている。だから、輸出業者がこのところ日本の中古車を〝爆買い〟して海外に送っているってわけだ」
タマ不足が深刻になれば、中古車の価格は上昇。当然、下取り価格も急上昇
担当「したがってタマ不足になる……そして価格が上がる……っことですね」
松本「そのとおり。このところ中古車オークション(AA)での成約価格は再び上昇に転じているそうだ。自動車業界紙には『輸出活発でAA成約単価が上昇』って記事が大きく出ていたし、国内の中古車販売店に訊いたら『オークションで海外向けの仕入れ業者が高値でバンバン買いに入るので買い負けしてしまう』と嘆いているよ」
今回の中古車バブルでは、古いクルマの取引価格も上昇。長年、クルマを乗り続けているユーザーにもメリットがアリ
担当「とくに高値が期待できるタイプとか年式とかってありますか?」
松本「今回の中古車バブルは円安がバックボーンなので、どのクルマもどの年式も上昇している。だからまんべんなく高値が期待できるよ。SUVやミニバンの高年式車はもちろんだけど、セダンの低年式車でも輸出業者は買いまくっているそうだ」
担当「低年式車に高値がついた実例なんてありますか?」
松本「じゃ、本誌に掲載される「X氏の値引き大作戦」の例を紹介しよう。下取り車は10年落ちのトヨタSAIで、走行距離は9万㎞弱なんだけど、査定額はどのくらいつくと思う?」
担当「……まともに査定したら、40万円くらい……ま、トヨタ車ってことで奮発して50万円ですか……」
松本「当初は50万円だったんだけど、競合にもち込んだ結果、最終下取り額は72万円まであがったね」
担当「……ってことは……小売り値(中古車販売価格)は100万円くらいになっちゃうじゃないですか……国内市場で売ることを考えたら、ちょっと厳しいですよね」
松本「たぶん輸出業者にまわすんだろうね。トヨタ車は海外でとにかく強いから、国内市場では考えられないほど高い値段で取引されることも珍しくないから(笑)」
円安が続くかぎり、下取りの高取り傾向は続く。7月のボーナス商戦で大幅値引きを組み合わせるべし
担当「で、今回はいつ頃まで〝中古車バブル〟は続きますか?」
松本「円高に動いたら沈静化するので、こればっかりははっきりとわからないが、今年の夏はまず大丈夫だろう。下取り車の高取りが期待できるよ」
担当「下取りが高くても、新車の値引き条件がしょぼいと買い得感が薄れますよね」
松本「国内の新車市場はお盆前まで〝夏のボーナス商戦〟を展開しているので、新車の値引きも大きく緩んでいるよ」
担当「おっ、大幅値引きと高取りのWチャンスですか? となると『いつ買い替えるんですか?』と聞かれれば『いまでしょ!』ってなりますよね」
松本「7月はまさに〝買い頃、たたき頃!〟間違いないね」
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