クルマのメンテナンスDIYにおいて、配線処理も大切な項目となる。用品取り付けや電装パーツを修理するとき、配線の結合や分岐といった作業でハンダ付けを必要とすることがある。また、電子工作には必須となる技術。マスターしておけば作業の範囲が確実に広がるはず。そのコツを解説していこう。
●写真/文:オートメカニック編集部
まずは、ハンダゴテを1本手に入れたい
ハンダ付けは2つの金属間に、それより融点の低い金属を溶かし込んで接合をする作業。で、慣れないとうまくいかないが、コツさえつかめばそれほど難しい作業ではない。とはいえ、ハンダゴテがなければ話は始まらない。もしも持ってなかったら、とりあえず30Wのハンダゴテを1本手に入れたい。
また、ハンダゴテの 他にコテスタンド&コテ先クリーナー (たいていコテスタンドに付いてくる)/糸ハンダ(ヤニ入り)といった物も必要となる。初めて買うなら、それらを1パッケージにした「ハンダゴテセット」が便利でおすすめだ。
配線コード同士を接続する
ンダ付けするときは、ハンダ付けされる材料をハンダが溶ける温度までしっかり加熱することが肝心だ。また、電子部品のような小物パーツなら溶けたハンダを流し込むだけで付くが、配線コードのように芯線の本数が多く太い物の場合、ハンダが溶け込みにくい。このため、金属表面の酸化被膜や油分を取る働きをするペーストやフラックスを併用する必要が出てくる。
【鉄人レベルのハンダ付け】
前準備として被膜を剥いた芯線同士をまっすぐ押し当てることで直線的に絡み合わせ、軽くねじって形を整えてやる。準備ができたら芯線の内部までハンダを浸透させるために、ハンダ付けする面にフラックスを塗布し、ハンダが溶ける温度まで温めてから、糸ハンダを流し込んでいく。このやり方を実践したのが、下の連続解説写真だ。
【初心者レベルのハンダ付け】
では、ハンダ付け初心者がやりがちなハンダ付けも解説しておこう。まず、芯線のはめ込みが浅く、芯線がバラけ気味。さらに、フラックスを塗布せず、しかも温めることなくい きなり糸ハンダを当ててしまった。このため、ハンダが浸透せず芯 線の表面に盛り上がってしまうことに。慌ててコテ先で撫でて均し てはみたもののゴテゴテになってしまった。いわゆる「イモハンダ」 という状態で、簡単に剥がれ導通不良の原因にもなる。
鉄人レベルと初心者レベルの仕上がり比較
写真上の鉄人レベルのハンダ付けの仕上がりは、芯線の内部までハンダが浸透し、剥がれにくくなっている。一方、初心者レベルの仕上がりは、一般的に言われる「イモハンダ」状態となっており、芯線の内部にはハンダが浸透しておらず、接点部分が簡単に剥がれてしまう可能性をはらんでいる。両者の仕上がりの違いは、一目瞭然だ。
ハンダ付けで失敗しないためのコツ
では、ハンダ付け上級者が実践する、上手に配線コードを接合するためのコツを解説していこう。
コテの先を上唇に近づけて温まり具合を確認する
コテ先の温度 が充分上がったかどうかは、熱に 敏感な上唇に近づけてみると判断することができる。 ただし、くれぐれも火傷しないように。
ハンダがスッと溶ければ使用OK!
充分加熱できればコテ先から熱気が漂ってくる。そうなったら試しにハンダをコテ先に付けて溶け具合を確かめてみる。ハンダがスッと溶ければ準備OKだ。
ペーストとフラックス、どちらにも一長一短がある
先にも説明した通り、配線コードの芯線の金属表面の参加被膜や油分を取り除いてくれるのが、ペースト、フラックス。しっかりとハンダ付けする上で欠かせないものだが、それぞれの特徴を解説私しよう。
ペーストの特徴
ペーストはクリーム状なため、 利用するときは細いドライバーなどを利用してすくい取る。そして、ハンダ付けする面にそっとのせるようにして塗りつける。強く擦ると芯線がバラけてしまうので要注意。ペーストは、ハンダゴテで加熱して溶かさないと芯線の内部に浸透しない。つまり、この点でひと手間がかかってしまう。
フラックスの特徴
フラックスは直接、垂らすだけで手間はかからないが、量の加減が難しく残留物が残りやすい。材質によってはハンダを腐食させるため、残留物は金属ブラシで削り落としておいた方がいい。このため、利用するなら1滴垂らす程度の必要最小限の量に留めておくことが肝心だ。
クルマのメンテナンステクニックも満載の臨時増刊号
本記事は、オートメカニック特別編集の臨時増刊号『クルマのDIYガイド 工具&道具の正しい使い方』に掲載されているものから抜粋・加筆している。同書には、役立つDIYテクニックが満載なので、興味のある方は是非、手にとって見てほしい。