静岡市の北端、南アルプスの南部に位置する奥静岡は「オクシズ」と呼ばれる秘境感にあふれた地域だ。中心市街を抜け、安倍川沿いに県道を北上していけば「ここが静岡?」と言わんばかりの大自然が迫ってくる。
●文/写真:ジパングツーリズム
市街地からは想像できない 静岡市北部の山の営み
東西に長い静岡県は、南部の駿河湾に面した沿岸部、北部の南アルプスに連なる山岳部と、わずかな範囲で両極端の地形を併せ持つ。それゆえに、海から山に走っていくと目まぐるしく景色が変わり、あっという間に〝秘境〟と呼ばざるを得ないような山間部に至る。
県道29号線(梅ケ島街道)を北へ向かう途上、周囲の山へと分け入れば、街道からは目にすることのできない小さな集落へとたどり着く。お茶やわさび、しいたけ栽培と、自然と共に生きる人々が造り出した絶景がそこにある。大代地区の地形が造り出す〝静岡のマチュピチュ〟もそのひとつ。観光地ではない。それでも見ておきたい、心に残る山の一景がある。
自然の力を見せつけられる 日本三大崩れのひとつ 宝永地震(南海トラフ) の爪痕 8 0 0 m の大規模崩落! 大谷崩(おおやくずれ)
1707年(宝永4年)10月4日に発生したマグニチュード8・4と言われる宝永地震は日本の歴史上、最大級のものだ。関東から四国にかけての被害が大きく家屋の倒壊6万戸、津波による家屋流出2万戸、死者2万人以上と伝わる。なお、この年の12月には富士山の宝永大噴火も発生しており、大量の火山灰が広範囲に降り注ぎ、江戸市中では徳川綱吉の悪政への天罰などと噂されたそうだ。
この宝永地震で生じたとされる山崩れが「日本三大崩れ」のひとつ、大谷崩だ。南アルプス(赤石山脈)の南端に位置する標高2000mの大谷嶺(おおやれい)から800mもの高度差、約1・8kmもの面積に渡って崩れ落ちた。これまでに崩れた土砂の量は約1億2000万㎥と推定され、傾斜部は急勾配でV字谷を形成し、現在も浸食が続いているという。
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