
BMWが世界最高峰とも言われる自動車の祭典で、限定70台の新たな傑作「コンセプト・スピードトップ」を発表。伝統のツーリング(ステーションワゴン)を再解釈した流麗なシューティングブレークは、シャークノーズとルーフを貫くスプラインが織りなす唯一無二のプロポーションを誇る。心臓部にはBMW最強のV8エンジンを搭載してデザインとスポーツ性能を両立。真のコレクターに向けたこの特別な一台を紐解いてみたい。
●文:月刊自家用車編集部 ●写真:BMW AG
BMW伝統のツーリングモデルをシューティングブレークに昇華
BMWは、イタリア・コモ湖畔で毎年開催される世界屈指のクラシックカーの祭典「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」において、新たな少量生産を前提としたスタディモデル「BMWコンセプト・スピードトップ」を発表した。
これは、BMWが誇るツーリングモデルの伝統を再解釈し、シューティングブレークのエレガンスと現代的なダイナミズムを融合させたエクスクルーシブな2シーターモデル。
昨年の同イベントで発表され、好評を博した「BMWコンセプト・スカイトップ」に続き、コレクターや熱心なファンに向けた70台の限定生産モデルとして、すでに注文受付を開始している。
BMW「コンセプト・スピードトップ(写真左)」は、2014年に発表された「コンセプト・スカイトップ(写真右)」に続く、ツーリングモデルを伝統的なヨーロッパ車のスタルであるシューティングブレークで再解釈したステーションワゴン。
現代的なデザインを採用したキドニーグリル、トレンドの薄いヘッドライトをシャークノーズデザインに取り込んだフロントエンド。Cピラーからなだらかにリヤエンドへと収束するルーフに、大径の2本出しオーバールマフラーがスタイリングを引き締める。
ボンネットから始まり、滑らかなルーフを越えてリアスポイラーへと流れるセンターの「スプライン」がエクステリアデザインの大きな特徴。寝かせたフロントウインドウとロープロファイルの全高もあいまり、極めてエレガントなボディラインを魅せる。
ダイナミズムを宿す、唯一無二のプロポーション
BMWコンセプト・スピードトップの核心は、そのユニークなプロファイルにある。BMWグループ・デザインを率いるアドリアン・ファン・ホーイドンクが「自動車業界において非常にユニーク」と語るように、このモデルは静止している状態でも躍動感を感じさせる、流麗かつ力強いシルエットを持つ。
エクステリアデザインは伝統と革新が見事に調和している。フロントエンドはBMWの伝統的なアイコンであるシャークノーズデザインを持ち、鋭く切れ込むVシェイプが特徴だ。極めてスリムにデザインされたヘッドライトと輪郭が優雅に光るイルミネーション付きキドニーグリルが、モダンで強烈な個性をアピールする。
最も印象的なのはボディ中央を貫く「スプライン」と呼ばれる一本のラインだ。このラインはボンネットから始まり、滑らかなルーフを越え、リアスポイラーへと流れるように続く。この一本の軸がクルマ全体のダイナミックなツーリング・プロファイルを視覚的に強調している。
さらに、ルーフには特別なカラーグラデーションが施された。「フローティング・サンストーン・マルーン」と呼ばれる深みのあるブラウンから、「フローティング・サンダウン・シルバー」へと滑らかに変化する塗装は、光の当たり方によって表情を変え伸びやかなルーフ形状を際立たせる。
アスレチックな印象はたくましく張り出したショルダー部分によって強調され、路面にしっかりと踏ん張る安定感を表現。足元にはこのモデルのため特別にデザインされたツートンカラーの14スポークホイールを装着し、複雑な造形美がエレガンスを一層引き立てている。
フローティング・サンストーン・マルーンと呼ばれる深みのあるブラウンから、フローティング・サンダウン・シルバーへと変化する塗装をルーフに採用。ディープコンケイブの14スポークホイールは、BMWコンセプト・スピードトップ専用アイテムとなる。
マニュファクチャーレベルの豪華なクラフトマンシップ
インテリアは2人での週末旅行を想定した豪華でパーソナルな空間に仕立てられた。デザインコンセプトはエクステリアとの連続性であり、外装色の「フローティング・サンストーン・マルーン」の輝くブラウンの色調が、インテリアの基調色「サンダウン・マルーン」として受け継がれている。
この落ち着いたブラウンと、シートに採用された明るい「ムーンストーン・ホワイト」のレザーが美しいコントラストを生み出し、車内空間全体に洗練された雰囲気をもたらす。ツートンカラーのレザー内装は単なる装飾ではなく、ドライビングに集中するダイナミックなエリアと、くつろぎの機能的エリアを巧みに分割する役割も担う。
細部に目を向けると、マニュファクチャー(工房)レベルのクラフトマンシップが随所に見て取れる。レザーで覆われた表面には高級紳士靴に見られる「ブローグ・スタイル」の伝統的なパーフォレーション(穴飾り)が丹念に施されており、クラシカルで温かみのある雰囲気を醸し出す。
また、エクステリアで特徴的だったルーフ中央のスプラインは、インテリアではツートンカラーのレザーヘッドライナーに埋め込まれた光のビームとして呼応し、乗員を優しく包み込む間接照明として機能する。
この精巧なクラフトマンシップは、BMWグループのディンゴルフィン工場内にある特別な工房「マニュファクチュール」の熟練した職人たちの手によって生み出される。さらにその価値を一層高めているのが、イタリアの老舗高級レザーグッズメーカー「スケドーニ」との協業だろう。
シート後方には、コンセプトカーのカラーリングと素材に合わせてスケドーニが特別に製作したオーダーメイドのラゲッジバッグふたつを、レザーストラップで固定できる専用スペースが設けられている。広々としたトランクも総レザー張りで、ここにもお揃いのウィークエンドバッグを収納可能だ。
サンダウン・マルーンとムーンストーン・ホワイトのツートーンで彩られたインテリアは、熟練した職人の手によるもの。リアシートがあるべき箇所はラゲッジスペースに転用され、専用のラゲッジバッグをふたつを、フロントシートの背後にすっぽりと収めることが可能だ。
イタリアのハイブランド「スケドーニ」にオーダーメイドしたウイークエンドバッグをトランクルームに搭載。トランクルームは2段底に設計されており、大型のウイークエンドバッグはシチュエーションに応じてトランクルーム内に収納される。
最強のV8エンジンと70台の限定生産
BMWコンセプト・スピードトップは、その美しいデザインだけでなくパフォーマンスにおいても頂点を極める。心臓部にはBMWの現行ポートフォリオにおいて最もパワフルなV8エンジンを搭載することが明らかにされており、圧倒的な動力性能が約束されている。
このモデルの限定生産化を決定づけたのは、昨年発表されたBMWコンセプト・スカイトップの成功にある。BMWブランドおよび製品管理担当上級副社長のベルント・ケルバーは、「スカイトップの発表は愛好家の間で大きな熱狂を生み、50台の限定生産につながった。この素晴らしい反応を受け、今年はスピードトップを70台の限定シリーズとしてリリースする」と語る。
BMWコンセプト・スピードトップは、単なる移動手段ではなく、デザイン、パフォーマンス、そして最高の職人技を融合させた走る芸術品である。BMWが少量生産モデルを通じて示すのは、ブランドのエクスクルーシビティと、自動車を愛する真のコレクターやエンスージアストに応え続けるという強い意志の表れだ。この特別な一台は、BMWの歴史に新たな1ページを刻むことになるはずだ。
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