
実はクルマの所有者が急に他界した際、そのクルマは相続人全員の共有財産となります。そして、クルマの状態や使用頻度にかかわらず、必ず相続手続きをおこなわなければなりません。この手続きを怠ると、将来的に思わぬトラブルに発展する可能性があるため、注意したいところですが、具体的にどのような手続きをおこなえばよいのでしょうか。また、相続人が複数いたり、クルマの処分を考えている場合は、どのような点に気をつける必要があるのでしょうか。
●文:月刊自家用車編集部(ピーコックブルー)
実はクルマも相続財産、処分には相続人全員の合意が必要
前述のように、クルマの所有者が突然他界した場合そのクルマは相続人全員の共有財産となりますが、相続には優先順位が設けられており、第1位は子や孫、第2位は父母や祖父母、第3位は兄弟姉妹となります。
ただし、配偶者は常に相続人となる権利を持っています。
また相続が発生した場合、「名義変更」の手続きをおこなうのがポイント。
道路運送車両法第13条では、「新規登録を受けた自動車について所有者の変更があつたときは、新所有者は、その事由があった日から15日以内に、陸運局長の行う移転登録の申請をしなければならない。」と定められています。
つまり、クルマの所有者が急に亡くなった際は、その日から15日以内に移転登録の手続きをしなければなりません。またクルマの所有者は乗っていた本人とは限らないため、まずは車検証の「所有者欄」を確認することが重要です。
クルマの所有者は、車検証の「所有者欄」で確認することができる
ローン購入のクルマの場合などは、所有者がクレジット会社やディーラーになっている可能性があります。
もし、クルマのローンが残っている場合は、完済して所有権を解除してから相続人への名義変更をおこないましょう。また、第三者名義のクルマであれば、そもそも相続の対象とはならないことに留意しなければなりません。
名義変更を怠ってしまうと、さまざまなクルマの手続きが不可能に……
相続人が名義変更を怠ってしまうと、大きなリスクを抱えることになります。たとえば、そのクルマが相続人自身の財産として法的に認められません。これは、将来的にクルマの処分や管理に関してさまざまな障害をもたらします。
また、道路運送車両法第16条に規定されている「一時抹消登録」をおこなうことができなくなります。
一時抹消登録は、クルマの使用を一時的に中止する際に必要な手続きであり、この手続きがおこなえないと、長期間使用しない場合でも自動車税などの負担が継続してしまいます。
さらに、自動車リサイクル法第8条および第15条に基づく「永久抹消登録」ができなくなります。
永久抹消登録とは、使用済みのクルマをリサイクル事業者に引き渡し、解体して完全に乗れなくする際に必要な手続きです。これらの手続きをスムーズにおこなうためにも、クルマの所有者が亡くなった際はすぐに名義変更の申請をしましょう。
クルマの使用一時停止/業者への引き渡しなどをおこなう場合、抹消手続きが必要になる
万が一のトラブル時に、保険が使えない可能性も……
また、名義変更を怠ることによるリスクはこれだけにとどまりません。
もっとも注意が必要なのは、故人名義のままクルマを運転し、事故を起こしてしまった場合です。この場合は任意保険が適用されず、自賠責保険を超える金額については補償されない可能性があります。
つまり、高額な賠償金を個人で負担する事態に陥ることがあるということ。そのため、相続時は忘れずに名義変更をおこないましょう。
では、名義変更の際はどのような手続きと書類が必要なのでしょうか。
名義変更の申請をする際は、故人の死亡と相続人全員を確認するための戸籍謄本が必要です。
また、相続人全員の実印が押された遺産分割協議書も必要となりますが、クルマの価値が100万円以下の場合は、遺産分割協議成立申立書とクルマの価値を証明する書類で代替できます。
これらに加えて、車検証、車庫証明書、発行3ヵ月以内の新所有者の印鑑証明書やナンバープレートも必要です。ちなみに本人が窓口に行けない場合は、委任状も準備しなければなりません。
これらの書類を揃えて運輸支局や自動車検査登録事務所に提出することで、名義変更の手続きをおこなうことができます。
このように、クルマの所有者が急に亡くなった場合は、速やかな名義変更手続きが必要です。
名義変更を怠ると、一時抹消登録や永久抹消登録ができなくなるだけでなく、事故時の保険適用にも支障をきたす可能性があります。
クルマは私たちの生活に欠かせない存在ですが、所有者の急な死亡という不測の事態に備えて、相続手続きの重要性を理解しておきましょう。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
人気記事ランキング(全体)
コルドバクルーズが描く“大人二人の贅沢な旅”の世界観 トイファクトリーが送り出す「CORDOBA CRUISE」は、名前からして旅情を刺激する。スペインの世界遺産都市・コルドバの優雅さをモチーフにした[…]
給油中に気づく違和感と、キャップを巡る小さなストレス 給油という動作は、慣れてしまえば機械的にこなしてしまう作業だ。セルフ式スタンドの普及で、自らノズルを握る機会は確実に増えた。ところが、燃料キャップ[…]
ショックレスリングとは? 一般の金属とは異なる原子の規則相と不規則相が存在する“特殊制振合金”を採用した金属製のリングで、シート取付ボルトやサスペンションアッパーマウントのボルトに挟み込むだけで、効果[…]
受注再開は、2026年夏ごろが有力 カローラクロスは、2025年5月の改良時にフェイスリフトの実施やガソリン車の廃止、スポーティなGRスポーツの追加など、過去最大規模の大きな変更が加えられた。改良前か[…]
広大なハンドル前のスペースを有効活用 愛車の車内を見渡してみると、うまく活用できそうなスペースが存在することに気づく。「ちょっとした収納とか作れそうな場所があるな…」と。しかし、DIYはちょっと面倒、[…]
最新の投稿記事(全体)
ワゴンR HYBRID ZX ベルベットダークレッドパール 減衰接着剤の塗布により、走行性能強化も図られる 今回の一部仕様変更では、衝突被害軽減ブレーキ「デュアルセンサーブレーキサポートⅡ」の採用で安[…]
耐久性抜群でスタイリッシュ。便利な開閉式のリアラダー クラフトワークス(Fun Standard株式会社)は、実用性とデザイン性が高い、自動車用アクセサリーを多数リリースしているブランドだ。そのクラフ[…]
クルマの内窓掃除が面倒になる理由はクルマの進化にあった 車内のガラス掃除は、外装洗車に比べて軽視されやすい。しかしフロントガラス内側の汚れは、夜間や逆光時に視界を大きく損なう要因になる。にもかかわらず[…]
タッチパネル時代の宿命、車内の指紋汚れ問題 カーナビやディスプレイは、もはやクルマに欠かせない存在だ。目的地案内はもちろん、エアコン操作や各種設定まで担うようになり、触れる回数は年々増えている。その一[…]
国産初の2シーターミッドシップスポーツをトヨタが発売したことが驚きだった トヨタ「MR2」が発売されたのは1984年です。前年の東京モーターショーで「SV-3」というMRレイアウトの車輌が発表されまし[…]
- 1
- 2












