かつて、バブル景気に湧いた日本では、斬新でユニークなコンセプトの車が多数開発された。その中でも特に目立った、ガルウィングドアを採用した2つの車を紹介しよう。
●文:月刊自家用車編集部 ●出典:『すごいクルマ事典』(内外出版社 刊)
個性も使いにくさも妥協なし!純度100%のスーパーカー
ビートと同様のミッドシップに加えて、イタリアのスーパーカーのようなフォルムとガルウイングドアまで装備した軽スポーツカーがマツダのAZ-1。走りの切れ味ではナンバーワンの軽自動車だった。
マニアにとことん愛された車
ホンダビートの翌年に登場したマツダのAZ-1は、軽自動車なのに本格的な走りを目指したスポーツカーだった。ビートと同様に乗員の後ろに搭載するエンジンは、スズキのアルトワークス用の高性能なDOHCターボ。車高は1mちょっとというレーシングカーのような低さで、サーキットを本気で攻めて走れる性能を備えていた。
ボディは外板を樹脂製とした軽量な構造で、ドアはスーパーカーのようなガルウイングドア。運転席と助手席に人が乗ってしまうと、ハンドバッグひとつ置く場所がないばかりか、乗り降りに苦労するほど実用性が低かったものの、鋭い操縦性と強烈な個性でマニアにはこれ以上ないクルマであった。個性的過ぎて新単当時はそれほど売れませんでしたが、今も残っている中古車は引っ張りだこの人気だ。
軽スポーツカーのAZ-1とビート(BEAT)、スズキのカプチーノ(CAPPUCCINO)は「平成のABCトリオ」とも呼ばれて、景気の良かった時代の象徴になっている。