「素っ気ないスタイル…」「安価なのに圧倒的な高性能」44ヶ月連続ナンバーワンの大ヒット軽自動車は、思わぬ騒動に巻き込まれトップセラーの座から陥落してしまった…。

その高性能とスタイルはミニクーパーにも重ね合わされ、N360は若い世代を中心に人気が爆発した。

ホンダN360(1967年式)主要諸元

つや消し処理された計器盤。

初期型の室内。

エンジンルームの空いたスペースにスペアタイヤが設置されている。

スペアタイヤがエンジンルームに設置されていたため、トランクルームは広く使えた。トランクリッドは軽量のABS樹脂製。

試作のXA170ではV型4気筒という構想もあったが、求めやすい価格と高性能を両立するため、N360には’65年発売のスーパーバイク「ドリームCB450」のエンジンをベースに自動車用に改良したものが積まれた。「初心者にはおすすめできません」と謳われたCB450は最高出力43馬力、0-400m13.9秒を誇った。

初のマイナーチェンジでNⅡへ。初期型モデルとの外観上の差は少なく、フロント中央部のHマークに赤い下地が貼られたことなどが変更点。内装はシートやダッシュパネルの素材が変更されるなどかなり豪華に変わっている。

フロントグリルやボンネットなどの意匠を変更し、NⅡから大きく雰囲気を変えたNⅢ。またミッションは4速フルシンクロとなり、内装も透過光式計器盤の採用や遮音吸音材の追加などでより上級となった。

N360をベースに開発され1970年に発売。しばらくはNⅢと併売され、Nのスペシャリティクーペという立ち位置も担った。スタイルの特徴はガラスハッチを縁取る黒い樹脂部品。そこから「水中メガネ」という愛称で人気者となる。精悍な外観同様、フライトコックピットと呼ぶ内装もNよりスポーティで上級。国産で初めて大型ルームランプ内蔵のオーバーヘッドコンソールも採用された。また前輪ディスクブレーキの採用もZが軽で初めて。前席優先設計とはいえ後席も実用レベル。エンジンは当初Nが誇る空冷式を引き継いだが、1971年のMCでライフに積まれた新世代の水冷式を追加している。