
車のメンテナンスや整備作業を行う際に厄介なのが、固着したナットの存在。無理して外そうとして角がナメてしまい、さらに事態が悪化…なんてことも想定できる。そこで、固くしまったナットの外し方の基本と、それでもダメな場合の「そんな方法があったのか…」と、知らない人からすると目からウロコの最終手段を解説していこう。
●写真/文:オートメカニック編集部
ナットの取り外しの基本を無視すると、トラブルの原因に…
整備作業においてボルトやナットの脱着は避けて通れない基本中の基本の作業。それだけに、ソケットレンチやメガネレンチの使用頻度は必然的に高まる。が、ボルトやナットをただ回すだけと扱いは簡単なだけに、基本をおろそかにしがちだ。
しかし、単純な作業ほど基本が大切になる。ナットの頭を潰してしまったり、うまく緩まないなど、基本を無視したことで無用のトラブルに見舞われることがよくあるからだ。
また、スパナとメガネレンチはボルトやナットを回すという共通の目的をもった工具だから、どちらか一方を持っていればとりあえず脱着することはできる。それゆえ、使い分けなど深く考えずに利用しがち。ところが、両者には一長一短があり、形状の違いから主な用途は異なり、本来は状況に応じて適切に使い分ける必要があるのだ。
たとえば、固く締まっているナットをスパナで緩めた場合、角を乗り越えてなめてしまいがち。このような状況ではメガネレンチを使用するのが原則で、緩んだところでスパナに切り替えるとよい。差し替えが容易なためスピーデイに脱着することができるからだ。
とはいえ、サビや熱で固着してしまった場合、メガネレンチでも簡単には緩まず、無理をすれば角なめてしまうことがある。このような場合、緩め方向にただ力を加えるだけではダメ。それ相応の力の入れ方があるのだ。
そこで今回は、まずスパナとメガネレンチの基本的な扱い方と、固く締まっているナットの緩め方。工具の扱い方の基本から入ることにした。
基本編「固く締まっているナットを取り外す」
コの字形に口先が開いているスパナは構造上、ボルトやナットの頭の6面の内、2面しか保持ができない。このため、ガチッと固く締まっている場合、目一杯力を加えると口先が広がり、回す力は端のほうに移って面から点に近づく。この結果、なめるという現象を引き起こしやすいのだ。
これに対し、6面もしくは6つの角を抱え込むメガネレンチは回す力が均等に分散して、効率よく伝わるため、整備作業ではメガネレンチの使用がメインとなる。
ただし、メガネレンチを使うにしても、固く締まったボルトやナットを外す場合、力の入れ方にコツがあるので要注意!そのコツとは、ハンドル部を叩くように「一撃」で力を加えることにある。瞬間的に力を加えることでネジ嵌合部に衝撃が加わり、その瞬間、固着面が和らいでスッと緩むのだ。
角をなめたとしても、初期の段階なら慌てる必要はない。メガネレンチに切り替えることで、たいてい取り外すことができるからだ。ただし、確実に保持できる面が減少しているため、緩め方向に単純にハンドル部を引くのはご法度。メガネレンチでもなめることがあるので注意。
メガネレンチが外れないよう支えながら、緩め方向にハンドル部を叩いて「一撃」で力を加えるようにすることが肝心!
最後の手段「ナットを割って取り外す! ナットブレーカー」
角をなめてしまったナットは、たとえ外れたとしても使い物にならない。であるならば「壊して外す」という選択肢もあり得る。それを可能とするツールが「ナットブレーカー」だ。
ナットブレーカー ナットスプリッター[トップ工業]
これは、どうしても緩めることができないナットに対する最終手段、「緩めるのではなく割って外すツール」で、これを利用すれば酸化物で固着したり角が崩れてしまっている錆付いたナットも簡単に取り除くことができるのだ。
ナットブレーカーの先端部分。この刃をナットに食い込ませて、割って取り外すための工具だ。
ただし、最終手段であるナットブレーカーも万能ではない。硬度の高いステンレスや熱処理されたナット、末端が広がっていて割刃が届かない傘付きメットなどには使用不可だ。
割刃がナットに食い込んで内周のネジ山面まで達すると「バキッ」という音とともに、真っ二つに割れる。割れたナットは全体に歪みを生じているため、すんなりとは回らない。プライヤーで挟んで回して取り外そう。
割刃を力ずくで食い込ませるため、外れたナットは歪んでいる。もちろん、再使用は不可だ。
取り外したナット。
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