
空気抵抗の減少を狙ったスピンドルシェイプや2段に分かれたノーズ、ボディと同色のビルトインバンパーなど、斬新なデザインでデビューしたMS60型4代目クラウン。デザインばかりではなく高級オーナーカーという位置付けにふさわしい性能&装備を纏った先進的なサルーンであったが、その先進すぎたデザインゆえに、当時の消費者には受け入れられなかった。
●文:月刊自家用車編集部
前輪ディスクブレーキ装備やトレッド拡大で、高速走行に対応
オーナーカー時代に向けて提案したスタイリングが時代を先取りしすぎたのか、世間の無理解と保守性に翻弄されてしまった4代目クラウン(MS60系)。何よりの特徴はそのデザインで、空気抵抗の減少を狙ったスピンドルシェイプは、2段に分かれたノーズやボディと同色のビルトインバンパーなどが新鮮だった。さらにワゴンの側面観など、現代の目にも未来的に映る。
メカニズムも先進的で、いずれもオプションながら、後輪ESC(ABSに相当)/EAT(電子制御AT)/クルーズコントロールなどが採用されている。最高級グレードとしてスーパーサルーンが設定されたのも、この4代目からだった。また最終年度には、折から厳しさを増した排気ガス規制に対応し、一部のグレードに電子制御燃料噴射装置が取り入れられている。
エンジンはすべて6気筒になり、2600ccも追加された。クラウンエイトを例外とすれば、初めて3ナンバー規格となるクラウンで、高度経済成長時代を反映していた。
しかし、多くの消費者にとって見慣れぬデザインが不評を被った結果、ライバルの日産セドリック/グロリアに販売の首位を奪われるなど、トヨタの看板車種としては低迷してしまった。そこで発売2年後の1973年、人気挽回を期してマイナーチェンジを実施。
前後の一体型バンパーをボディとの同色からメッキに変え、グリルも荘重に改めるなどの対策を尽くしたが、いったん根付いた悪評を覆すまでには至らず、けっきょく1974年にわずか4年という現役生活に終止符を打ってしまった。しかし、その先鋭的なデザインの印象は強烈で、今では旧車ファンの間で垂涎の的になっている。
トヨタがこのスピンドルシェイプを世に問うたのは、けっして一瞬の気まぐれによるものではなく、次の時代に向けての真剣な瀬踏みだった。その意図がほのかに垣間見えるのが、1962年のモーターショーに出展されたコンセプトカー・スポーツX。
瀟洒な4座クーペだったが、フロントのコーナー部にスモールライトをはっきり突き出したあたりに、4代目クラウンに通ずるものも感じられる。そんな時間の流れとアイディアの温め方を思うと、スピンドルシェイプが失敗だったのではなく、高級車クラウンに応用したのが意外すぎたということになるだろうか。いろいろな意味で、忘れることのできないクラウンである。
写真ギャラリー
紡錘型(スピンドルシェイプ)は今でも斬新。キャビンと一体感を強調したカプセル型ボティで三角窓が廃止された。
クジラとも称された4代目クラウン。車体下側の丸みを帯びたシェイプがクジラのお腹部分に例えられことが「クジラ」の愛称の由来になっている。突起物を極力排することで実現した安全性の高い面構成や、組み込み式カラードバンパーの採用もこのモデルの特徴になる。
先進的スタイルとなった背景には、日産セドリック&グロリアとの熾烈な販売競争があると言われている。
【主要諸元】
全長×全幅×全高:4680×1690×1420mm ホイールベース:2690mm 重量:1360kg 排気量:1988cc水冷直6OHC 最高出力:110ps/5800rpm 最大トルク:16.0kgm/3800rpm トランスミッション:3速マニュアルコラムシフト 型式:MS60型 ●生産台数:26万7500台
新機軸として(航空機の)コクピットタイプのメーター類/燃料残量ウォーニングランプ/ソフトタッチホーンなどが装備された。
コラムフロントシートは3名がけの6名定員。フロアシフト仕様は2名用の5名定員となる。ファブリック仕様も豪華さが追求されている。また室内もトータルでカラーコーディネートされている。
これからのスタイリングをリードすると謳われたとおりカスタム(ワゴン)のデザインも先進性に富むものだった。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(旧車FAN)
バラードスポーツCR-X(1983年~) MM(マンマキシマム・メカミニマム)思想から生まれた軽量FF2+2スポーツ。スライドレールなしに大きな開口部を誇った電動アウタースライドサンルーフや、低ボンネ[…]
圧倒的な高性能ぶりでライバルを圧倒したN360だが、当時の世評は世知辛くて…… 1967年春にホンダが発売した軽自動車のN360は、レースでの活躍ですでに世界に名を轟かせていた同社の2輪車用をベースと[…]
N360の後継モデル「ライフ」をベースに開発 N360の後継車種として、1971年に登場した「ライフ」は軽乗用車市場で高い人気を得たモデルだった。そのライフのプラットフォームをベースに、軽商用車市場へ[…]
トヨタ マークII/チェイサー/クレスタ[X70] デビュー:1984年8月 ボディカラーは”スーパーホワイト”ほぼ一択”だ。ワインレッドの内装に、柔らかなシート表皮。どこか昭和のスナックを思い起こさ[…]
「トヨタ・2000GT」より先に生まれた「小さなスポーツカー」 「トヨタ・スポーツ800」が発売されたのは1965年です。 それより少し前の1950年代は、戦後からの復興期から徐々に産業が発展しつつあ[…]
最新の関連記事(トヨタ)
防音断熱や車内クーラーなど車中泊仕様の基本装備が充実! RVビッグフットは埼玉県東松山市と北海道函館市に店舗を構えるキャンピングカー専門店で、自社開発のキャンピングカーのラインナップも充実。 バンコン[…]
シエンタ:モデル概要 トヨタ・シエンタは、全長4.3m弱のコンパクトな車体に3列シートを効率的に配置し、多人数乗車を可能にしたモデル。2022年にデビューした現行型は、初代モデルで高く評価されていた“[…]
もともと4WDはレース目的で造り出された駆動システムだった 4WDというとヘビーデューティなジープタイプのクルマを連想するが、ガソリンエンジン世界初の4WDはヒルクライムレースのために造り出されたもの[…]
トヨタ マークII/チェイサー/クレスタ[X70] デビュー:1984年8月 ボディカラーは”スーパーホワイト”ほぼ一択”だ。ワインレッドの内装に、柔らかなシート表皮。どこか昭和のスナックを思い起こさ[…]
コンパクトサイズが生む絶妙な取り回し タウンエースをベースにした「Plaything Ace SP」は、軽キャンピングカーより余裕があり、ハイエースよりもコンパクトという絶妙に使いやすい車両だ。全長4[…]
人気記事ランキング(全体)
ペットと旅をするために生まれた特別な一台 軽キャンパー「愛犬くん」は、オートワンが手掛ける愛犬専用キャンピングカーである。ベース車両にはスズキ・エブリイバンを採用し、ペットと過ごすために必要な装備を標[…]
一見すると、何に使うかよくわからないアイテムだが…。 TikTokを始めとしたSNSでバズった話題のカーグッズ。ショート動画で見ていると、かなり便利そうなので気にはなったいたのだが…。実際のところはど[…]
コンパクトサイズが生む絶妙な取り回し タウンエースをベースにした「Plaything Ace SP」は、軽キャンピングカーより余裕があり、ハイエースよりもコンパクトという絶妙に使いやすい車両だ。全長4[…]
トヨタ マークII/チェイサー/クレスタ[X70] デビュー:1984年8月 ボディカラーは”スーパーホワイト”ほぼ一択”だ。ワインレッドの内装に、柔らかなシート表皮。どこか昭和のスナックを思い起こさ[…]
何かと物騒なこの世の中、低コストで買える安心 車の盗難のニュースを目にするたびに、自分の車も被害に遭わないか心配になってしまう。筆者は高価な車に乗っているわけではないが、防犯対策をしておいて損はないは[…]
最新の投稿記事(全体)
バラードスポーツCR-X(1983年~) MM(マンマキシマム・メカミニマム)思想から生まれた軽量FF2+2スポーツ。スライドレールなしに大きな開口部を誇った電動アウタースライドサンルーフや、低ボンネ[…]
ミラー上部にジャストフィット! 純正パーツのようにハマる高性能デジタルランドメーター 様々なカー用品をリリースするカーメイトから、新たにリリースされた高性能ランドメーターを紹介しよう。このアイテムは、[…]
マツダ独自のハイパワーなPHEVシステムを搭載 美しく躍動感にあふれる魂動デザインと、心を浮き立たせる人馬一体の走りで、一定のファンを獲得したのが、近年のマツダだ。そのマツダが、北米向けに「よりステー[…]
防音断熱や車内クーラーなど車中泊仕様の基本装備が充実! RVビッグフットは埼玉県東松山市と北海道函館市に店舗を構えるキャンピングカー専門店で、自社開発のキャンピングカーのラインナップも充実。 バンコン[…]
シエンタ:モデル概要 トヨタ・シエンタは、全長4.3m弱のコンパクトな車体に3列シートを効率的に配置し、多人数乗車を可能にしたモデル。2022年にデビューした現行型は、初代モデルで高く評価されていた“[…]
- 1
- 2
























