時代遅れのフレーム構造がむしろ「マル」だった! イタリアンデザインが高く評価された、流麗なコンパクトオープン│月刊自家用車WEB - 厳選クルマ情報

時代遅れのフレーム構造がむしろ「マル」だった! イタリアンデザインが高く評価された、流麗なコンパクトオープン

時代遅れのフレーム構造がむしろ「マル」だった! イタリアンデザインが高く評価された、流麗なコンパクトオープン

ダイハツの歴史において、乗用車市場への本格的な参入を飾った一台としても知られているコンパーノ。1963年(昭和38年)に登場したこのクルマは、単なる移動手段を超え、その美しいデザインで多くの人々を魅了したことでも知られている。ここではシリーズの象徴といえるコンパクト4座オープン、スパイダーを中心に魅力を解説したい。

●文:月刊自家用車編集部

1963年にダイハツが初めて世に送り出した乗用車第1号モデル「コンパーノ」。オープンボディのスパイダーは、その2年後に登場。

幌は後部座席後方に収容されているものの、乗車定員4名を確保した4座オープンカーだった。

主要データ(F40K型コンパーノ・スパイダー・1966年式) 
●全長×全幅×全高:3795㎜×1445㎜×1350㎜●ホイールベース:2220㎜●車両重量:790㎏●エンジン(FE型):水冷直列4気筒OHV958㏄●最高出力65PS/6500rpm●最大トルク:7.8㎏-m/4500rpm●最高速度:145㎞/h●0-400m加速:18.5秒( 2人乗車)●燃料消費率:21.0㎞/L●燃料タンク容量:30L●トランスミッション:4速MT●最小回転半径:4.5m●タイヤサイズ:前後6.00-12-4PR●乗車定員:4名 ◎新車当時価格:69万1000円

大阪の商人らしい、「商いのうまさ」で誕生したコンパーノ

コンパーノは、ダイハツが戦前から築き上げてきた商用車メーカーとしての地位から、乗用車市場へと本格的に参入する転機となった記念すべきシリーズモデル 。1963年(昭和38年)に登場したコンパーノは、まず商用バンとして市場に投入され、その後、ワゴン、セダン、そして1965年に流麗なオープンボディのスパイダーを追加。これは、乗用車市場への参入を堅実な手順で進めるというダイハツの戦略によるものと言われている。

コンパーノが誕生する背景には、ダイハツの「商いのうまさ」を外すことができない。もともダイハツは技術者が作った産業機器メーカーとしての色合いが濃かったメーカーだが、戦後、大阪のメーカーらしい商才が開花した。

その具体例といえるのが、ミゼットでの派手な宣伝キャンペーンに始まり、コンパーノでは、イタリアの名門カロッツェリアであるヴィニアーレ社にデザインを依頼するという大胆な戦略をとっている。

これは、単に技術力だけでなく、「ユーザーにわかりやすく魅力を訴える」というダイハツの気風が確立されていた証拠といえるものだ。

当時としても時代遅れだったフレーム構造が、モデルバリエーションを増やせた理由

今回の主役となるコンパーノ・スパイダーは、そのイタリアンデザインによって大きな話題を呼んだが、その美しいオープンボディが実現できたのは、当時としてはすでに時代遅れとされていたフレーム構造を採用していたため。この点は、後発のサニーやカローラといったモノコックボディの車種と比較すると、完成度では劣るとされる要因にもなっているのだが、ボディの載せ替えが比較的容易かつ自由度が高かったため、短期間で多くの派生モデルが発売できている。

多彩なバリエーションモデルの中でもスパイダーは、その美しさと個性で多くの人々の記憶に残る一台であり、また、ベルリーナと呼ばれる2ドアセダンはイギリスへも輸出され、1964年の東京オリンピック聖火コース走破車としても活躍するなど、国内外でその存在感を示している。

1967年にトヨタ自動車と業務提携を結んだ後も、ダイハツはトヨタグループの一員として小型車や軽自動車を製造しながら、クラスを超えた満足を提供する独自の個性を確立してきたが、コンパーノは、まさにその個性を打ち出す先駆けとなったクルマであるのだ。

スパイダーより2年早く1963年に発売されたベルリーナと呼ばれた2ドアセダン(4ドアセダンは1965年に追加)。イギリスへも輸出された。写真は東京オリンピック聖火コース走破車。

単なる移動手段としてではなく、「デザイン」で勝負できた稀有なクルマ

コンパーノ・スパイダーの最も注目すべき点は、イタリアのカロッツェリア、ヴィニアーレ社による流麗なデザインを採用したこと。当時の日本の自動車メーカーとしては異例の試みであり、これによりコンパーノは単なる移動手段ではなく、「デザインで魅せる車」として大きな話題を集めたことでも有名だ。

このデザインへのこだわりは、ダイハツが技術力だけでなく、商品力やブランドイメージを重視していたことの表れであり、この戦略は、その後のダイハツの「わかりやすい商品力で勝負する」という企業姿勢の確立に貢献したともいえる。

その優雅な外観だけでなく、細部にもこだわりを見ることが可能で、内装には木目パネルに丸型メーターが美しく組み込まれ、ボールナット式ステアリングはロックトゥロック式を採用。シートは合成皮革のデラクール素材を用いた、当時の最先端をいくもので、快適な乗り心地も売りにしている。特筆すべきは、幌の着脱がワンタッチで、走行中でも女性でも簡単に操作できるとカタログに謳われていたこと。これは、当時のユーザーにとって非常に魅力的なポイントといわれている。

木目パネルに丸型メーターが組み込まれる。ボールナット式ステアリングは、ロックtoロック3.2回転。

シートは合成皮革のデラクール素材。幌は後席後ろに格納されていて、カタログには「幌の脱着はワンタッチ、走行中でも女性でも軽くOK 」とある。

流麗なデザインばかりではなく、クルマとしての実力も優秀だった

エンジンは水冷直列4気筒OHV958ccのFE型を搭載し、最高出力65ps/6500rpm、最大トルク7.8kg-m/4500rpmを発揮。最高速度は145km/hに達し、0-400m加速は2人乗車時で18.5秒という俊足も自慢にしていた。燃料消費率も21.0km/Lと、当時の車両としては優れた燃費性能が与えられている。燃料タンク容量は30Lで、トランスミッションは4速MTを採用。最小回転半径は4.5mと小回りが利き、日常使いにも適していた。

水冷直列4気筒OHV958㏄のFE型エンジン。ツインキャブを装着することで、最高出力65psを発揮。デザインばかりではなく、動力性能、燃費性能ともに十分高かった。

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