
トヨタの誇る大衆小型車「カローラ」は、初代が1966年に誕生してから現在の12代目に至るまで、途中日本での発売が途切れた時期はあるものの、60年の長きにわたって販売され続けている長寿モデルです。旧車界隈の傾向としては、やはり憧れの対象になるスポーツ系モデルやGT、あるいはホットモデルなどに人気が集まる傾向がありますので、大衆小型車である「カローラ」は、正直あまりパッとしないため、人気があるモデルはけっして多くありません。しかし、今回紹介する「E70系 カローラ」は、とある理由から走り系の旧車ファンに濃い支持を受けているんです。その魅力のポイントについて紹介していきましょう。
●文:月刊自家用車編集部(往機人)
最後のFRレイアウトとなった4代目のカローラ
「カローラ」として4代目になる「E70系」シリーズは1979年に発売されました。
初代の時からニーズに細かく合わせて、セダン/クーペ/バン/ワゴンと多くのボディタイプが用意されていましたが、この「E70系」シリーズでは、8年のモデルライフの中で、2ドア&4ドアセダン/2ドアハードトップ/2ドア&3ドアクーペ/3ドアリフトバック/3ドア&5ドアバン/3ドア&5ドアワゴンと、10種ものバリエーションが展開されていました。
ここに姉妹車の「スプリンター」が加わりますので、同クラスの選択肢は14種以上にも及びます。まさに、高度成長期を経て経済も文化も豊かになり、いろいろなものが市場にあふれ出した時期を象徴しているようです。
搭載されるエンジンはすべて直列4気筒です。
構成は、先代までの主力だった1.3Lの「4K型」と、1.6Lツインカムの「2T-G型」、1.6Lの「12T型」に加えて、「12T型」と1.8Lに拡大した「13T型」と1.8Lディーゼルの「1C型」、そして新設計の1.5L「3A型」が加えられています。先代からの静粛性や安定した出力に加え、燃費性能も向上された充実のラインナップでした。
ちなみに2ドア&3ドアクーペの中で1.6Lツインカムエンジン「2T-G型」搭載車は、2代目から引き続いて「レビン」のサブネームが与えられました。
外観では、時代の求めに応じて空力特性の向上に重きを置いて煮詰められたそうです。
その結果、丸みを帯びていた先代とはテイストを大きく変えて、パキッとした直線基調が印象的なシャープなデザインをまとうようになりました。
セダン/クーペ/ワゴンと、ボディタイプごとにデザインの最適化がおこなわれ、今見ても、とてもバランスに優れたまとまりが感じられるグッドデザインだと思います。
足まわりは、フロントがマクファーソンストラット方式、リヤは5リンクリジット方式を採用しています。
走り系の旧車ファンにヒットする、オンリーワンの魅力あり
大人気86系のパワートレーン&足まわりが移植可能
さてこの「E70系 カローラ」が走り好きの旧車ファンに支持されているポイントは、ずばりその足まわりの構成にあります。
上記のフロントがマクファーソンストラット方式、リヤは5リンクリジット方式という構成を見てピンと来た人はかなりのマニアでしょう。
実はこの「E70系 カローラ」の足まわりは、あの「AE86系 レビン/トレノ」とほぼ共通の構成なんです。
「AE86系 レビン/トレノ」といえば、今活躍している多くのレーシングドライバーが若い頃に走りを学んだという車種です。
「4A-G型」の高性能なツインカムエンジンが搭載され、トランスミッションや足まわり、ブレーキはサーキット走行にもそこそこ耐える仕様となっています。
そのエンジンやミッションなどが丸々「カローラ」に移植できてしまうのです。
さらには、「AE86系 レビン/トレノ」には昔から多くのチューニングパーツがリリースされていて、走り仕様の車輌に仕上げるにはもってこいという状況です。
その豊富なパーツたちが活用できるため、落ち着いた見た目に反してかなり本格的な走り仕様に仕立てることができてしまいます。
まさに「羊の皮を被った狼」です。「AE86系」よりも軽量なボディと相まって、山道やサーキットは元より、ドリフト仕様のベース車としても密かな人気を集めています。
ちなみに今現在の中古車市場では、当時100万台以上も売り上げた車種のハズですがタマ数は少なく、そのためか価格も200万円前後とそれなりに高値が付いています。
なかなか気軽に購入できるとは言えませんが、唯一無二の魅力を秘めたクルマなので、機会に巡り会ったら、ぜひそのハンドルを握って走りを体験してみてください。
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