
自動車サプライヤーであるアイシンがメディア向けに「パワートレイン技術説明会」を実施した。どんな内容であったのかを、かいつまんで紹介しよう。
●文:鈴木ケンイチ
パワートレーンは、アイシンの売上の約6割を占める中核事業
アイシンは、トヨタなどに部品を納入する、いわゆるティア1と呼ばれるサプライヤーだ。取り扱う製品はパワートレーンをはじめ、サンルーフなどの車体関係、ブレーキなどの走行安全系、カーナビやヒートポンプなど多岐にわたる。近年では年間売上が5兆円にも迫ろうという規模であるが、そのうち6割近くがトランスミッションなどのパワートレーン関連となる。
そのパワートレーンの開発を代表するアイシンのパワートレイン製品本部長・糟谷悟氏は、「アイシンは自動車メーカーに最も近い自動車部品メーカーとして、車両目線での開発・評価を重視しています」と説明する。
最初に登壇したアイシン製品開発センターパワートレイン製品本部本部長の糟谷悟氏。
実際にアイシンが取引する自動車メーカーは幅広く、日本だけでなく、欧米のメーカーにも数多くの製品を納品している。また、部品メーカーでありながらも、世界3か所に大規模なテストコースを擁するものユニークな点だろう。そして、生産技術でいえば、精密加工と鋳造、そして少量多品種組み立てを得意とすると糟谷氏は言う。
数多くの自動車メーカーと取引があり、自前のテストコースを持っていることが、車両目線での開発・評価を行える理由となり、そこが強みとなるというわけだ。
アイシンのコア技術として、トランスアクスル技術のケースとギア、モーター技術のモーターが展示
アイシンのコア技術として、トランスアクスル技術のケースとギア、モーター技術のモーターが展示された。
パワートレーンの最初の製品は、1961年に発売した2速半自動AT「トヨグライド」
パワートレーンの歴史は古く、最初の製品は1961年にトヨタから受注した2速半自動AT「トヨグライド」に始まる。
そして、糟谷氏は、「このトヨグライドで、非常に多くのことを学んだ」と言う。
具体的には、トヨグライドはアメリカで不具合の問題を発生させ、アイシンに品質の重要さを学ばせたというのだ。また、米国ボルグワーナー社の技術特許に抵触するという問題も発生した。
しかし、この問題解決を契機に、1969年にアイシンとボルグワーナー社は合弁会社アイシン・ワーナー社(後のアイシン・エイ・ダブリュ~現在のアイシン)を設立。その合弁会社が、現在のアイシンのベースになっていると考えれば、いかに最初に製品となるトヨグライドが、アイシンにとって重要かが分かるだろう。
1972年から生産がスタートしたFR用3速AT。ボルグワーナー社との共同開発で、トヨタ「クラウン」「コロナ」だけでなく、英国生産のボルボ「244」にも搭載された。
そんな1960年代の技術導入の時代を経て、アイシンは「FF化とグローバル展開」の1980年代、「フルラインナップ化」の2000年代、「本格電動化」の2010年代を経て、現在に至る。
2024年4月には、パワートレーンの累計生産台数2億台を突破している。また、電動化でいえば、自動車部品メーカー初となる20014年のフォード「エスケープ」用2モーター・ハイブリッドにはじまり、世界初のFF用1モーターPHEVユニット、2022年の世界初のFR用1モーター・ハイブリッドやe-Axleなどを経て、2025年に電動ユニット累計生産台数1000万台を達成。ハイブリッドなどの電動化もアイシンの重要な柱となっている。
2002年から生産されたFF用6速AT。アウディ「TT」をはじめ、プジョー「308」など、多くの欧州車に搭載されている。
自動車部品メーカーとして世界初となる2モーター・ハイブリッド。フォード「エスケープ」用として量産された。アイシン独自開発のスプリット式ハイブリッドだ。
第5世代となるTHS(FF用2モーター・ハイブリッド)もアイシンが生産している。2022年生産開始で、トヨタ「プリウス」「カローラ」、レクサス「LBX」に搭載される。
電動化のアプローチは、1980年からスタート
続いては、PTシステム製品企画部部長の須山大樹氏がアイシンの電動化の歴史を説明した。
アイシンの電動化の歴史は意外古く、研究開発は1980年代にスタートしていたという。
1993年には東京都公用車向けのEV「マジェスタ」のダブルモーターシステムをはじめ、2000年にはアラコ(現・トヨタ車体)の「エブリデーコムス」のホイールモーター、トヨタの「Eコム」もアイシンが担当したという。そうした助走期間を経て、2004年のフォード向けの2モーター・ハイブリッドという量産が始まったという。
電動化の歴史などをプレゼンした製品開発センターパワートレイン製品本部PTシステム製品企画部長の須山大樹氏。
現在のアイシンの電動化ラインナップは、非常に広いものとなる。EVユニットでいえば、スモールクラスは、スズキの「eVITARA」向けがあり、ミディアムクラスは「bZ4X」向けを用意する。
スズキが発売するEV「eVITARA」の電動パワートレインe-Axleは、アイシンのインド工場で生産される
スズキが発売するEV「eVITARA」の電動パワートレインe-Axleは、アイシンのインド工場で生産される。アイシンのe-Axle海外生産としては初となる。
ハイブリッドは、スモール~ミディアム向けに、2モーターのスプリット式と2モーターのシリーズパラレル式を用意。ラージ~プレミアム向けには、FF用の1モーター+多段AT、FR用としての2モーター・スプリット式と1モーター+多段AT、そして1モーターPHEV/HEVがある。
アイシンがタイで生産するFF2モーター・ハイブリッド。三菱「エクスフォース」に搭載される。アイシンのハイブリッド海外生産としての初めてとなる。
2023年より生産開始されたFF用1モーター・ハイブリッド。「クラウンRS」やレクサス「RX」「LM」などに搭載されている。
FR用1モーター・ハイブリッド。ピックアップトラックなどの大型モデル用であり「タンドラ」や「セコイア」、レクサス「LX」などに搭載される。
そうしたアイシンの電動化製品を支えるのが、トランスアクスル技術とモーター技術、そしてシステム化/パッケージ化技術であるという。特に重視しているのが「車両目線」であり、多様な車両キャラクターにあわせた耐久性や性能を製品開発に落とし込むことができるのがアイシンの強みとも語ってくれた。
アイシンの第1世代となるe-Axle。2022年生産開始で、トヨタ「bZ4X」、スバル「ソルテラ」、レクサス「RZ」に搭載されている。
プレゼンの最後では、電動化ユニットの先行技術開発「機能統合電動ユニット」が紹介された。
これはEV用ユニットとして、体格を従来の2分の1を目指すというのだ。また、コンセプトモデルとして9つの機能(減速機/モーター/インバーター/DCDCコンバーター/車載充電器/ACインバーター/統合ECU/電力分配器/熱マネデバイス)を統合する、いわゆる9in1の電動ユニットを披露してくれた。
9つの機能を統合する、次世代「機能統合電動ユニット」は、2030年頃の実用化を目指す
アイシンの次世代コンセプト「機能統合電動ユニット」。9つの機能を統合することで、専有スペースを60%減、主要部品点数30%減、質量40%減を目標とする。2030年頃の実用化を目指す。
「アイシンは、これらの技術を通して、“移動に感動を、未来に笑顔を”を実現し、モビリティの発展に貢献していきたいと考えております」と須山氏はプレゼンを締めくくった。
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