
最近、フロントガラスの右上に貼られた車検ステッカーをよく見かけるようになった。以前はルームミラーの裏側、つまり中央付近が一般的だったはずだが、今では右ハンドル車なら右上が“正しい位置”とされている。この変化の背景には、国が進める「無車検運行防止」の方針がある。もしステッカーを貼らずに走行すると、実は高額な罰則が待っていることを知っているだろうか。
●文:月刊自家用車編集部
車検ステッカーは「保安基準適合」の証
クルマのフロントガラスに貼られている四角いステッカー。正式名称を「検査標章」といい、車検を通過した車両に交付される“保安基準適合”の証だ。車検を終えた際に交付される「自動車検査証」とセットで発行され、このステッカーを貼ることで「この車は車検に合格している」という事実を外部からも確認できる仕組みになっている。
一見するとただの紙片のようだが、車両の安全管理を可視化するうえで非常に重要な存在だ。車検が切れている車両を一目で確認できることから、道路上の監視や取り締まりにも直結している。
以前は“ルームミラー裏”が定番の貼り位置だった
かつては車検ステッカーといえば、ルームミラーの裏側、つまりフロントガラス中央の上部に貼るのが当たり前だった。ドライバーの視界を妨げず、かつ外からも確認しやすいという理由で、長らくその位置が一般的とされてきた。
ところが近年、右上(運転席側)に貼られたクルマが急増している。新車登録車や車検を通したばかりの車両を見ると、多くが右上に移動しているのがわかる。見慣れた位置と違うため違和感を覚える人も多いが、これには明確な理由がある。
国交省が定めた“新ルール”とは
2023年7月、国土交通省は車検ステッカーの貼付位置を明確に変更した。従来の「前方から見やすい位置」という曖昧な表現を、「前方かつ運転者席から見やすい位置」と定義し直したのだ。
右ハンドル車なら、運転者側=フロント右上に張り付ける。「黒セラミック」と呼ばれる黒いドット部分やブルーガラスなどの日除け部分は外から認識しづらいため避けて貼ったほうがいいだろう。
この改正の狙いは、無車検運行を防ぐことにある。中央に貼ってしまうと、ドライバー自身が車検の有効期限を確認しづらく、うっかり期限を過ぎて走行してしまうケースがあった。実際、車検切れで摘発されるドライバーの多くが「うっかり忘れていた」と答えている。
つまり新ルールは、ドライバーがいつでも自分の目で車検有効期限を確認できるようにするための仕組みなのだ。
「運転席から見やすい」だけでは不十分
新基準では、「運転席から見やすい位置」に加えて、「車両中心から可能な限り遠い位置」という条件が追加された。単に運転席側であればどこでもよいというわけではない。
2023年7月から車検ステッカーの貼り付け位置の規定がより細かくなったので注意が必要。
たとえば、中央寄りのミラー裏に貼るのは、もはや違反に近い扱いになる。右ハンドル車であれば右上、左ハンドル車であれば左上が原則だ。これはステッカーが視界を妨げず、なおかつドライバーがすぐ確認できるという実用面も考慮されている。
ただし、車種によってはサンバイザーやルームミラーの位置関係などにより、右上に貼ると視界の妨げになることもある。その場合は例外的に、運転者の視野を遮らない範囲で「前方かつ見やすい位置」に貼ることが認められている。
なぜ貼る位置を変える必要があったのか
変更の背景には、車検切れで走行する「無車検運行」の多発がある。国交省によると、毎年数千件の摘発が報告されており、その多くが“うっかり失効”によるものだという。
特に最近はオンライン手続きや電子車検証の導入により、紙の書類を目にする機会が減ったことで、車検の期限を忘れてしまうケースが増えていた。ステッカーを運転席から確認できる位置に貼ることで、ドライバー自身の意識を高める狙いがある。
つまりこの変更は単なるルール改正ではなく、事故や違反を未然に防ぐための「注意喚起」の役割も担っている。
貼らないまま走行すると“重い罰則”が待っている
もし車検ステッカーを貼らないまま走行した場合、それは道路運送車両法第66条違反となる。罰則は非常に重く、同法第109条9項により「50万円以下の罰金」が科せられる可能性がある。
車検を通したにもかかわらず、うっかりステッカーを貼り忘れただけでも違反とみなされる点には注意が必要だ。特に業務用車両などでステッカーを剥がしたまま放置しているケースは意外と多い。
車検を終えたら、その日のうちに指定位置へ貼り付けることが大切だ。貼付作業を整備工場に依頼しても構わないが、最終的な責任は車の使用者にある。
ステッカーの意味を改めて考える
車検ステッカーは単なる「期限の目印」ではなく、社会全体の安全を守るための管理ツールでもある。警察や検査機関は、ステッカーの有効期限や外観で車検の有無を即座に判断できる。もし貼付位置が不正確だったり、汚れて判別できなかったりすると、取り締まりの妨げになるだけでなく、事故リスクの高い無車検車両を見逃すことにもつながる。
小さな紙片のように見えても、道路交通の秩序を支える重要な仕組みのひとつなのだ。
車検切れを防ぐためにできること
車検ステッカーの位置変更によって、ドライバー自身が有効期限を意識しやすくなったとはいえ、日常的に確認する習慣を持つことが重要だ。スマホのカレンダーに車検満了日を登録する、整備工場の点検記録簿を見返すなど、ちょっとした工夫で「うっかり失効」を防ぐことができる。
また、車検満了日が近づくと、保険会社やディーラーから通知が届くケースもある。それを放置せず、早めの予約・整備を行うことが安全への第一歩になる。
新ルールを正しく理解して安全運転を
今回の車検ステッカー貼付位置の変更は、一見すると小さなルール改正に思えるが、その背景には「ドライバーの意識改革」という大きな目的がある。ルールを守ることは単に罰則を避けるためではなく、道路全体の安全を維持するための基本だ。
青信号で発進するように、車検を終えたらステッカーを正しい場所に貼る。それは当たり前の行動だが、そこにこそ交通社会の秩序が宿っている。
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