
高速道路での渋滞は、ドライバーにとって避けて通れないストレス要因だ。少しでも早く進みたい一心で車線を頻繁に変える人も多いが、それが本当に効果的とは限らない。むしろ、焦りが事故リスクを高める結果にもつながりかねない。では、渋滞時に最もスムーズに進む「正解の車線」とはどこなのか。多くの人が誤解している“速い車線の真実”を、交通の流れの仕組みから考えてみたい。
●文:月刊自家用車編集部
渋滞が避けられない高速道路、その中でも「進みやすい車線」は存在するのだろうか。
長距離ドライブや週末の外出などで高速道路を利用すると、避けて通れないのが渋滞だ。交通量が多い時間帯や事故、工事などによって、あっという間にノロノロ運転が始まり、思うように進まなくなる。そんなとき、少しでも速く前へ進みたいという心理が働くのは当然のことだろう。だが、その焦りが判断を誤らせることも多い。
渋滞のイメージ画像。
特に渋滞時、多くのドライバーが「追い越し車線の方が速い」と考えて右側へと車線変更していく。しかし、その判断は必ずしも正しくない。実際には、最も流れが良いのは意外にも「左側の走行車線」であることが多いのだ。
「右の追い越し車線が速い」は錯覚にすぎない
多くの人が右車線に速さを感じる理由は、心理的な「錯覚」によるものだ。普段の走行時、左車線には大型トラックやゆっくり走る車が多い印象があり、右車線=速いというイメージが定着している。そのため、渋滞に遭遇すると自然と右側に移ろうとする。しかし、渋滞時の交通流は通常走行とは全く異なる。
「右の追い越し車線が速い」は錯覚にすぎない
右車線には「速く進みたい」という意識を持つドライバーが集中しやすい。その結果、車間距離が詰まり、ブレーキの連鎖が起きやすくなる。さらに、頻繁な車線変更によって交通の流れは断続的に途切れ、結果として右車線全体の速度が低下してしまうのだ。
左側の走行車線こそ、意外とスムーズに流れる理由
一方、左側の第一走行車線は、心理的に「遅い車が集まる」と思われがちだが、渋滞時にはむしろ安定した流れを維持しやすい。理由のひとつは、車線変更による影響が少ない点にある。右側ほど頻繁に割り込みが発生しないため、ペースの乱れが起こりにくいのだ。
できる限りスムーズに流れる車線を走りたい。
さらに、ドライバーの多くが「左車線は遅い」と避ける傾向にあるため、結果的に交通密度が右よりも薄くなり、相対的に流れが良くなる。もちろん、サービスエリアやインターチェンジ付近では合流による一時的な滞りが発生することもあるが、全体的には安定して進める確率が高い。
「早く進みたい心理」が逆に渋滞を悪化させる
渋滞の現場では、「右車線が動いた」と感じるとすぐに移動したくなる心理が働く。これを繰り返すと、車線間のバランスが崩れ、さらに混雑が悪化するという悪循環に陥る。交通流の研究でも、頻繁な車線変更が渋滞を深刻化させる要因のひとつとされている。
渋滞のイメージ画像。
また、右車線に集まる車は追い越し意識が高く、加減速の幅も大きい。これが後続車に波及してブレーキの連鎖、いわゆる“渋滞の波”を発生させる。結果として、右車線は「速そうで遅い」状態に陥るのだ。
車線変更を繰り返すほど、疲労とリスクは増す
車線を変えるたびに、ドライバーは後方確認とタイミングの判断を強いられる。これを繰り返すことで精神的な疲労が蓄積し、注意力が散漫になる。しかも、渋滞時は車間距離が短く、わずかなミスで接触事故に発展するリスクも高い。
少しでも隙間を見つけたら割り込む…なんてことは避けたい。
実際、交通事故の多くは「ちょっとした車線変更」から発生している。前に進みたいという焦りが、結果として時間を無駄にし、安全も犠牲にすることになる。むやみに動くより、一つの車線をキープして淡々と進む方が、体にもクルマにも優しい選択だ。
渋滞中の「ジグザグ走行」は燃費にも悪影響
車線変更を繰り返すと、加減速の回数も増える。エンジンに負荷がかかるだけでなく、燃料消費も大きくなるため、渋滞時のジグザグ走行は燃費を悪化させる要因となる。特に近年はガソリン価格が高止まりしており、無駄な燃料消費は避けたいところだ。
ジグザグ走行は危険なだけでなく燃費にも影響。
また、AT車では頻繁な加減速によってトランスミッションやブレーキにも負担がかかる。短期的には数分の差しか生まれず、長期的には車両へのダメージが残る。経済的にも、車線を固定して走る方が賢明と言えるだろう。
渋滞を乗り切るコツは「キープレフト」と心の余裕
どの車線を選ぶかよりも、重要なのは「焦らないこと」だ。渋滞は避けられないものであり、イライラしても状況は変わらない。むしろ、落ち着いて左車線をキープしながら一定のペースで走ることが、最も効率的な方法だといえる。
もちろん、合流地点や出口付近では一時的に流れが滞ることもあるが、全体を見れば左側を維持するほうが安定している。焦って右へ左へと動くより、渋滞が解消するまで淡々と待つ方が結果的に早く目的地へ到着することも多い。
渋滞は「時間との戦い」ではなく「心の戦い」
結局のところ、渋滞をどう受け止めるかで運転の質は大きく変わる。無駄な車線変更を繰り返すドライバーは、時間を短縮しているつもりで、実際は自分を疲弊させているにすぎない。ドライブの目的が「移動」だけでなく「快適な時間」であるなら、焦りを手放すことも運転の技術のひとつだ。
心のゆとりは非常に大事なことだ。
渋滞にハマったときこそ、音楽を聴きながら深呼吸し、周囲の動きを俯瞰してみる余裕を持ちたい。車線選びに正解はあるが、それ以上に大切なのは、心の余裕を保つことに尽きる。
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