
トヨタが水素エンジンの挑戦をさらに前へ進めてきた。11月15日〜16日に開催される「ENEOS スーパー耐久シリーズ 2025 最終戦」に合わせ、液体水素を使うGRカローラの最新仕様と、新たに燃料タンクへ超電導モーターを組み込む取り組みが発表された。レースという現場で技術を実証しながら、次のステップへとつなげる姿勢がより明確になってきた。
●文:月刊自家用車編集部 ●写真:トヨタ自動車株式会社
水素エンジンの熟成が進む
富士スピードウェイを走る「#32 TGRR GR Corolla H2 concept」液体水素エンジンGRカローラ。
エントリーされるGR Corolla H2 conceptは、春の富士24時間レースで得た手応えをもとに細部が見直されている。新しい充填バルブによる軽量化、燃焼方式を切り替える制御の確認、そして液体水素をエンジンへ送り出す昇圧ポンプの信頼性向上など、ひとつずつ積み上げてきた内容が整理された形だ。
特にポンプは24時間耐久レースで交換せず完走しており、連続運転の負荷に耐える一定のレベルまで来たことがうかがえる。さらなるレベルアップのために、24時間耐久レース以降も「ポンプ」の昇圧性能と耐久性を確認するテスト走行を繰り返し、今回のレースでは最大出力での連続走行に挑戦する。今回の最終戦では、対策を行った上でどこまで安定した走りを示せるかが注目点になる。
超電導モーターでタンクの効率を高める
今回の超伝導モーターの採用は、液体水素が持つ温度環境と親和性が高い超電導技術を活用することで、液体水素活用の可能性をさらに広げるという意味を持っている。使用される液体水素特有のマイナス253℃の温度環境は、特定の物質を極低温に冷やすと電気抵抗がゼロになるという超電導にとって適した温度帯であり、液体水素車両と超電導技術の親和性を最大限活かすことで、水素エンジン車の可能性を大きく広げるという。
今回の発表で目を引くのが、液体水素の極低温を利用し、燃料タンク内に超電導モーターを組み込む新しい取り組みだ。マイナス253度という環境がそのまま超電導に適しており、スペースを作り出すことでタンク容量を現状の220Lから300Lへと1.3倍以上へ拡大したという。
容量が増えれば航続距離が伸び、モーターのタンク内に超伝導モーターとポンプユニットを組み込むことで、軽量化と低重心化も達成。さらに液体水素の気化(ボイルオフ)を抑える効果も期待され、燃料の扱いやすさや効率向上にも寄与するという。水素を燃料とする車両ではタンクが最も重要な部分のひとつだが、その根幹に踏み込んだ技術が実際の走行段階に入ったことは大きな意味を持つ。
北米仕様のトヨタ車3台を展示
トヨタカムリ北米仕様2026モデル
トヨタハイランダーハイブリッド北米仕様2026モデル
トヨタタンドラi-FORCE MAX北米仕様2026モデル
最終戦の会場となる富士スピードウェイでは技術紹介だけでなく、クルマ文化を感じられる展示も行われる。一般社団法人 日本自動車会議所が主催するNASCAR走行などの日米自動車文化交流イベントと連動して、アメリカで生産され販売されているトヨタブランドのカムリ、ハイランダー、タンドラの3台が並び、日本では見られない仕様に触れられる機会になる。レースの合間に普段と違うトヨタの側面を知る時間として楽しめる内容だ。11/15(土)~16(日)の両日、富士スピードウェイのイベント広場で展示される。
技術の実証、ファンへの発信、文化展示という複数の取り組みが重なる今回の最終戦からは、環境負荷を減らすだけではなく、新しい価値をつくり出すトヨタの姿勢が伝わってくる。
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