
75年にわたるランドクルーザーの歴史に、また新たな一歩が刻まれた。2021年にランドクルーザーの「象徴」として登場したフラッグシップ、300シリーズに、ランクルとして国内初となるハイブリッドモデルが導入された。常に最新技術を投入し、本格クロカンから高級志向まで幅広いニーズに応え、どんな道でも運転しやすく疲れにくいクルマを目指す300シリーズとして、この進化は大きな意味を持つ。今回、注目のハイブリッドモデルにオフロードで試乗する機会に恵まれた。
●文:まるも亜希子 ●写真:澤田和久
なぜトヨタはTHSではなく「1モーターパラレル」を選んだのか?
新たに追加されたガソリンハイブリッドモデルは、3.5LのV6ガソリンツインターボエンジン「V35A-FTS型」にパラレルハイブリッドシステムという組み合わせ。トランスミッションはDirect Shift-10ATとなっている。
エンジン単体の最高出力は300kW/5200rpm、最大トルクは650Nm/2000-3600rpmだが、さらにモーターの最高出力40kW、最大トルク290Nmがプラスされ、トータルシステムとしての最高出力は336kW、最大トルクは790Nmになる。
気になる燃費は9.4km/L(WLTCモード)と、3.3Lディーゼルターボモデルの9.7km/L(WLTCモード)よりもやや下回っているが、それにはランクルらしい理由があった。
というのは、このランドクルーザー300シリーズに搭載されるハイブリッドシステムは、これまでプリウスをはじめとして多くのトヨタのハイブリッドモデルに搭載されてきた2モーターのTHS(シリーズパラレル)とは異なり、ランドクルーザーが継承してきた信頼性、耐久性、悪路走破性に耐えうる、命を守れるハイブリッドといえるもの。
エンジンが主体でモーターがアシストをする、1モーターのパラレル方式を採用している。
このハイブリッドシステムは、さまざまな路面での応答性に優れるほか、オンロードでは伸びのある上質な加速を実現。オフロードでの高いコントロール性も両立しているという。大トルクを発生するV6ツインターボのポテンシャルをベースに、瞬時に立ち上がるモーターの駆動力を緻密に制御することで、どんなシチュエーションでもドライバーの意図に忠実な挙動をもたらしてくれるのだ。さっそく、オフロードへと走り出してみることにする。
主要諸元(GR SPORT 7人乗り【ハイブリッド】)
●全長×全幅×全高:4965×1990×1935mm ●ホイールベース:2850mm ●車両重量:2690kg ●乗車定員:7名 ●パワーユニット:3444ccV型6気筒ターボ(408ps/66.3kg-m)+モーター(40kW/290Nm) ●トランスミッション:10速AT ●駆動方式:4WD ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)ベンチレーテッドディスク(R) ●サスペンション:ダブルウィッシュボーン式独立懸架コイルスプリング(F)/トレーリングリンク車軸式コイルスプリング(R) ●タイヤ:265/65R18 ●価格:1020万300円
3.5L V6ツインターボ(V35A-FTS)に1モーターを組み合わせたハイブリッドユニット。エンジン単体で300kW/650Nmを発揮し、システム全体では336kW/790Nmもの圧倒的なパワーを誇る。
見晴らしのいいクラウンに乗っているような「上質感」があり
発進から湧き出るようなトルク感で悠々と進んでいく感覚は、以前に同じオフロードで試乗したディーゼルモデルと変わらない印象だが、圧倒的に静かなことに驚かされる。
路面からのインフォメーションもほどよいダイレクト感で伝わり、まるで見晴らしのいいクラウンに乗っているような上質感に加え、ラグジュアリーな空間にいる感覚はディーゼルモデル以上ではないだろうか。
車両重量は2690kgとかなりのヘビー級となっているが、乗り心地に関してはそれがいい方向に作用していると感じる。
果たして急坂の上り下りや、モーグルなどではどうなるのかと心配していたが、まず急坂の下りでは「クロールコントロール」のダイヤルで5段階の速度のうち中間に設定してみる。
すると傾斜に合わせた極低速を自動でキープしてくれるため、ペダル操作をすることなくステアリング操作に集中でき、まったく不安なく下ることができる。この感覚は従来モデルと同様だ。
電子制御ステアリングは凹凸の大きな路面でもキックバックが少なく、ふいにハンドルを持っていかれることがないところも安心できるポイント。
このあたりの最新機能の恩恵はロックセクションでも効果を実感できるが、ここではさらにマルチテレインセレクトをROCKに合わせてみることに。すると床下の様子がディスプレイに映る「アンダーフロアビュー」が表示されるので、路面をクリアに確認しながら進めるところが心強い。
雨でぬかるんだ路面や激しい凹凸も、GR SPORT専用サスペンションと四輪の駆動力制御で力強く捉えて突破。車重を感じさせない軽快さと、ランクルらしい圧倒的な頼もしさを体感させてくれる。
岩場でも車内はシーンと静まり返る。こんなオフロード走行は初めての体験
そして驚いたのは、モーターのおかげで車内がシーンと静まりかえったまま、スイスイと岩を超えていくという不思議な感覚。こんなオフロード走行は初めての経験だ。
さらにモーグルでは、2850mmとなるロングホイールベースに加え、GR SPORT専用にチューニングされているサスペンションも威力を発揮する。
試乗日の朝まで雨が続き、当日も時折小雨が降るような天気でぬかるんだ路面も多かったのだが、四輪でしっかりと路面を捉えて抜けていける頼もしさはさすがランクルだ。
そして最後の傾斜30度近い急坂登りでは、さすがに重さを感じるかと思いきや、まったく危うさを感じさせず一気に登頂できてしまう。こんなにラクにオフロードを走れるクルマはやはりこの300をおいてほかにないと、あらためて実感した試乗となったのだ。
四輪が大きく上下するハードなモーグル走行時も、1モーターパラレルハイブリッドによる力強い駆動と静粛性が光る。過酷な路面状況を感じさせない車内の落ち着きとコントロール性の高さが際立つ。
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