
キャンピングカーの理想を突き詰めていくと、どうしても妥協せざるを得ない部分が出てくる。サイズ、装備、快適性、価格——それぞれに優先順位をつけながら、自分たちに最適な1台を見極めなければならない。そんな中で、明確な目的に沿って設計された一台がある。それがOMC(オーエムシー)が製作する「銀河」だ。
●文:月刊自家用車編集部
ベッド展開不要の快適な生活空間
全長5380mm、全幅1880mm、全高2380mmという大型バンコンでありながら、その中身は大人二人、あるいは二人+ペットでの旅にフォーカスされている。7名乗車・大人3名就寝という基本スペックを持ちながら、実際には「ふたり旅」に必要な快適性と機能性を徹底的に盛り込んだパッケージとなっている。
この銀河のもっとも特徴的なレイアウトは、常設の二段ベッドと、それに隣接する二人用ダイネットだ。キャンピングカーでありがちな「食事のたびにベッドを片付け、夜にはまた展開し直す」という煩わしさとは無縁である。昼はダイネットでゆったりと食事や作業を楽しみ、夜になればそのままベッドに横になる。生活の切り替えがスムーズで、旅先でのストレスが驚くほど少ない。
ベッドのサイズにも注目したい。上段が幅650mm×長さ2000mm、下段が幅700mm×長さ2000mmと、どちらもしっかりとした大人仕様。足を伸ばして寝られる2mの長さは、バンコンでは希少だ。天井高もしっかり確保されているため、圧迫感を感じることなく、落ち着いた睡眠環境を得られるだろう。
コンパクトで使いやすい二人用ダイネット
常設ベッドのすぐ隣には、対座式の二人用ダイネットが設けられている。コンパクトながらも居心地がよく、夫婦でのんびり朝食をとったり、ノートPCでちょっとした作業をしたりと、活用の幅は広い。座面やテーブルのサイズ感もほどよく、窮屈さを感じさせない。
この“ちょうどよさ”が、銀河の魅力のひとつだ。オーバースペックではなく、足りないところもない。二人旅において最適化された空間設計といえる。
スムーズな動線と独立型キッチン
車両のスライドドアを開けるとすぐに現れるのが、独立したキッチンユニットだ。シンクと蛇口、電子レンジ、40リットルの冷蔵庫が標準装備されており、ちょっとした調理や温め直し、飲料や食材の保管に困ることはない。
給水・排水はそれぞれ13リットルのタンク式。小回りの利くサイズでメンテナンスも容易だ。シートなどで遮られることもなく、乗り込んですぐにキッチンにアクセスできる構造も使い勝手の良さに直結している。立って作業することもできるため、長旅でも快適だ。
“リアマルチルーム”という安心感
銀河の車内をさらに安心・快適な空間へと引き上げるのが、後部に配置された「リアマルチルーム」である。これはポータブルトイレを標準装備した独立空間で、壁と扉で車内と仕切られている。プライベートを守りながら、トイレルームとして、あるいは収納スペースとして活用することができる。
深夜や悪天候時、サービスエリアに寄る余裕がないような場面でも、この装備があるだけで心にゆとりが生まれる。また、ペット連れのユーザーにとっても、仕切られた空間があることで、キャリーケースやトイレ周辺の設置にも困らないだろう。
エアコンで車内を“家”に変える
銀河には、オプションで家庭用エアコンを搭載することが可能だ。特筆すべきは、そのエアコンがリチウムイオンバッテリーで稼働できる点である。外部電源や発電機を必要とせず、夜間なら一晩、日中のフル稼働でもおよそ4時間の稼働時間を確保できる。
構成としては、200Ahのリチウムバッテリーに加え、1500Wの正弦波インバーター、バッテリー残量計、外部充電器がセットとなっており、車内電源としての信頼性も高い。特に真夏や厳冬期のペット同伴旅行では、その恩恵を最大限に実感できるだろう。
長距離でも安心の走行性能と居住性
銀河のベースはトヨタ・ハイエースのスーパーロング・ワイド・ハイルーフ特装車。キャブコンに匹敵する居住性を持ちながら、キャブコン以上の走行安定性を誇るのが特長だ。高速道路や山道でも安定した走りが可能で、長距離移動も苦にならない。
駆動方式は2WDと4WD、エンジンはガソリンとディーゼルの両方を選べるため、使い方や走行シーンに応じた最適な選択ができる点もポイントだ。
カスタムの幅と、長く使う喜び
銀河はセミオーダー対応にも力を入れており、カラーコーディネートや細かな装備の選択まで、購入者の要望に柔軟に応える体制が整っている。シート生地、家具色、カーテン、床材などを自由に選ぶことができるため、自分好みの一台を作る楽しみがある。
また、断熱材やクッションフロア、LED照明などの基本的な架装もすべて抜かりなく、耐久性にも配慮された設計となっている。長年使っても飽きが来ず、劣化の少ない内装は、まさに“長く旅するための道具”として完成度が高い。
銀河が教えてくれる、ちょうどいい旅のかたち
キャンピングカーの用途は人それぞれだが、「銀河」はその名のとおり、自由で広がりのある旅を可能にしてくれる一台である。常設のベッド、快適なダイネット、独立トイレルーム、オプションのエアコン——すべてが二人旅に最適化されており、“無理なく続けられる旅”を叶えてくれる。
価格は651万円〜と、バンコンの中では中〜上級グレードに位置するが、その装備内容と快適性を考えれば、コストパフォーマンスは決して悪くない。むしろ、余分な装備を排して必要なものを最適な形で配置した「銀河」は、これからキャンピングカーライフを始めたい人、特に夫婦ふたり旅をメインとする人にとって、最適解のひとつといえるだろう。
写真ギャラリー
ベースの車両はトヨタのハイエース。
スライドドアから入ってすぐのフロアは広々としており乗り降りもラク。奥にはキッチンカウンターが設置されており、必要装備がまとまっている。
バックドア側はマルチスペースとなっており、簡易トイレを設置することも可能。また、ベッドの下の収納スペースにもアクセスできる。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
人気記事ランキング(全体)
最新版CarPlay・Android Autoに対応するワイヤレスアダプター スマホと連携して、様々なサービスを使用できるディスプレイオーディオ、接続には大きく分けて、ケーブルを利用する場合とワイヤレ[…]
快適性を追求した軽キャンの完成形 「ミニチュアクルーズ ATRAI」は、岡モータースが長年にわたり築き上げてきた軽キャンパー製作のノウハウを、現行アトレーのボディに惜しみなく注ぎ込んだ一台である。全長[…]
濡れ物・汚れ物も気にしない。唯一無二の「防水マルチルーム」 イゾラ最大の特徴とも言えるのが、車両後部に備えられた「防水マルチルーム」だ。これはレクビィ独自の装備であり、実用新案登録もされている。アウト[…]
デッドスペースにジャストフィット! 車内の温度較差を解消! 暑いシーズンのドライブは、車内の環境がシビアになりがち。炎天下に駐車後に乗り込む際や、夏場の渋滞中など、クーラーだけではなかなか車内温度が下[…]
“遊び心”を忘れない。大人のための軽キャンパー「Chippy」が切り拓く、新しい車中泊スタイル 「車中泊はあくまで手段」と語るコンセプトのもと、Chippyは単なる寝る場所ではなく、“遊ぶためのベース[…]
最新の投稿記事(全体)
リアサスは、固定式リーフスプリングからコイルスプリングへ進化していった 長い間、リアの車軸は固定式で、それをリーフスプリングで支えていた。コイルスプリングが実用化されると、一部の高級車でそれを使うもの[…]
ベッド展開不要の快適な生活空間 全長5380mm、全幅1880mm、全高2380mmという大型バンコンでありながら、その中身は大人二人、あるいは二人+ペットでの旅にフォーカスされている。7名乗車・大人[…]
最新改良で新しい外装塗料を採用。美しさと耐久性が向上している 5月に実施された一部改良(7月より改良モデルは発売)では、外装の美しさと耐久性を向上させつつ、原材料費の高騰に対応した価格改定を実施。この[…]
最新改良で2WDモデルを廃止。全車4WDモデルのみのラインナップへ 2024年11月に実施した最新改良では、従来はメーカーオプションだった機能の一部グレードで標準装備化が図られた。 具体的には、Xグレ[…]
デッドスペースにジャストフィット! 車内の温度較差を解消! 暑いシーズンのドライブは、車内の環境がシビアになりがち。炎天下に駐車後に乗り込む際や、夏場の渋滞中など、クーラーだけではなかなか車内温度が下[…]
- 1
- 2