最新クロスオーバーに劇的進化を遂げた新型クラウン。メカニズム的にはオンロードでこそ真価を発揮するモデルだが、SUVを名乗る以上、ある程度の悪路もこなして欲しいというのが多くのユーザーの偽らざる想いだろう。そんな時に飛び込んできた雪上テストへの誘いは、まさにジャストタイミングといっていい機会。クラウンの秘める実力の真髄に迫ってみたい。
●文:まるも亜希子 ●写真:トヨタ自動車株式会社
パワーコントロールが容易なことも、デュアルブーストハイブリッドモデルの美点
新世代のクロスオーバーモデルとして生まれ変わった新型クラウン。1955年から続くクラウン史上、最も大きな変革を遂げたことは間違いないが、今回はそれを身をもって体感するべく、冬の北海道へ。雪深いテストコースで、新型クラウンの走りを存分に試乗する機会がやってきたのだ。
用意されたステージは、クネクネとしたカーブやアップダウンが続く一般道を模したコースと、ある程度の速度を体験できるサーキットコースの2つ。
まずは最新ハイブリッドとなる2.4Lのデュアルブーストハイブリッドモデルを走らせる。もともとトルクフルな加速フィールが高回転域まで続くことがこのシステムの特徴だが、雪上ではそっとアクセルを踏んで発進し、急減速や急加速は抑えて操作することが求められるため、その特徴がどう作用するのだろうかと思っていた。
発進直後はジワリと前に出つつ、その後すぐに太いトルクに押し出される力強さが際立つが、中速域程度でも軽やかさを感じるほどの加速フィールも印象的だ。これは2.4Lターボエンジンのパワーだけではなく、後輪側に配置される59kW/169Nmを発揮する大出力モーター(e-Axle)の働きも大きい。加速後にすぐ減速するような場面でも、緻密なトルクの出し入れを行うことによって寸分の遅れも感じさせない。アクセル入力に俊敏に応えてくれる、一体感のある走りが爽快だ。
DRSがもたらす躍動感溢れる走りは、シビアな路面でもしっかり楽しめる
さらに雪上を楽しく走れることも魅力のひとつ。DRS(ダイナミックリヤステアリング)を採用したことで、ハンドル操作とアクセル操作の両方で高い旋回性を引き出せるような感覚が強まっており、雪上でも鼻先がスッと思う方向へと向いてくれる。コーナーでもっとアクセルを踏んで攻めたくなってしまうような、躍動的な走りが楽しめた。
続いて2.5Lのシリーズパラレル式のハイブリッドモデルに乗り換えると、発進直後は2.4Lモデルよりもやや穏やかな印象だが、その後の加速フィールは自然な感覚に近く、余裕は十分。車両重量は2.4Lモデルより少し軽くなるが、不思議と接地感に落ち着きが感じられるのは、DRSの制御が巧みでバランスが保たれているからだろう。コーナーの入り口でも穏やかに回り込んでいく感覚があり、確実にリヤが踏ん張って支えてくれる。もちろん、振り回して遊ばせようと思えばできるのだが、どちらかといえばラインを的確にトレースしつつ、リラックスして快適に走らせたくなる。雪上でもこんな違いがハッキリとあることを実感した。
クラウン伝統の静粛なキャビン空間も健在
ただ、どちらのモデルにも共通していたのは、雪上を走っているとは思えない静粛性の高さと乗り心地の良さを持つこと。背が高いSUVで雪上を走った時にキャビンに入ってくるノイズ感や余計な振動などの雑味が、比べものにならないくらい抑えられている。実際、走行中に後席に座る同乗者に話しかけても、普通に会話が成立してしまう。いささかも声量を上げる必要がないため、走りもいっそう楽しくなる。こんな部分でもクラウンの凄みを実感することができたのだ。
これほどの良質さを実感できるのは、GA-Kプラットフォームにマルチリンクサスペンションを採用した基本性能の高さもあると思うが、開発陣も驚くほどに雪上での威力を発揮してくれたというDRSの功績も大きいようだ。地道に走り込みを行って仕上げた走りは、雪道でもクラウンクオリティを実現している、というわけだ。
スキルに自信のあるドライバーなら2.4Lモデルで雪道をスポーティに楽しむのもオススメだが、とにかく安心感第一で走りたいドライバーには2.5Lモデルの安定性の高さは見逃せない美点といえる。いずれにせよ、どちらのクラウンを選んだとしても、シビアなコンディションが続く雪道であっても、ゆったりと快適に走ることができるのは間違いない。
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