
トヨタは世界中で事業展開しているが、ユーザーのニーズや価値観は地域ごとにも、世代ごとにも異なるという。そこでトヨタはモビリティの多様化を目指して、移動の自由を進化させる技術開発を行っている。6月13日に詳細が公開された「トヨタテクニカルワークショップ2023」では、車にワンタッチで車いす を固定できる装置と移動の自由と楽しさを両立する電動車いす「JUU」が公開された。
●文:月刊自家用車編集部 ●写真:トヨタ自動車株式会社
作業時間を2分から2秒に短縮。ワンタッチで車いすを固定してストレスフリーの自由な移動をサポート
「トヨタテクニカルワークショップ2023」で公開された、移動のさらなる自由を実現する新たな取り組み。まずは、「車いすワンタッチ固定装置」だ。
車いす側に追加されたバーを車両側のフックで固定するというもので、前方または後方から車いすをフックの位置まで移動させて、近くにあるスイッチを押すだけでフックがバーを引っ込んでしっかりと固定できる。
実際に固定された車いすを揺すってみたが、ガッチリと固定され完成度もすぐにでも商品化できるレベルだった。現在の車両への車いすの固定は車両側の状況によって異なるが、専用の固定装置を使い、4つのワイヤーで固定するというのが一般的。しかも、固定に時間が掛かるのが難点だ。福祉車両だけでなく、公共のバスやタクシーなどでも車いすの固定作業時間がネックになっている。
現在広く使われている車いす固定装置では、早くても固定するのに2分近くかかるのに対し、「車いすワンタッチ固定装置」は2秒で固定可能だ。この仕組みが広まれば、一般家庭はもちろん、公共のバス/タクシー運転手や福祉施設の従業員の皆さんの負担も減り、車いす利用者の移動の自由度も上がるはず。
トヨタは、車いす業界への「固定用バー」の追加を含めた連携と自動車業界を巻き込んで規格作りを目指しているという。今後は自動車だけでなく、陸、海、空などさまざまなモビリティへの展開を行い、さらなる移動の自由の実現を目指すとしている。
電動車いす「JUU」
そしてもう一つ、移動の自由を広げるモビリティが「クルマ屋」が作る電動車いす「JUU」だ。「JUU」は「Joy・Job・Universal・Utility」の略で、介助なしで階段を上り下りでき、凹凸路も走行可能という電動車いすだ。駆動モーターに自動車の電動パワーステアリングのモーターを使用して、信頼性と安全性を確保している。
実際に階段を模したデモ走行路で試乗したが、車いす後方にある補助輪を使ってアシストしながら登っていく。操作はアームレスト部にあるジョイスティスクで、前後左右に車いすをコントロール可能だ。
想定シチュエーションとして、階段しかない歩道橋や飲食店、林道や伊勢神宮の石段と思われる写真も飾られていた。担当エンジニアにお話しを伺うと、石段もOKとのこと。今回試乗したのは試作電動車いす(写真左)だったが、今後はモダンでスタイリッシュなデザイン仕様(写真右)で、同じ性能を目指すという。「クルマ屋」が作る電動車いす、完成が楽しみである。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(トヨタ)
FF化の風潮の中にあって、あえてFRを継承したスポーツクーペ 1966年に初代が誕生したカローラシリーズは、2015年5月末に世界で初めて累計販売台数が1000万台に到達した。その偉業は、市場に合わせ[…]
剛性の積み重ねが生む一体感 2024年に実施されたゲームチェンジャーとまで言われた20式から24式への進化。その革新的な変化と比べると、24式から25式への進化は「ブラッシュアップ」と表現するのが妥当[…]
多目的次世代アリーナを10月3日に開業 開業記念式典には、小池百合子東京都知事やBリーグの島田慎二代表理事CEOなど多数の来賓が出席。トヨタ自動車の豊田章男会長は、アリーナへの思いを語るとともに、室伏[…]
多様なモビリティサービスに対応可能なバッテリーEV。価格は2900万円から 「e-Palette(イーパレット)」は、人々の生活と社会を豊かにする新たな移動体験を創出する、未来志向のプラットフォームと[…]
オートサロン2025で披露された注目バージョンが市販化 2020年に発売が始まったGRヤリスは、走りに直結するさまざまな改良を頻繁に行うことでも有名なモデル。それだけメーカーのこだわりが強いことをユー[…]
人気記事ランキング(全体)
見た目では用途がわかりにくい、意外性のあるカー用品 世の中には多種多様のカー用品があり、奇抜なものから思わずおっと唸ってしまうようなアイテムがたくさんある。カー用品のお店やECサイトでカーグッズを探っ[…]
コンパクトに収まるベース仕様 RS1+のベースとなるのは、スズキ・エブリイワゴン。標準設定としてベッドマット、カロッツェリアの楽ナビ、そして諸費用を含む構成になっている。軽キャンピングカーを求める人に[…]
大人が手にする秘密基地 N-VAN コンポの最大の魅力は、まるで子供の頃に夢見た秘密基地を現実にしたような空間にある。助手席側の大開口部とフラットな床が生み出す自由度は抜群で、サイドオーニングを展開す[…]
全方位型のツインタイプの小型ファン 先日、ヘッドレストに装着するタイプの扇風機を愛車に導入したのだが、ファンとしてはオーソドックスな丸型タイプの扇風機も使う機会があったので、便利そうな2種を紹介してい[…]
日本車が手本とした、美を優先する伊デザイン。その代表が117クーペ 日本において、商品のデザインが売れ行きを大きく左右することに最初に気づいたのは、松下電器器具製作所(後の松下電器産業、現パナソニック[…]
最新の投稿記事(全体)
車内を快適に! カーエアコンの正しい使い方とは? 車内を快適な温度に保つために必要な、カーエアコンの正しい使い方を4つのポイントから見ていこう。 まずひとつ目のポイントは、カーエアコンの起動タイミング[…]
初期型 NA6CE(1989年) 未知の需要に果敢に挑戦して大ヒットを記録 初代ロードスターこと、「ユーノス・ロードスター(NA系)」が発売されたのは1989年です。年号が昭和から平成に切り替わった年[…]
より精悍な佇まいが楽しめる、新たなパッケージオプション「M Sport Package Pro」 今回、X5とX6に追加される「M Sport Package Pro」は、Mハイグロス・シャドー・ライ[…]
豪華な装備で魅せるEクラスの最高峰 E 53は、 3.0 リッター直列 6 気筒ターボエンジンと電動モーターを組み合わせたシステムトータル出力 585PS(430kW)を発揮するプラグインハイブリッド[…]
見た目では用途がわかりにくい、意外性のあるカー用品 世の中には多種多様のカー用品があり、奇抜なものから思わずおっと唸ってしまうようなアイテムがたくさんある。カー用品のお店やECサイトでカーグッズを探っ[…]
- 1
- 2