ここで紹介する3台の軽自動車は、カテゴリーとしては4ナンバーの“商用車”を名乗るが、その中身を吟味していくと5ナンバーの乗用車モデルにはない独自の魅力を持っている。手頃な価格帯で実用的に使えるクルマを探しているならば、ぜひとも覚えておきたいモデルだ。
●解説:川島茂夫/編集部
新世代の商用軽モデルは、レジャーユースでも活躍可能
商用車は“ビジネス向け”のモデル。この認識は決して間違いではないが、少し視点を変えると、趣味の道具を運ぶレジャーモデルとして、面白いクルマを見つけることができる。
なかでも注目したいのが軽自動車だ。自分に必要な機能を見極め、かつコスパを求めていくならば、見逃してはもったいないモデルを見つけることができる。その代表例といえるモデルが、ダイハツ・アトレー(ハイゼット)、スズキ・スペーシアベース、ホンダ・N-VANの3モデルだ。
ダイハツ・アトレー【全グレード、ターボ採用の上級モデル。独立荷台のデッキバンも注目すべき1台】
アトレーは、ハイゼットのワゴンバリエーションとして誕生した歴史があり、5ナンバーモデルとして長らく販売されていたが、2021年に登場した現行モデルは、商用車仕様の4ナンバーモデルのみのラインナップになっている。2WDの駆動方式にFRを採用したことや、長くフラットな荷室スペースが確保されていることからも分かるように、働くクルマ志向を意識した設計思想に変化はない。
ビジネス需要に特化したハイゼットに対して、豪華仕様のアトレーという関係は、現行世代でも同じ。商用車のポテンシャルをレジャー用途向けに仕立て直したモデルというのがしっくりくる。実際、アトレーは全グレードに64馬力のターボエンジンを採用しており、動力性能面もクラストップ級。内装まわりもかなり乗用車ライクで、前席に関しては乗用車とほぼ同じといって良いほど。レジャー用途に特化したキャビンを備えていたウェイクの後継にも位置付けられる内容を持つ。荷台を後部端に独立して設置したミニトラックともいうべき「デッキバン」が選べることも、アトレーを語る上で外せない特徴だ。
スズキ・スペーシアベース【小物収納や多目的デッキボードなど、レジャーユースを意識した装備が目白押し】
スペーシアベースは、車名のとおりにスーパーハイト軽ワゴンのスペーシアを4ナンバー化したモデルで、こちらも商用車らしさを感じるのは簡素な後席設計くらい。商用車化にあたり後席位置の変更と荷室容量の拡大などの設計変更がされているが、その他にもレジャー用途での使い勝手を高めるために、小物収納や多用途デッキボードなどの機能が加えられている。実態としてはスペーシアの商用仕様というよりも、2名乗車を基準にしたレジャーワゴンとして開発されたモデルだ。
アトレーやN-VANにはターボ車が用意されているに対して、スペーシアベースはNA車のみというのがウィークポイント。上級グレードの「XF」には全車速追従型のACCが装着されるが、高速走行時の余力感は少し心もとない。レジャー用途を売りにするモデルだけに、NA車のみというのはもったいなく思える。
ホンダ・N-VAN【低床構造がもたらす広々とした荷室空間。良質なフットワーク性能も見どころ】
N-VANは、ホンダが展開するNシリーズの商用車として開発されたモデル。N-BOXやN-WGNと同じく、Nシリーズのプラットフォームを採用。センタータンクレイアウトによる低床設計がもたらした広々フラットなキャビンスペースがセールスポイントで、レジャー用途向けに、+スタイルファンというグレードも用意され、64馬力のターボ車もラインナップされている。
Nシリーズに共通したフットワークの良さを持つことも見どころのひとつ。N-BOXほどの安定感とゆとりがある走りとまではいえないが、街なかでも高速道路でも商用車とは思えぬほどしっかりとした走りを体感できる。
価格的なメリットよりも、荷室まわりのアレンジ性の高さが大きなアドバンテージ
3モデルに共通する特徴として、運転支援機能の充実も見逃せない。N-VANは全グレードに、アトレーとスペーシアベースは上級グレードに限定されるが、いずれも全車速型ACCを採用している。ACCは高速長距離走行での運転ストレス軽減効果が大きいため、レジャー用途を考えれば、ぜったい欲しい装備のひとつだ。
気になる価格に関しては、同水準のスーパーハイト軽より少しだけ安め。軽自動車税も乗用車よりも安い(年額で5800円弱)。ただ、任意保険は保険会社によっては年齢制限の特約が制限される場合もあるため、コスト面で圧倒的にオトクとまでは言いにくい。コスパはレジャー用途での実用性で取り戻すくらいに考えたほうがいいだろう
走りを含めた総合性能は、乗り心地を中心に乗用車モデルに及ばない部分があるが、後席&荷室をシンプルに使い倒すことができることは、商用系モデルの大きな強み。キャンピングカービルダーが販売する軽キャンパーモデルは価格的に厳しい、もしくは好みじゃないというユーザーにとって、優れた基本設計に車中泊やベースキャンプ機能などの実用性を盛り込んだ3モデルは買い得と言える。軽自動車だから、商用車だから、という偏見を外して見てみることをオススメしたい。
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(軽自動車)
順調な伸びを見せるサクラの販売台数。2023年度は国内EVシェアの40%超を獲得 日産自動車は2024年4月11日付けのニュースリリースで、同社の軽乗用車EV(電気自動車)のサクラが、2023年度(2[…]
日産勢は納期も値引きも期待できる。ホンダN-BOXの値引きは拡大傾向、購入のチャンスだ ●日産/ホンダ 注目モデル4選車両本体目標値引き額納期の目安リセール予想エクストレイル30万円1~2か月B-キッ[…]
乗用モデル相当の利便装備を採用することで、快適性を大きく向上 今回実施した一部仕様変更で「後方誤発進抑制機能」に「ブレーキ制御機能」を追加。さらに「キャリイ」と「スーパーキャリイ」は、全グレードにスズ[…]
特別仕様車「STYLE+ NATURE」は、専用ブラックパーツで、より個性的なスタイルに 今回実施する一部改良では、ホンダセンシングにアクセルペダルとブレーキペダルを踏み間違えた際に加速を抑制する「急[…]
働くクルマから、趣味のクルマへ、上手にイメージチェンジ 農家必須のクルマと言えば軽トラック。畦道のスポーツカーと称されることもある。スズキ・キャリーはそんな軽トラックの代表的なモデル。もっとも、3年前[…]
最新の関連記事(バン)
【1967 ランドクルーザー50系】求められるニーズに合わせたバン(ワゴン)仕様の50系を分離独立 1960年に登場した3代目ランドクルーザー(40系)は、24年も生産され続けたロングセラー。その長い[…]
特別仕様車の設定は5人乗りのベルランゴのみ アクティブなライフスタイルを実現する高いユーティリティ性と長距離移動の快適性を備え、多種多様なニーズに応えるMPVとして人気の「ベルランゴ」。全長約4.4m[…]
ハイエースよりもコンパクトなキャンパー ベースとなるトヨタのタウンエースは荷室が広くカスタムの自由度が高い。一方で、ハイエースより小ぶりなため、運転しやすく駐車スペースで悩むことも少ない。 車内はテー[…]
ガタツキに強いグラスファイバー強化樹脂を採用 商用車はダッシュボードやノーズが短い車両が多く、ダッシュボードにスマートフォンホルダーを取り付ける際、「前方視界基準」違反になる場合があることはご存知だろ[…]
2つのラインから選べる 今回発売日が決定した「Carica(カリカ)」は、2023年1月開催の東京オートサロンをはじめ、大阪オートメッセや全国6店舗を展開する「アルパインスタイル」などで事前商談が行わ[…]
人気記事ランキング(全体)
→目立たずシンプルな軽キャンパーとは ベース車両はスズキのエブリイ ベースとなる車両はスズキのエブリイ。燃費の良さや、運転のしやすさが際立つ軽自動車であるにもかかわらず、広い車内空間を誇る人気車だ。 […]
→普段使いに最適なキャンパーとは ベース車両はホンダのフリード ベースとなる車両はホンダのフリード。街乗りでも違和感がないうえに、広い車内スペースが、アウトドアでも大活躍する車だ。 小回りが効くサイズ[…]
取り回しの良いサイズ感ながら、室内は広々 車内は広々としており、窮屈さは全く感じない。内装は木材がメインで、木目のあたたかさを感じることができる。 入り口脇には冷蔵庫を設置。その上は作業台とシンクにな[…]
デザイン、性能ともに抜群の仕上がり! 「BougeRV Rocky」は、耐久性に優れた防錆金属素材を使用し、一般的なプラスチック製品よりも圧倒的な強度を誇る大容量ポータブル冷蔵庫だ。39Lの大容量で、[…]
→ブラウンカラーのインテリアでオシャレなキャンパーとは ベース車両はトヨタのハイエース ベースの車両はトヨタのハイエース。カスタムの幅が広く、アウトドアを中心としたユーザーに、非常に人気の高い車だ。 […]
最新の投稿記事(全体)
→ボックスシートが使いやすいキャンパーとは ベース車両は日産のNV200バネット ベースとなる車両は日産のNV200バネット。 荷室が広くカスタムの自由度が高い。一方で、キャラバンより小ぶりなため、運[…]
MTで操れる、特別なアバルトが再び登場 今回導入される「ABARTH F595C 2nd Edition」は、昨年12月に発表した限定車「ABARTH F595C」の第二弾にあたるモデル。「F595」[…]
好評のスライディングガラスルーフを標準装備 今回導入される「DS 4 RIVOLI BlueHDi Coquelicot Edition」は、DS 4の主力グレードになる「RIVOLI(リボリ)」をベ[…]
注文受付はオンラインのみ。特設ウェブサイトを通じて購入可能 今回導入される「A1 Sportback urban chic edition」は、A1 Sportback 25TFSI Sラインをベース[…]
“ラグジュアリームーバー”のレクサス「LM」 初代LMは主に中国やアジア地域でのショーファードリブンMPVの需要に応えるために、2020年に販売を開始。2023年のラグジュアリーマーケットにおけるユー[…]
- 1
- 2