マツダ・ロードスターが大幅商品改良を実施。改良型は、現代のクルマに求められる新たな安全法規に適合したほか、走りの魅力もさらにパワーアップ。進化した最新ロードスターの魅力をお伝えしよう。
●文:川島茂夫 ●写真:奥隅圭之
MT車に追加されたアシンメトリックLSDが、走行性能を底上げ
サイバー攻撃対策を求めるサイバーセキュリティ法「UN-R155」への対応や、マツダ他モデルに少し遅れ気味だったACCなどのADAS系や、マツダコネクトのアップデートも実施されているが、多くのユーザーが注目するのは走行関連機能の進化だろう。
エンジンスペックの向上(1.5Lモデルの最高出力が132PS→136PS)や、サーキット走行に最適化したダイナミック・スタビリティ・コントロール(DSC)の新制御モード「DSC-TRACK」などの追加、マツダコネクトの大型化などが実施されているが、やはり注目は、MT車に新設定されたアシンメトリックLSDの採用だろう。
LSDの形式としては1.5ウェイ型になるが、差動制限力を一般的な「加速>減速」とは逆の「減速>加速」とすることで、クルマの旋回挙動をより安定させていることがこの新LSDの強みだ。
試乗してまず気になったのが、ハンドリングの変化だ。開発陣によるとサスチューンは従来型とまったく同じというが、試乗した感触だと激変とまでは言わないまでも、細かな修正舵の頻度やライントレース性能が明らかに違う。
従来までのロードスター(標準サス仕様)は、リヤスタビライザーを装備するMT車であっても、減速しながらラインを絞る時の鼻先の動きに落ち着きが感じられなかった。よく言えば負荷変動を利した挙動変化を利用しやすくするための特性といえるが、走行ラインを維持するための操舵補正の頻度は、どうしても多くなってしまう。
一方、新LSDを装備した改良型ロードスターの1.5L車(標準サス仕様)のコーナリングでの鼻先の動きは、同じような感覚でコーナーに飛び込んでも、明らかに落ち着いている。オーバーシュート気味に侵入しても回頭や揺れ返しは上手に抑制され、ラインコントロールが容易だ。
なお、新LSDを装備する2L車(ビルシュタインサス仕様・RF-RS)にも試乗したが、新LSDの効果は1.5L車ほど大きくは感じられない。これはもともとビルシュタインでサスが引き締められていたことで揺れ戻しの挙動収束が高いことが理由だろう。新LSDの雑味少ないコントロール性の良さが目立たない印象だ。
これまでは、高いラインコントロール性を求めるならば、RS系(ビルシュタインサス仕様)が欲しくなったのだが、改良型ならば、新LSDを装着するMT車の標準系で問題ない。新LSDは柔らかめのサスと相性が良好で、操安と乗り心地のバランスの良さを実感できる。
改良型は、タン色の幌の設定や、車載ITやADAS機能の強化、さらにセンターコンソール周りの質感が高まったことで、プレミアムな魅力が強まっているが、やはり最大の見どころは新LSDがもたらすハンドリングの進化ぶりといえる。MT車限定ということが、本当に残念だ。
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