株式会社SUBARU、トヨタ自動車株式会社、マツダ株式会社が合同で5月28日に開催した「マルチパスウェイワークショップ」。登壇したトヨタ自動車株式会社の佐藤社長は、「内燃機関の未来を一緒につくりましょう」という宣言だと語った。この場で公開されたトヨタの新エンジン1.5Lと2.0Lの2機種。その役割について探ってみよう。
●文:工藤貴宏 ●写真:トヨタ自動車株式会社/原 文昭/月刊自家用車編集部
えええっ、3気筒から4気筒へ戻るの? いや、きちんと理由があるんです!
先日開催されたトヨタ、スバル、そしてマツダによる「スマートパスウェイ・ワークショップ」というメディア向けの説明会でトヨタは2つの次世代エンジンを公開ました。排気量はひとつが1.5L、もうひとつが2.0Lです。
いま、車業界はカーボンフリー社会の実現に向けてクルマが排出するCO2の削減に一生懸命取り組んでいる真っ最中。少し前まで「その解決策はEVしかない」という人が多かったのですが、それに対して「EVに加えて水素やハイブリッドなど方法はいくつもある。地域の状況やユーザーの使い方に合わせていろんな方法が考えられる」というスタンスをとっていたのがトヨタです。
それが「マルチパスウェイ」。ここへきて、トヨタの考え方が正しかったことを認める人が増えているのはクルマ好きならきっとご存じのことでしょう。
トヨタも将来的には「電気と水素」としつつも、「エンジンの役割はまだまだ重要」として次世代エンジンの開発を宣言し、今回その試作品を公開したというわけです。
今回公開されたふたつはいずれも小型のエンジンで「一段と厳しくなる次の段階の排出ガス規制にも対応する(現在のエンジンに比べて出力ダウンが少ない)」とトヨタは説明。
まず驚いたのは、1.5Lエンジンの気筒数です。昨今の1.5Lエンジンは小排気量化の流れを受けて3気筒が主流となっているのはご存じの通り。ロスが少ないから燃費を稼げ、トヨタも「ヤリス」などに搭載するエンジンは3気筒としています。ところが、次世代エンジンはなんと4気筒。トレンドを越えて逆戻りしているのですから。しかし、気筒数を1つ増やすことでエンジンの高さを抑えることでき、エンジンの小型化にもつながっているんです。
新しい1.5Lエンジンは自然吸気とターボがあり、前者は既存の1.5Lエンジンに比べて全高で10%、体積でも10%低減しているとのこと。現在の2.5L自然吸気からの置き換えを想定する後者は、既存の2.5L自然吸気と比べると全高で15%、体積では20%も低減。これまで一般的に“非効率”とされていたショートストローク化されているのも注目すべきところでしょう。
新しい2.0Lエンジンは、現在の2.4Lターボ……つまり現在「クラウンクロスオーバーRS」や「ヴェルファイア」に搭載されているV6自然吸気エンジンから置き換えたエンジンからバトンを受け継ぐもの。排気量わずか2.0Lで大丈夫なの?と思ったりもしますが、燃費はもちろん、出力も2.4Lターボを超えるそうです。
公開されたエンジンはヘッドカバーが赤い結晶塗装でしたが、説明したトヨタ自動車の技術責任者である中嶋裕樹さんは「そこから察してください」と意味深なコメント。一般的には、ヘッドを赤い結晶塗装としたエンジンはスポーツエンジンを意味するのですが……。
とうぜんながら、これらのユニットはエンジン単体として使うだけでなくハイブリッドにも組み合わせるものです。実はハイブリッドにおけるエンジンの使い方も変化してきていて、かつては「エンジンがメインでモーターがサブ」だったものが、「出力の大きなモーターがメインでエンジンがサブ」へと移行しつつある。
ハイブリッド用のエンジンを「あくまでモーターのサポート」と考えれば、高回転は必要ないし、ピークのトルクも必要ない。それよりも低い回転数での効率をよくすることが大切だ。「そこでショートストロークが効く」と中嶋さんは説明します。
そしてエンジン全高を抑えたメリットに関しては「ボンネット高を下げてカッコいいクルマが作れる」という。それはとても大切なこと。しかしそれだけでなく、EVとして開発したパッケージングの車体にエンジンを積んで、ハイブリッドもしくはプラグインハイブリッド化することも視野に入っているのでしょう。
ちなみにマルチパスウェイ戦略としても重要な水素に関しては、燃料電池車「MIRAI」を市販しているほか、水素エンジン車もレースで走らせているほか、実際にプロトタイプとして公道を走っている車両もあります。そして今回明らかになったのは「水素エンジン+モーターのハイブリッド」も視野に入っているということでした。
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