傍からはいかにも簡単に何気なく行っているように見えながら、現実には高度なスキルが要求される作業は意外に多い。自動車ボディへのスプレー塗装はまさにその典型。複数の動作を同時に、狂うことなのない一定のペースで繰り返すことが求められるのだ。
●写真/文:月刊自家用車編集部(オートメカニック)
キレイに仕上がるスプレー塗装のコツを解説
自動車のボディ補修における「パテ盛り」は、塗って/乾かして/削るを繰り返す根気が勝負の作業。それゆえ、手間と時間さえ惜しまなければ、ビギナーでもそこそこに仕上げられる。
ところが、仕上げの塗装となると話は別。複数の動作を同時に、かつ一定のペースで繰り返す必要があり、常に安定してこなせるようになるためには頭で分かっているだけではダメ!身体で覚える必要がある。自転車の乗り方をいくら口で説明したところで乗れないように、コツを飲み込むまで何度も失敗を重ねることで、自分自身の身体に覚え込ませるしかないのだ。
このため、一度や二度の失敗でめげてはダメだ。一般に市販されているカラー スプレーは塗布した直後ならシンナーで容易に拭き取ることができ、タレてしまったとしてもリカバリー可能。よほどの失敗でない限り何とかなるので、臆することなくチャレンジしたい。
そのためにも塗料類は1〜2本余分に用意しておきたい。作業の途中で足りなくなると厄介なことになるからで、余分にあれば失敗した時のリカバリーもしやすくなる。また、缶スプレーは連続して噴射させると粒子が粗くなる。その対処法として余分に用意しておいて取っ換え引っかえ使用する方がいいからだ。
スムーズに作業を進めるために準備しておきたいアイテム
実際にカラースプレー塗装をする前に、準備しておきたいアイテムを紹介しよう。いずれも、ネットショップや自動車用品店などで簡単に手に入るものばかりだ。
【ボデーペン プラサフ(ソフト99)】
鉄鈑に良好な付着性を示すプライマー効果と塗装面の調製を行うサフェイサーの2つの効果を発揮する下塗り塗料。
【ボデーペン クリアー(ソフト99)】
メタリック、パール・マイカ塗装等に上塗りすることで塗膜の保護と深みのある光沢を出す効果がある透明塗料。
【ボデーペン カラースプレー(ソフト99】
純正色をラインアップするカラースプレー。
【コンパウンドシート(ソフト99)】
研磨力#3000相当でサンドペーパーでは再現できない塗装面の微妙な肌合いを整えられるシート状研磨 材。
【液体コンパウンド(ソフト99)】
ペーパー目を消す中細相当の3000。磨き傷を落として鏡面を復活させる超極細の9800。
【ネルクロス】
拭き取りには「ネル生地」のウエスを使用するのが原則。タオルだと糸くずが残りやすく、細かなキズが付くこともあるので要注意だ。
スプレー塗装の基本のキホン
スプレー塗装をきれいに仕上げるための基本は、缶スプレーもエアースプレーガンによる本格的な塗装も基本的に大きな違いはない。
たとえば、いずれの場合も最初のひと吹きはスプレー粒子が粗く、塗料の固まりが飛んでダマになりやすい。これは休止してから再びスプレーし始める時も同様で、吹き始めはその度に試し吹きすることが大切。違いを挙げるとすればスプレー缶は缶内の限られたガスを利用する点に注意することだ。
最初のひと吹きはマスキング面で試し吹きする
最初のひと吹きは粒子が粗いため、マスキング面等で必ず試し吹きして粒子が均等か、噴射圧が安定しているか確認することが大切だ。
ノズルの向きで噴射幅が変化。状況に応じて設定しよう
ノズルの楕円部が縦の状態で縦方向にスプレーすると塗料が広がらず細い筋になる。このため、縦方向に吹く時は右側のように楕円部を横に向けるといい。横方向にスプレーする時は下段のように楕円部を縦位置にする。横位置でスプレーすると上段のように噴射幅が狭くなるからだ。調整を行った時は注意!
本塗装は下地を整えてから行おう!
下地を整える前に塗ってしまうと、補修跡が透けて見えたりポツポツと塗料が弾かれることがあるので注意! 色の塗り直し時は全面に、部分補修なら補修面に「プラサフ」を塗布して下地を整えるのが原則だ。
1回目は薄く吹き付ける
ムラなく均等に塗布するため2〜4回塗りが基本で、1 回目は少し遠めから薄く吹き付ける。補修面ならパテ跡が薄く透ける程度だ。
2回目以降、乾かしながらムラなく艶が出るまで塗る
2回目以降は20〜25cmの間隔でまっすぐ平行移動しつつ、 パターン幅の1/3を塗り重ねていくことで徐々に塗膜を厚くしていき、最終的に軽く艶が出るまで塗り込む。
十分乾燥したら、#1000で研磨して平らに均す
吹きっぱなしでは表面がザラ付いたままで平滑な塗装面に仕上がらない。乾燥したら#1000で磨いて平らに均す必要があるのだ。
ちょっとしたコツでさらにキレイに仕上がる!裏ワザ紹介
ソフト99の「ボデーペン」には噴射ボタンの付け根の部分に押し込み量を制限するストッパーが設けられていて、ワイド/スポットの切り替えも可能となっている。写真のようにストッパーを倒したままだとワイド、起こすとスポットになるのだ。
ガスの気化を利用して塗料を噴出させている缶スプレーは外気温度が低い冬は噴出圧が不安定になる。気化しにくくなるからで、それに伴い噴き出される粒子は粗くなる。温めると安定するので、冬場はお湯で保温するといい。