
ハイブリッドシステムが大幅に強化されたこともあって、走りの実力が大きく進化した新型フリード。“ミニバンだから走りは……”は、もはや過去のもの。ミニバンを探している多くのユーザーにとって、見逃せない存在になっていたのだ。
●文:月刊自家用車編集部
1クラス上のミドルミニバンとも争える、実力ミニバンに進化。これが好調なセールスの原動力
6月28日に発売された新型フリード。発売1か月前からディーラーで行っていた先行受注分だけで2万4000件のオーダーを集め、その後は発売1か月で3万8000台まで伸ばすなど、予想以上の反響を集めている。実際、本誌に寄せられるユーザーからの報告例も非常に多い。この夏、一番のヒットモデルといっていい活躍ぶりだ。
もちろん販売現場でも、現行フィットやヴェゼルの進化ぶりからして新型が売れることは予想できていたのだろうが、これほどの人気を集めるとは……というのが率直な想いのようで、納期はかなり厳しい状況になりつつある。ディーラーでは「これから注文をいただいても、年内の納車は厳しいと思います」と話すほどだ。
月刊自家用車本誌でお馴染みの松本隆一氏。新車購入ひとすじ40年以上のキャリアを持つ「値引きの神様」であり、これまでに多くのユーザーの新車購入をサポートしてきている。本誌に寄せられるユーザーからの報告例でも、新型フリードはかなりの数になっている。最新の納車の目安は5か月〜、車両本体目標値引きは10万円が目安。新型フリード発売直後に実施したディーラー取材の生々しい事情はこちらをご参考あれ→https://jikayosha.jp/2024/06/17/186277/
予想を超える好調なスタートを切れた理由は、歴代モデルが継承してきた「大人でもしっかりと座れるサードシート」がさらに進化したことや、運転リスクや負担を大きく軽減してくれるホンダセンシングのアップデート、ラゲッジまわりの積載性能やアレンジ性に優れることが挙げられるが、それ以上に大きいのは、ハイブリッド車の性能の向上。ホンダの最新ハイブリッド「e:HEV」に変更されたことで、1クラス上のミドルミニバンとの性能差が大きく縮まったことが大きい。
サードシートの座面構造の進化に加えて、シート横のウインドウの面積も拡大。居心地が高まったことも新型の見どころのひとつ。それでいて格納時の座面の出っ張りを抑える工夫を盛り込むことで、積載性を損なっていないこともポイントだ。
中央にディスプレイを配置するレイアウトに変更したことで、操作性や視認性も向上。これまで以上に運転がしやすくなったこともユーザーから高く評価されている理由。
安全運転支援機能のホンダセンシングも全グレードに標準装備。フロントワイドビューカメラと前後8つのソナーセンサーを用いた最新システムを採用することで信頼性や完成度が高まっている。
上級モデル譲りとなるe:HEVの採用で、大きな進化を遂げたハイブリッド車。先代との性能差は乗ればすぐに分かるレベル
すでに先代フリードから販売の主力はハイブリッド車に移行していたが、先代のハイブリッドはパラレル式のi-DCD。小気味よい動力制御でなかなかスポーティな走りを楽しめたが、動力性能そのものは1.5L級ガソリン車にプラスα程度のもの。負荷が強まる高速走行時や登坂走行では、力強さやスムーズさに欠ける一面が否めなかった。
一方、新型に採用されたe:HEVは、モーターが主体となることで駆動力を加速力に活かしやすいシリーズ式制御を採用していることで、高速走行からの追い越し加速でも十分な余裕を感じることができるほど。走行性能の目安となる駆動モーターのスペックも、先代の22kW/160Nmから90kW/253Nmに大きく向上。この力強いモーターアシストが加わることで、1クラス上の排気量を持つクルマに負けない走りを披露してくれる。その恩恵により実際の運転感覚も、アクセルを深く踏み込む頻度が少なくなるため、とても1.5L級とは思えぬほど余裕がある。
ハイブリッドにe:HEVを採用した恩恵は明らか。高速域での力強さが増したことに加え、運転しやすさや燃費も向上している。価格に対してのコスパの良さは、ホンダ車の中でも際立っている。
高速長距離をまったく苦にしない、煮詰められたフットワークも効いている
フットワークに関しても新型の進化は歴然。重心が高い1BOXタイプにも関わらず、乗り心地と高速操安性という背反しやすい要素を着実に高めている。先代も長距離ドライブが苦手というモデルではなかったが、新型は走行時の安定感が明らかに良くなっており、ハンドリングを深めに舵角を入れてもラインコントロールがやりやすい。誰でも運転が楽に感じるクルマになっている。
先代の最終モデルに比べると、価格はおおよそ20万円程度高くなってしまったが、運転感覚のブラッシュアップはコストアップに十分釣り合ったものに思える。発売後も好調な受注が続いているのは、実際にディーラーで試乗した多くのユーザーが、新型の良質な仕上がりや優れた走行性能に納得できているからだろう。
ファミリーミニバンらしくプレーンなイメージでまとめられている「エアー」(左)と、アクティブレジャー需要を意識してSUVライクなイメージとなる「クロスター」(右)の2タイプを選択可能。クロスターは前後バンパーとグリルまわりにSUVライクな加飾がプラスされ、ルーフレールも標準装着されている。ちなみに売れ筋はエアーの上級グレードとなる「エアーEX」のハイブリッドモデル。初期受注では全体の55%の購入ユーザーから選ばれている。
サードシートを外した代わりに、ラゲッジの使い勝手を高めた5人乗りの2列シート車も設定。クロスターでしか選べないが、レジャーユースでも十分に活用できる優れたユーティリティ性能を持っている。
●フリード グレードバリエーション&価格 | ||
パワートレーン | グレード【トランスミッション】 | 価格【2WD/4WD】 |
1496cc直4DOHC 118PS/14.5kg・m | エアー(6人乗り) | 250万8000円/273万9000円 |
エアーEX(6人乗り) | 269万7200円/292万8200円 | |
エアーEX(7人乗り) | 274万1200円/- | |
クロスター(5人乗り) | 281万2700円/304万3700円 | |
クロスター(6人乗り) | 285万6700円/308万7700円 | |
1496cc直4DOHC 116PS/13.0kg・m + モーター 90kW/253Nm | e:HEV エアー(6人乗り) | 285万7800円/308万8800円 |
e:HEV エアーEX(6人乗り) | 304万7000円/327万8000円 | |
e:HEV エアーEX(7人乗り) | 309万1000円/- | |
e:HEV クロスター(5人乗り) | 316万2500円/339万3500円 | |
e:HEV クロスター(6人乗り) | 320万6500円/343万7500円 |
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(ホンダ)
充電・給電アクセサリーもラインナップ 「N-ONE e:」用純正アクセサリーは、EVのある生活をさらに便利で快適にする「充電・給電」アイテム、オーナーの個性を表現する「エクステリア」と「インテリア」の[…]
リサイクルアクリル樹脂素材の採用でCO2排出量削減と環境負荷低減 ホンダアクセスから、自動車用品業界として初めて、サステナブルマテリアルであるリサイクルアクリル樹脂素材を採用したN-ONE e:用純正[…]
ホンダアクセスはこれまでにEV充電に関するユーザーの不安解消のため、充電残量や充電状況をLED点灯で確認できる「充電インジケーター」や、充電スタンド検索機能などを搭載した「8インチHonda CONN[…]
WLTCモードで295kmの航続距離を確保 新型軽EV「N-ONE e:」は、「e: Daily Partner」をグランドコンセプトに掲げ、日々の生活をより豊かにするパートナーを目指して開発。 EV[…]
WEB上で自由に仕様を選べてオーダーも可能な「Style_ID」の第一弾 キャンピングカーと聞くと、巨大なモーターホームを思い浮かべる人が多いだろう。しかし日本の道路事情や生活環境を考えると、大型キャ[…]
人気記事ランキング(全体)
全方位型のツインタイプの小型ファン 先日、ヘッドレストに装着するタイプの扇風機を愛車に導入したのだが、ファンとしてはオーソドックスな丸型タイプの扇風機も使う機会があったので、便利そうな2種を紹介してい[…]
前席は快適でも、後席は意外と暑くて不快な場合も… まだまだ強い日差しが照りつけるこの季節、車内の冷房の稼働は必須と言える。クルマに乗り込んで、涼しい風に当たって「はぁ〜涼しい…」と、ひと息ついていると[…]
標準ボディで実現する扱いやすさと快適性 レグラス プロの大きな特徴は、ハイエースの標準ボディ・標準ルーフを採用している点にある。全高が抑えられているため立体駐車場や一般的な駐車場にも収まり、街乗りや買[…]
2人旅に特化したゆとりある空間 TR540S Joinの魅力は、まず「2人旅に特化」と割り切った設計にある。就寝人数を2名(乗車人数は5名)に絞ったことで、車内レイアウトに余裕を生み出し、広々としたダ[…]
自動車用の初期ブレーキは、駆動軸にドラムを固定し、足踏み式のバンドによる締め付けで制動力を得ていた。 馬車の時代からブレーキというものは存在していた。大きな車輪に靴のような“シュー”を押しつけるもので[…]
最新の投稿記事(全体)
初期モデル 高嶺の花だったマイカーという夢を、現実のものにした立役者 今では日本人にとって欠かせない足となっている軽自動車の規格は、1955(昭和30)年に全長3m、全幅1.3m、排気量0.36L以内[…]
オートサロン2025で披露された注目バージョンが市販化 2020年に発売が始まったGRヤリスは、走りに直結するさまざまな改良を頻繁に行うことでも有名なモデル。それだけメーカーのこだわりが強いことをユー[…]
BYD初のステーションワゴン 世界初公開された、新型ハイブリッド車「BYD SEAL 6 DM-i TOURING」は、BYD初のステーションワゴンであり、同社が独自に開発したプラグインハイブリッド車[…]
乗用ミニバンの優れた居住性と走行性に車中泊のための快適機能をプラス メティオのラクネルシリーズはバンコンから軽キャンパーまで様々なタイプの人気モデルがそろうが、今回紹介するラクネル ステイ•スイートは[…]
東洋工業(マツダ)は、戦後復興に貢献した3輪トラックのトップメーカーだった プロ野球チーム広島東洋カープは、かつて野武士集団とも形容された個性的な市民球団だ。その歩みは長く、球団オーナーを務める松田家[…]
- 1
- 2