
スズキが発売する新型フロンクスは、走りの質の追求に加えて上級内装&充実装備が与えられたことで、1ランク上をアピールしているコンパクトSUV。そんなキャラ付けもあってかスタート価格は254万1000円からと、ライバルよりも割高と感じてしまうかもしれない。だが、じっくりとクルマの中身を吟味していくと、むしろお買い得なのでは?と感じる部分が多いことに気づくはずだ。ここでは新型フロンクスの見逃せない強みをピックアップしてみたい。
●文:横田晃
日本メーカーのモデルでも、生産は海外というケースが増えている
いまや日本車は、世界中の工場で作られています。
そうなる理由の一つとして挙げられるのは、売れる市場に近い場所で作ることで輸送などのコストが抑えられるうえに、為替レートの変動や貿易摩擦などの政治的なリスクも緩和でき、現地の経済や雇用にも貢献できるなど、多くのメリットがあるからです。
そんなグローバル化が進んだこともあって、最近では海外生産車を輸入して日本国内で販売する例も増えています。1980年代後半にアコードクーペやワゴンなどの、当時の日本国内では需要の少ないタイプの北米生産車が輸入されて、個性的な日本車として話題を呼んだのが始まり。
現在販売中の、タイで生産されたトヨタハイラックスや三菱トライトンなどの大型ピックアップもそのパターンです。
さらに、人気のカテゴリーにリーズナブルな価格で新型車を導入するためにも、アジア圏で生産されたモデルが活用されるようになってきました。2024年10月16日に発売されたスズキの「フロンクス」も、インドで生産されて日本に輸入されるコンパクトSUVです。
全長☓全幅☓全高は3995☓1765☓1550mm。ホイールベースは2520mm。車両重量は1070kg(2WD)1130kg(4WD)。アルミホイールは異型5スポークの16インチをインストール。タイヤサイズは小ぶりな195/60R16。最小半径は4.8m。
インド生まれのフロンクス、日本に導入されるのは上級仕様のみ
スズキは1983年12月からインドでの四輪車の生産を開始し、2024年3月末には累計3000万台の生産を達成。スズキのクルマはトップシェアを誇るインド国内で販売されるだけでなく、アジア圏を中心とする各国に輸出もされています。
今回発売されたフロンクスもそんな役割を期待されるスズキのグローバルモデルのひとつ。海外から日本国内に輸入されるモデルとしては、2016~2020年まで輸入されていたコンパクトカーのバレーノに続くモデルとなります。
車格面や価格面に加えて、インド生産のコンパクトSUVという理由もあって、ホンダのWR-Vが一番のライバルと目されています。WR-Vは2024年3月から国内導入されており、200万円少々からという価格のインパクトもあって人気になっています。
対するフロンクスの価格は、2WD車が254万1000円、4WD車は273万9000円。この価格だけを見てしまうと「あれ、高いんじゃね?」と思ってしまうかもしれませんか、よくよく見るととんでもなくお買い得なのです。
インパネは面積を大きく取ったメタル調加飾パネルや、トリムやシートにブラック&ボルドー落ち着いた色調の2トーンを用いる大人っぽい仕立て。各所にボルドー色を効果的に用いることでプレミアムな雰囲気を高めている。
ステアリング奥のスピードメーターは、中央部に表示ディスプレイを配置するマルチインフォメーションディスプレイを採用している。
ライバルのWR-Vよりも高めに思えるが、性能&装備の充実ぶりを考えると、実はお買い得
まず、内外装の仕立て。造りが国内工場製と遜色ないのは今や当たり前ですが、フロンクスはヘッド&テールランプからターンランプ、リヤコンビランプやライセンスランプまで、灯火類はすべてLED。インテリアでも、本革巻きステアリングにパドルシフト、ステンレス製ペダルプレートやレザー調ドアトリム&アームレストなど、高級車を思わせる造りです。
ミリ波レーダーと単眼カメラを組み合わせた高精度の自動ブレーキシステムに、全車速追従機能・停止保持機能付きアダプティブクルーズコントロールも全車に標準。スマートフォン連携メモリーナビやワイヤレス充電器、シートヒーターなど、およそ欲しい装備が全部入りでの価格なのです。
通信連携機能を備える全方位モニター付メモリーナビゲーション(9インチHDディスプレイ)が標準装備。このクラスのライバルはナビ機能がOPというケースも多いのだが、ここはフロンクスの大きなアドバンテージといえる。
ホーム画面をワンタッチすれば、地図画面やオーディオ画面にはもちろん、平均燃費などの車両情報にも簡単にアクセスできる。利便性の高さを持つことも魅力。
パワートレーンは1.5Lのガソリンエンジンに3.1PSのモーターを組み合わせたマイルドハイブリッド。トランスミッションは6速のATで、機敏な走りが楽しめるスポーツモードまで搭載されています。
日本仕様のみに用意された4WD車には、スノー、グリップコントロール、ヒルディセントコントロールの3モードも用意。高い走破性を誇ります。WR-Vには2WDしかなく、オーディオ/ナビもレス仕様が標準であることを考えると、魅力的なアドバンテージといえるでしょう。
このクラスでは、国内生産ながら2WDで190万7000円からのヤリスクロスも人気ですが、こちらはスマホのアプリナビの連携を前提にしたディスプレイオーディオが標準で、独立タイプのナビ機能が欲しいならばOPで追加する必要があります。さらにベーシックグレードにはパドルシフトなどのスポーティな機能装備も望めません。
走りも装備も全部入りでお手頃価格のコンパクトSUVとして、フロンクスの競争力には、太鼓判を捺していいと思うのです。
パワートレーンは1.5L直4エンジンにモーター(ISG)を組み合わせるマイルドハイブリッドを採用。K15C型と呼ばれるエンジンは、燃費性能と低中速域での力強さに定評があるスズキのグローバルエンジンのひとつ。
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
人気記事ランキング(全体)
前輪ディスクブレーキ装備やトレッド拡大で、高速走行に対応 オーナーカー時代に向けて提案したスタイリングが時代を先取りしすぎたのか、世間の無理解と保守性に翻弄されてしまった4代目クラウン(MS60系)。[…]
一年中快適。冷暖房完備の“住める”軽キャンパー これまでの軽キャンパーに対する常識は、スペースや装備の制限を前提とした“妥協の産物”という印象が拭えなかった。しかしこの「TAIZA PRO」は、そんな[…]
サイドソファとスライドベッドがもたらす“ゆとりの居住空間” 「BASE CAMP Cross」のインテリアでまず印象的なのは、左側に設けられたL字型のサイドソファと、そのソファと組み合わせるように設計[…]
ベッド展開不要の快適な生活空間 全長5380mm、全幅1880mm、全高2380mmという大型バンコンでありながら、その中身は大人二人、あるいは二人+ペットでの旅にフォーカスされている。7名乗車・大人[…]
デッドスペースにジャストフィット! 車内の温度較差を解消! 暑いシーズンのドライブは、車内の環境がシビアになりがち。炎天下に駐車後に乗り込む際や、夏場の渋滞中など、クーラーだけではなかなか車内温度が下[…]
最新の投稿記事(全体)
鉄粉やドロ、油などの汚れが蓄積されがちなホイール 普段の洗車で、ある程度洗えていると思っていても、実は、汚れを見落としがちなのがホイールだ。最近は、複雑な形状のものも多く、なかなか細部まで洗浄しにくい[…]
アウトドアに最適化された外観 まず目を引くのは、アウトドアギアのような無骨さと機能美を感じさせるエクステリアだ。純正の商用車然とした表情は完全に姿を消し、精悍なライトカスタムやリフトアップ、アンダーガ[…]
「未来の国からやって来た」挑戦的なキャッチフレーズも話題 初代の「A20/30系セリカ」は1970年に登場しました。ちょうどこの時期は、モータリゼーション先進国の欧米に追い付けという気概で貪欲に技術を[…]
スノーピークが特別出展「キャンパーの食卓」も登場 スターキャンプは、1991年から続く三菱自動車が主催する名物オートキャンプイベント。これまで1万組以上の家族が参加し、自然の尊さを学びながら、家族や仲[…]
人気の「AMGライン」や全モデルに本革シートを標準装備化 各モデルに追加された「Urban Stars」は、人気の「AMGライン」や全モデルに本革シートを標準装備化することで、スポーティで上質さを強め[…]
- 1
- 2